深圳の日本人学校男児が刺され負傷、手術室に 校門近くで男が襲う

深圳日本人学校。通学中の男児が男に襲われた事件を受け、校門の表札が隠されていた=2024年9月18日、中国・広東省深圳市、小早川遥平撮影

 中国南部の広東省深圳で18日朝、登校中だった深圳日本人学校の男児1人が男に襲われ、負傷した。中国当局が容疑者の男の身柄を確保し、取り調べている。中国では6月にも江蘇省蘇州市で日本人学校の送迎バスが刃物を持った男に襲われており、日本政府は在外公館を通じて安全対策を強化していた。

 中国外務省によると、男児は10歳で、学校の校門から約200メートルの場所で男に刺されたという。林剣副報道局長は定例会見で、「ケガをした児童はすぐに病院に運ばれ、全力で手当てをしている」と説明した。男児が搬送された深圳市内の病院で取材対応した現地当局者によると、男児は同日午後8時(日本時間同9時)現在も手術室におり、家族や領事館員が付き添いで病院に来ているという。

 日本政府関係者によると、男児は親と一緒にいたところを襲われたという。森屋宏官房副長官は記者会見で、現地に派遣した在広州総領事館の館員が、事実関係の確認や関係者との連絡などの支援に当たっていると説明した。

 岡野正敬外務事務次官は同日、呉江浩・駐日中国大使を外務省に呼んで「深刻な憂慮」を伝え、中国全土の日本人学校周辺の警備強化や日本人の安全確保を求めた。外務省によると、呉大使は「このような事件が起きたことは心が痛ましく、日本人をはじめとする外国人の安全確保の強化に努める」と述べた。

 18日は、満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日に当たる。中国では「国恥の日」とも呼ばれ、反日感情が高まりやすいとされる。中国当局は捜査が進行中だとして詳細な説明は避けつつ、「中国側は引き続き有効な措置を講じ、中国にいる外国人の安全を保護する」とした。

 日本の北村俊博外務報道官は会見で、「犯行の背景や日中関係への影響について予断をもってお答えすることは差し控えたい」と述べた。

 6月の日本人学校の送迎バス襲撃では、バス案内係の中国人女性が死亡し、日本人母子がけがをした。日本政府は、日本人学校などに安全確保対策の早急な再点検を求め、在外公館から安全対策指導をするなど取り組みを強化。来年度予算案の概算要求にも中国でのスクールバス警備費として3億5千万円を計上している。日本人の被害が相次ぐことについて、首相官邸関係者は「反日の動きなら、何らか対応をしないといけない」とし、日中関係への影響を懸念する。(笹川翔平)

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