ノルウェー「世界一美しいサッカー場」絶景に鳥肌

(写真:『世界がくれた美しい風景に出会う旅』より)
ベトナムの古都ホイアンに灯る色鮮やかなランタン、世界遺産の始まりとなったエジプトのアブ・シンベル神殿、オランダ・リッセで見つけたチューリップの楽園 ――。
『世界がくれた美しい風景に出会う旅』は夫婦ともに元国際機関の職員である著者が、仕事や休暇で訪れた国々の魅力的な風景を集め、その街の魅力を余すことなく伝えたフォトエッセイです。
一度見たら忘れられないファンタジックな写真とともに、その国の人々のくらしを4回にわたってお届けします。

北欧の秘境ロフォーテン諸島

ノルウェー北部のロフォーテン諸島。スカンディナビア半島に近接し、北緯66度以北の北極圏に位置する。日本ではあまり聞くことがないこのロフォーテン諸島だが、ナショナルジオグラフィックから「世界で最も魅力的な旅先のひとつ」と評されている。その最大の魅力は圧巻の大自然が織りなす景観美にあるだろう。フィヨルド地形の穏やかな海に氷河の浸食によって削り出された急峻な岩山が連なる様は「海に浮かぶアルプス」と称されている。

そんなロフォーテン諸島でオーロラツアーに参加したのち、レンタカーを利用しながら5泊6日、566㎞の旅をしてきた。ここではロフォーテン諸島の旅で印象深かったいくつかの場所をピックアップしてロフォーテン諸島の魅力をさらに深掘りする。

まずは、私たち夫婦が旅の拠点としていたレーヌ村。カーフェリーでロフォーテン諸島に到着した際の入り口モスケネス港から、車で北東に10分ほどの距離にある。ノルウェーで最も美しい村と名高い小さな漁村で、ロルブーとよばれる木造の漁師小屋が可愛らしく並んでいる。

赤色のロルブーが並ぶ島

(写真:『世界がくれた美しい風景に出会う旅』より)

厳しい冬の時期、入り組んだ湾を切り裂くようにそびえ立つ険しい岩山には雪が積もり、曇り空でうっすらとしたブルーに包まれたロフォーテン諸島ならではの大自然の景観には畏敬の念さえ覚える。そこに赤色が映える小さなロルブーが可愛らしくちょこちょこと並んでいるギャップがたまらない。冬のロフォーテン諸島もとても好みだが、青空や花や緑も似合いそうなこの場所には、春や夏に来るのも良い選択肢かもしれない。

山頂を背にする一軒の黄色いロルブー

同じくレーヌ村で複数回通ったのがAnita's Sjømatという海鮮魚店。ノルウェー産のサーモンは日本でも有名だが、ロフォーテン諸島周辺は世界有数のタラの漁場でもある。新鮮なタラとサーモンを食べにこのお店を訪れた。特にタラのすり身を揚げたパテ、スモークサーモンと新鮮なレタスなどが入ったフィッシュバーガーは泣きそうなほど絶品だった。魚介たっぷりのシーフードチャウダーは寒い冬に飲むと身体が芯から温まる。

そして驚いたのは付け合わせで出ていたメカブ。海外であまり海藻の料理を見たことがなかったので、おそるおそる食べてみると新鮮な本物のメカブに感動。メインのバーガーやスープはもちろん、このメカブにこそ漁村の底力を見たような気がした。

あまりにも美味だったので食べ物のことばかりを書いてしまったが、本命はこちらのお店の隣にぽつんと建っている一軒の黄色いロルブーだ。赤いロルブーも可愛らしくて惹かれるが、この黄色のロルブーもまたロフォーテン諸島の自然にマッチしていてとても素敵だ。

このロルブーの背後に、山頂が鋭くとがった三角の大きな山がひとつ聳え立っているのもポイントが高い。ちょうどレーヌ村の展望ポイントと宿泊していたホテルの中間地点に位置しており、車で通るたび時間帯や天気によって印象が違って見えて、「ああ、また行きたい」という気持ちを抑えることが難しいほどこの場所が好きになっていた。

黄色のロルブー

(写真:『世界がくれた美しい風景に出会う旅』より)

また、旅の拠点としていたホテルから徒歩3分ほどの距離にあるHamnøy橋からの眺めこそが今回ロフォーテン行きを決めた最大の理由だった。波が打ち付ける岩の上に海にせり出すかのように赤いロルブーが建っている。背後に見えるのは、まるで巨大な岩山の山頂がいきなり海上に姿を現したかのような迫力ある光景。実際に自分の足でその場に立ち、自分の目で見る絶景に鳥肌が止まらなかった。

もし、ノルウェーへ渡航する目的がオーロラを見ることであればロフォーテン諸島最大の街スボルベルなどに宿泊する方が、ツアー会社の多さからも圧倒的に便利ではある。そこからレーヌは車で2時間も離れたロフォーテン諸島の南端だが、ここでしか見ることのできない景色があった。

世界で最も美しいサッカースタジアム

ロフォーテン諸島には他にも数多くの素晴らしい風景に出会える場所があるのだが、ヘニングスヴァールという漁村を紹介し締めくくりたいと思う。レーヌから車で2時間ほどの距離にある、レーヌに負けず劣らず大変美しい場所だ。海に囲まれ山々に見守られるこの小さな漁村には、1カ所だけ異彩を放つ場所がある。それはヘニングスヴァールの南端あたりに位置する屋外サッカー場だ。なぜ、サッカー場が?と思われるだろうがまずは写真を見てほしい。

ヘニングスヴァール

(写真:『世界がくれた美しい風景に出会う旅』より)

荒々しい波が島の周囲に打ち寄せ、浸食の激しい剝き出しの岩に囲まれた荒々しい景観。雪をかぶった険しい岩山はロフォーテン諸島ならではの神々しさを感じる。そんな島の中央に手入れの行き届いた芝が美しいサッカー場がいきなり現れ、ぽつんと異様な雰囲気を醸し出している。大自然に囲まれた人工物という対比になぜか心惹かれる。このサッカー場は国際サッカー連盟から「世界で最も美しいサッカースタジアム」として紹介されたこともあるらしい。

ロフォーテン諸島滞在中は雪が降ることも多く、この緑の芝のサッカー場も雪で覆われてしまうのではないかと心配していたのだが、ちょうどこの日は気温が少し上がり雨が降ったので、積もった雪を溶かしてくれたようだった。そのおかげもあって、このあまりにもインパクトが強い大自然と人工物のコントラストを目に焼き付けることができた。

世界で最も魅力的な旅先のひとつ

島を移動している最中に見える景色すべてが絶景だった。

世界がくれた美しい風景に出会う旅 国際機関ではたらく夫婦が見つけた最高で最強の景色

新鮮な魚介が豊富に獲れる豊かな漁場に面する村々、そして自然の恵みを感じる美味しい水。余談となるが、ノルウェーは日本と同じく水道水を飲むことができる世界でも珍しい国のひとつで、ここロフォーテンの水は冬の気温で水道水が冷やされていたこともあって感動するほど美味しい水を蛇口から飲むことができる。

もっと長期で滞在し、春や夏や秋の景色も見てみたい。雪が解けて命芽吹く山々をハイキングしたい。自然保護区で動物たちを観察したい。北極圏ならではの白夜や極夜を体験してみたい。そして何よりまた冬の時期に訪れてオーロラを見たい。

過去を振り返ってもここまでひとつの場所に強く惹かれたことはないくらい美しい景色が冬空の下に広がっていた。

(まるたび夫婦の休暇 : インフルエンサー)

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