頭のいい人の「質問力」が身につくシンプルな習慣

(写真:EKAKI /PIXTA)
変化が激しい時代に必要な能力の1つが「質問力」です。質問力は複雑な問題の本質を見抜くことができ、独創的な解決策を導き出すことができます。そして、質問力を高めることで変化を前向きにとらえ、柔軟に対応できるようになります。この質問力は自分のためにもなりますが、周りの人に「気づき」を促すことで相手の可能性を広げることもできるものです。「ただ問う」のではなく、一歩先を見据えて視野を広げて「問う」ことで人生は豊かになります。
仕事、人間関係、日常生活で活かせる「質問力」について、一般社団法人コーチング心理学協会、一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会の代表理事の徳吉陽河さんの書籍『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』より、一部抜粋・再構成してお届けします。

質問力がすごい人の特徴

質問力は特別な能力ではなく、スキル(技術)として習得できるものです。

そのため、言葉や方法論として認識していなくとも、すでに無意識で行っている人もいるでしょうし、独自のメソッドを意識的に行っている人も多いと思います。

今回お伝えするメソッドは、コーチング心理学やポジティブ心理学で活用されている科学的な手法です。はじめは、抵抗があっても、実践してみることで質問のスキルが身につきます。

そして、経験が積み重なるといつのまにか、質問力が高まっている自分自身に気がつくはずです。まずは行動あるのみです。メソッドを知っただけで満足せずにスキルとして自分のものにしていきましょう。

では、質問力が高まると、どのような質問ができるようになるのでしょうか。ここで、私が「問う力がすごい」と思う人の特徴をいくつか紹介します。

最もわかりやすいのは、状況を判断し、的確な質問ができる人が挙げられます。相手の表情や姿勢、トーンなどから、その人の状態を読み取ったり、会話の流れや文脈から相手の関心事や悩みを推測したりできる人です。また、そのような人は相手の反応を見極め、「こうやったら、こういう結果になってしまうのでは」と予期する能力が高いともいえます。

そして、相手の長所に焦点を当て、相手に肯定的な感情を抱いてもらったり、相手の自己肯定感を高めたりすることもできます。

他にも相手が主体的に物事を考えられるような「問い」を投げかけられる人や、相手が積極的に行動できるように質問で促せる人、相手の気づきを促すような質問をする人、多角的な視点から質問ができる人も同様に私は「問う力がすごい」と感じています。

つまり、質問力が高い人は状況や相手について考えて、相手の価値観を尊重し、理解を深める質問ができる人なのです。

相手に対して、興味や関心をもつと同時に、相手のためになる質問をすることで、相手自身の考えが深まったり、相手が行動しようとする意識を高めたりするなど、相手を良い方向に促すことができます。これが、「質問力」です。

質問力を身につけるには「スキル」と「自信」が必要

このような質問力を身につけるために必要なことは、質問のメソッドを知識(技術)として認識して、それを理解して実践経験を積むことです。そして、これに付随して大切なことは、「自信」です。

それも、自分が「相手を質問で正しく導ける」という自信です。少し唐突かもしれませんが、プールの監視員を思い浮かべてみてください。

私は学生時代、プールの監視員のアルバイトをしていたことがあります。監視員には「泳げる」「救助できる」という技術と、「相手を助けることができる」という自信の両方が必要です。

この2つがなければ、目の前に溺れた人が現れたときに、咄嗟に身体が動いてプールに飛び込むことができないからです。泳ぎがいくら得意でも、「相手を助けることができる」という自信がない初心者には、どうしても躊躇が生まれてしまいます。どちらか片方だけでは不十分で、両方を一緒に高めていくことが重要なのです。

これは何も、質問力やプールの監視員に限った話ではなく、プロフェッショナルのスキル、すべてにいえることです。技術だけが頭の中にあっても、行動として現れなければないに等しいですし、自信だけしかなければ、行動することができたとしても闇雲に動いているだけになります。

つまり質問力が身につくとは、スキルと自信の2つをもっているということです。

質問力向上のカギは

「質問力は、誰でも身につけられるでしょうか?」。ときどき、このような質問をされることがあります。結論を述べると、質問力は誰でも身につけられるものです。ただし、なかには身につけるのに時間がかかる人もいます。

たとえば、先生や両親が質問を受けつけないような環境で育った子どもが当てはまります。「従順であることが当たり前」だと感じていたり、遠慮しすぎたりする人には、質問力が身につくにしても時間がかかる恐れがあります。

質問することに慣れていないだけということもあります。つまり、どのような人であれ、慣れれば誰でも質問力を手に入れることができます。

では、この質問力はどのように向上していけばよいのでしょうか。その質問力向上のカギは、工夫とチャレンジです。

質問することが苦手な人は少し前向きになって、友だちや家族に質問を投げかける回数を増やしたり、初対面の人が集まる場所に足を運んだりしてください。質問はコミュニケーションの一つですので、多少の苦手意識があっても、失敗を臆することはありません。失敗しても次の工夫につながります。

質問力とレジリエンスを高める「セルフトーク」

質問力を身につけるうえでもう一つ大切なことは、自分自身に質問をするセルフトークです。セルフトークとは、自分の中で自分自身に質問をすることで、答えを導き出したり、漠然とした悩みを正確な悩みとして変換したりすることができます。

そして、このセルフトークをするタイミングとして特におすすめしたいのが、ネガティブな気持ちに支配されてしまったときです。「もう自分はダメだ」という自分の声に対して、「今はピンチだけど、どこかに可能性やメリットはないか?」「転んでもただでは起きないためには何ができるか?」などと前向きに問いかけるのです。

こういった質問は、「レジリエンス」に有効です。レジリエンスとは逆境や困難に立ち向かい、物事をポジティブにとらえるための心理的リソースです。質問の形だけでなく、自分自身への呼びかけや説得もレジリエンスに有効です。

科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?

負けん気が強い人でしたら、「もう自分はダメなのか?いやそんなことはない」といった言葉で自分を鼓舞するのもいいでしょう。ネガティブな言葉に対して、自分を鼓舞することで、前向きになれることが研究でわかっています。

繊細な人の場合は、「今はちょっと休憩して、またがんばろう」といった言葉をかけて、自分自身にそっと寄り添ってあげるのもいいと思います。

このように自分の性格をよく把握して、自分のタイプに応じて自分への質問、投げかける言葉を変えていくことが大切です。

少しでも悩んだり、気になったことがあったりしたら、自分に質問や言葉がけをしていくことで、行動や思考が次第に変化していきます。「現在」の自分とちゃんと向き合うことで、少しずつ未来が変化していくのです。

それと同時に、他者への質問力も向上していくので一石二鳥といえます。

セルフトークスキルを確認して、課題解決に活用しよう

ここで、心理学に基づいて作成した「セルフトーク」のチェックをしてみましょう。この尺度は、あなたのセルフトークスキルを10項目で評価します。各項目について、5段階評価で回答してください。

(画像:『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』)

【合計点が24点以下】
セルフトークスキルが低めと考えられます。自分自身への否定的なイメージが強く、課題解決にセルフトークを活用できていない可能性があります。まず、ネガティブなセルフトークを前向きなセルフトークへ変換する意識をもちましょう。

【合計点が25〜34点】
セルフトークスキルは平均程度です。自分自身への肯定的なイメージをもちはじめていますが、課題解決にセルフトークを十分に活用できていない可能性があります。

【合計点が35点以上】
セルフトークスキルが高いと考えられます。自分自身への肯定的なイメージをもち、課題解決にセルフトークを効果的に活用できています。

結果において、低いと感じたところは、成長するための伸びしろと考えましょう。自分自身が低めととらえているだけかもしれませんので、成長するためのヒントになります。できるだけ、前向きに考えながら成長へとつなげていくのです。

(徳吉 陽河 : 一般社団法人コーチング心理学協会 代表理事)

ジャンルで探す