【決算深読み】バルミューダ 2024年度Q3決算は赤字縮小、見えてきた成長基調への回帰
バルミューダは、2024年度第3四半期累計(2024年1月~9月)業績を発表した。
売上高は前年同期比9.4%増の87億600万円、営業利益が前年同期のマイナス11億4300万円の赤字から、大幅に改善したものの、マイナス2億3800万円の赤字。経常利益は前年同期のマイナス10億2900万円の赤字から改善したが、マイナス2億2900万円の赤字。当期純利益は前年同期のマイナス18億2000万円の赤字から、マイナス2億3100万円と赤字幅が縮小した。
寺尾社長「この回復、オントラックと考えている」
バルミューダの寺尾玄社長は、「売上高、損益のすべてが改善している。昨年は携帯電話事業の中止による特別損失があり、大きな赤字を出した。改善を目指して様々な活動をしてきたので、この回復は当たり前のことである。オントラックと考えている」とし、「海外で生産して、日本で販売するビジネスが7割を占めるバルミューダにとって、円安はマイナス要因になる。昨年同期の平均為替レートが1ドル138円だったのに対して、今年度は151円と、13円も円安に振れながらも、同率の売上総利益率を達成している。為替の状況が良好ではないなかでも、売上高を上げ、利益率が良化している。財務状態は健全になっている」と、経営体質の大きく改善に手応えをみせた。
第3四半期(2024年7月~9月)は、売上高が23億7600万円、営業利益がマイナス1億4700万円の赤字、経常利益がマイナス2億6200万円、当期純利益がマイナス2億6300万円の赤字となったものの、すべての項目で良化。「7月~9月は、季節的に売上高が低く、利益が出にくい期間だが、着実に損益改善が進んでいる」と自己評価した。
在庫水準の適正化でも成果があり、2022年12月末に比べて、2024年9月末には20億円の削減となり、16億2900万円に改善している。
第3四半期累計(2024年1月~9月)のカテゴリー別の売上高は、キッチン関連が前年同期比22.4%増の64億6600万円、空調関連は同年並みの16億6900万円となった。また、国内事業の売上高は前年同期比1.9%増の56億2600万円、韓国では同34.0%増の17億4200万円、北米では同2.2%減の4億100万円となった。
通期の業績見通しは据え置き、最速での黒字化を目指す
一方、2024年度通期(2024年1月~12月)の業績見通しは据え置き、売上高は前年比1.6%減の128億円、営業利益は3000万円、経常利益は7500万円、当期純利益は5000億円と黒字化を目指す。
バルミューダの寺尾社長は、「売上総利益率の改善、固定費の圧縮、家電カテゴリー製品の積極的な展開という3つの施策により、早期の成長基調への回復を目指し、最速での黒字転換を目指している。タフな状況ではあるが、各種施策の効果が創出され、通期の黒字化に向けて着実に進捗している」とこれまでの成果を報告した。
ひとつめの「売上総利益率の改善」では、「為替の状況は予断を許さないが、新製品における原価改善、商品のリニューアルによる原価低減、8月に実施した値上げなどにより、売上総利益率は32.2%と良好な数字になった。1ドル132円の為替レートだった2023年度第1四半期には31.1%であったが、1ドル150円でも、売上総利益率が高い。各種施策が効いている」と、体質改善の成果を強調した。
2つめの「固定費の圧縮」では、「2023年度の20億円の赤字から、まずは水平飛行に戻し、どうやって成長基調に戻すのかが経営のテーマだった。水平飛行に戻ったのが2024年度第2四半期であった。そこまでは人員規模の適正化に取り組んだが、第2四半期以降は改めて採用を増やした。今後の成長戦略を達成するために適正な人員で臨みたい」と述べた。
「家電カテゴリー製品の積極的な展開」については、「つらいなかではあるが、過去にないペースで製品ラインアップを拡大してきた。タフな開発作業や、製造および営業での交渉、物流の構築を進めてきた」とし、「国内では11月には2つの新製品を追加するなど、4つの新たな製品を発表。海外でも韓国、東南アジアで新製品投入を行った。第4四半期には海外での製品ラインアップの強化を行う」との姿勢を示した。
そして今後の成長戦略へ、小型風力発電機の研究開発も
今回の説明会では、今後の成長戦略についても語った。
同社では、「新製品の積極的な投入」、「米国での製品展開の加速、ブランド認知の強化」、「小型風力発電機の商用化に向けた研究開発の継続」の3点を、成長基調への回帰に向けた戦略に掲げており、「これらの3つははすべて順調に進捗している」との考えを示した。
「新製品の積極的な投入」では、2024年11月に、温度調整機能付き電気ケトルの「Moon Kettle」とカセットコンロの「Table Stove」を発売。「Moon Kettleはアイコニックな美しい電気ケトルである。Table Stoveは日本市場向けに製品化したものだが、海外でも強い引き合いがあり、海外展開するための技術検証を進めている」と語った。
「米国での製品展開の加速、ブランド認知の強化」については、米国での展開が2025年度に重要なテーマになると位置づけ、「前年度の赤字の要因は急激な円安である。事業体質そのものに原因があった。事業多様性がないことに問題があり、他国での販売を増やすべきだと考えている」とし、「これまでは、日本市場向けに開発してきた製品を海外展開していたが、グローバル展開を前提とした製品開発を進めているところだ。これらの製品を投入することで、海外比率を増やしていきたい」とし、「グローバル向けに製品化する場合には、選ぶ機能やデザイン、価格設定や原価設定も変わる。2023年度から、グローバル向けの製品開発を進めており、2024年度にはその考え方をベースにした製品が登場している。GreenFan Studioはそのひとつで、2025年には米国市場でも展開することになる。また、Moon Kettleも米国での販売を想定した製品であり、そのためのデザインをしている。バルミューダというブランドを、グローバルでどう見せるのか、どんな存在になりたいのかといったことを前提に、オリエンタルな雰囲気を持たせたデザインを採用している。日本市場だけを考えていたら、製品化しなかったものである。機能面で評価を得る製品ではないが、個性が強く、チャーミングなデザインを提案した。、一定の人に対しては、機能、価格、デザインという観点からの選択肢になり得る製品だ。デザインコンセプトの段階から、これまでとは異なる発想で作ったものである。Moon Kettleは、韓国での販売に続き、2025年春には米国で販売する予定だ」という。
また、海外展開において、米国市場にフォーカスする理由として、「消費市場として強い購買力があること、これまでの取り組みを通じて、バルミューダの製品およびブランドの価値を理解してくれる顧客層が想定以上に多いこと、商品のマッチング性を考えると事業拡大の可能性があることがあげられる。コロナ禍以降、取り組みが遅れていたにも関わらず、年間6~8億円の売上高を計上している。ここに、ブランディングと商品投入を加速し、地に足がついた活動ができれば、売上げが大きく伸びる可能性があると考えている」と語った。
米国での展開については、2025年に3~4つの新製品を米国市場に投入すること、販売拠点の立ち上げや販売店の拡充を開始すること、新たなブランドキャンペーンの実施、ローカルパートナーとのイベント開催を進めるといった施策に触れたが、「詳細については、次回の決算発表時に説明したい」とした。だが、「米国市場において、これまでの家電ブランドとは違うブランドであるという姿を見せていきたい。地に足がついた活動をしていく。多くのユーザーに認知してもらうのではなく、まずは、西海外および東海岸のアーリーアダプターに、興味と関心、共感を得てもらうことが大切である。2025年以降、ブランディングと売上げの最大化を目指す」と意気込んだ。
2024年度には海外売上比率で36%を見込んでいるが、2027年度には50%にまで拡大。なかでも米国での販売比率を大きく増やす計画だ。さらに2030年度にはさらに海外比率を高める考えを初めて明らかにした。
なお、「小型風力発電機の商用化に向けた研究開発の継続」では、技術的な発見と進展が進んでおり、2025年には新たに実証実験を開始することになるという。「再生可能エネルギーや地球温暖化、気候変動を考えると、時代の要請があることを感じることができる分野である。この分野の研究開発は引き続き強化したい」と述べた。
通期黒字化の達成に向けて着実な回復をみせているバルミューダだが、海外事業の拡大とともに、グローバルに受け入れられるモノづくりに、新たな踏み出すことになる。これまではキッチン家電が最大の柱となっているが、海外展開では、空調機器や照明器具が大きな柱になるとの見通しも示し、ここにもモノづくり戦略に対する影響があるといえるだろう。
バルミューダにとっての新たな挑戦は、果たして米国をはじめとする海外市場に受け入れられるのだろうか。それが、これからの同社の成長を左右することになる。
売上高は前年同期比9.4%増の87億600万円、営業利益が前年同期のマイナス11億4300万円の赤字から、大幅に改善したものの、マイナス2億3800万円の赤字。経常利益は前年同期のマイナス10億2900万円の赤字から改善したが、マイナス2億2900万円の赤字。当期純利益は前年同期のマイナス18億2000万円の赤字から、マイナス2億3100万円と赤字幅が縮小した。
寺尾社長「この回復、オントラックと考えている」
バルミューダの寺尾玄社長は、「売上高、損益のすべてが改善している。昨年は携帯電話事業の中止による特別損失があり、大きな赤字を出した。改善を目指して様々な活動をしてきたので、この回復は当たり前のことである。オントラックと考えている」とし、「海外で生産して、日本で販売するビジネスが7割を占めるバルミューダにとって、円安はマイナス要因になる。昨年同期の平均為替レートが1ドル138円だったのに対して、今年度は151円と、13円も円安に振れながらも、同率の売上総利益率を達成している。為替の状況が良好ではないなかでも、売上高を上げ、利益率が良化している。財務状態は健全になっている」と、経営体質の大きく改善に手応えをみせた。
第3四半期(2024年7月~9月)は、売上高が23億7600万円、営業利益がマイナス1億4700万円の赤字、経常利益がマイナス2億6200万円、当期純利益がマイナス2億6300万円の赤字となったものの、すべての項目で良化。「7月~9月は、季節的に売上高が低く、利益が出にくい期間だが、着実に損益改善が進んでいる」と自己評価した。
在庫水準の適正化でも成果があり、2022年12月末に比べて、2024年9月末には20億円の削減となり、16億2900万円に改善している。
第3四半期累計(2024年1月~9月)のカテゴリー別の売上高は、キッチン関連が前年同期比22.4%増の64億6600万円、空調関連は同年並みの16億6900万円となった。また、国内事業の売上高は前年同期比1.9%増の56億2600万円、韓国では同34.0%増の17億4200万円、北米では同2.2%減の4億100万円となった。
通期の業績見通しは据え置き、最速での黒字化を目指す
一方、2024年度通期(2024年1月~12月)の業績見通しは据え置き、売上高は前年比1.6%減の128億円、営業利益は3000万円、経常利益は7500万円、当期純利益は5000億円と黒字化を目指す。
バルミューダの寺尾社長は、「売上総利益率の改善、固定費の圧縮、家電カテゴリー製品の積極的な展開という3つの施策により、早期の成長基調への回復を目指し、最速での黒字転換を目指している。タフな状況ではあるが、各種施策の効果が創出され、通期の黒字化に向けて着実に進捗している」とこれまでの成果を報告した。
ひとつめの「売上総利益率の改善」では、「為替の状況は予断を許さないが、新製品における原価改善、商品のリニューアルによる原価低減、8月に実施した値上げなどにより、売上総利益率は32.2%と良好な数字になった。1ドル132円の為替レートだった2023年度第1四半期には31.1%であったが、1ドル150円でも、売上総利益率が高い。各種施策が効いている」と、体質改善の成果を強調した。
2つめの「固定費の圧縮」では、「2023年度の20億円の赤字から、まずは水平飛行に戻し、どうやって成長基調に戻すのかが経営のテーマだった。水平飛行に戻ったのが2024年度第2四半期であった。そこまでは人員規模の適正化に取り組んだが、第2四半期以降は改めて採用を増やした。今後の成長戦略を達成するために適正な人員で臨みたい」と述べた。
「家電カテゴリー製品の積極的な展開」については、「つらいなかではあるが、過去にないペースで製品ラインアップを拡大してきた。タフな開発作業や、製造および営業での交渉、物流の構築を進めてきた」とし、「国内では11月には2つの新製品を追加するなど、4つの新たな製品を発表。海外でも韓国、東南アジアで新製品投入を行った。第4四半期には海外での製品ラインアップの強化を行う」との姿勢を示した。
そして今後の成長戦略へ、小型風力発電機の研究開発も
今回の説明会では、今後の成長戦略についても語った。
同社では、「新製品の積極的な投入」、「米国での製品展開の加速、ブランド認知の強化」、「小型風力発電機の商用化に向けた研究開発の継続」の3点を、成長基調への回帰に向けた戦略に掲げており、「これらの3つははすべて順調に進捗している」との考えを示した。
「新製品の積極的な投入」では、2024年11月に、温度調整機能付き電気ケトルの「Moon Kettle」とカセットコンロの「Table Stove」を発売。「Moon Kettleはアイコニックな美しい電気ケトルである。Table Stoveは日本市場向けに製品化したものだが、海外でも強い引き合いがあり、海外展開するための技術検証を進めている」と語った。
「米国での製品展開の加速、ブランド認知の強化」については、米国での展開が2025年度に重要なテーマになると位置づけ、「前年度の赤字の要因は急激な円安である。事業体質そのものに原因があった。事業多様性がないことに問題があり、他国での販売を増やすべきだと考えている」とし、「これまでは、日本市場向けに開発してきた製品を海外展開していたが、グローバル展開を前提とした製品開発を進めているところだ。これらの製品を投入することで、海外比率を増やしていきたい」とし、「グローバル向けに製品化する場合には、選ぶ機能やデザイン、価格設定や原価設定も変わる。2023年度から、グローバル向けの製品開発を進めており、2024年度にはその考え方をベースにした製品が登場している。GreenFan Studioはそのひとつで、2025年には米国市場でも展開することになる。また、Moon Kettleも米国での販売を想定した製品であり、そのためのデザインをしている。バルミューダというブランドを、グローバルでどう見せるのか、どんな存在になりたいのかといったことを前提に、オリエンタルな雰囲気を持たせたデザインを採用している。日本市場だけを考えていたら、製品化しなかったものである。機能面で評価を得る製品ではないが、個性が強く、チャーミングなデザインを提案した。、一定の人に対しては、機能、価格、デザインという観点からの選択肢になり得る製品だ。デザインコンセプトの段階から、これまでとは異なる発想で作ったものである。Moon Kettleは、韓国での販売に続き、2025年春には米国で販売する予定だ」という。
また、海外展開において、米国市場にフォーカスする理由として、「消費市場として強い購買力があること、これまでの取り組みを通じて、バルミューダの製品およびブランドの価値を理解してくれる顧客層が想定以上に多いこと、商品のマッチング性を考えると事業拡大の可能性があることがあげられる。コロナ禍以降、取り組みが遅れていたにも関わらず、年間6~8億円の売上高を計上している。ここに、ブランディングと商品投入を加速し、地に足がついた活動ができれば、売上げが大きく伸びる可能性があると考えている」と語った。
米国での展開については、2025年に3~4つの新製品を米国市場に投入すること、販売拠点の立ち上げや販売店の拡充を開始すること、新たなブランドキャンペーンの実施、ローカルパートナーとのイベント開催を進めるといった施策に触れたが、「詳細については、次回の決算発表時に説明したい」とした。だが、「米国市場において、これまでの家電ブランドとは違うブランドであるという姿を見せていきたい。地に足がついた活動をしていく。多くのユーザーに認知してもらうのではなく、まずは、西海外および東海岸のアーリーアダプターに、興味と関心、共感を得てもらうことが大切である。2025年以降、ブランディングと売上げの最大化を目指す」と意気込んだ。
2024年度には海外売上比率で36%を見込んでいるが、2027年度には50%にまで拡大。なかでも米国での販売比率を大きく増やす計画だ。さらに2030年度にはさらに海外比率を高める考えを初めて明らかにした。
なお、「小型風力発電機の商用化に向けた研究開発の継続」では、技術的な発見と進展が進んでおり、2025年には新たに実証実験を開始することになるという。「再生可能エネルギーや地球温暖化、気候変動を考えると、時代の要請があることを感じることができる分野である。この分野の研究開発は引き続き強化したい」と述べた。
通期黒字化の達成に向けて着実な回復をみせているバルミューダだが、海外事業の拡大とともに、グローバルに受け入れられるモノづくりに、新たな踏み出すことになる。これまではキッチン家電が最大の柱となっているが、海外展開では、空調機器や照明器具が大きな柱になるとの見通しも示し、ここにもモノづくり戦略に対する影響があるといえるだろう。
バルミューダにとっての新たな挑戦は、果たして米国をはじめとする海外市場に受け入れられるのだろうか。それが、これからの同社の成長を左右することになる。
11/10 18:21
マイナビニュース