「ミスをチャンスに変える」ずるい"謝罪メール術"
ずるい人の謝罪メールをマスターしよう!
仕事のちょっとしたミスは、誰にでも起こり得ることです。そのたびに、次のようなお詫びをしていたら、どうでしょうか。
「このたびは大変申し訳ございません。今後は二度とこのようなことがないように注意します」
お詫びとしては丁寧な印象を与えるかもしれません。同じ失敗を二度と繰り返さないという誓いに、誠実さも感じるでしょう。
しかし一方で「二度と」という言葉が自分へのプレッシャーにもなりそうです。
どんなに注意をしても、失敗をしてしまう可能性はあるのに、自分で言ったからには二度と同じ失敗はできない……こうしてハードルが高くなり、自分の首を絞めることになります。
それに、仮に添付ファイルをつけ忘れたぐらいでこのようなお詫びを送っていたら、相手からは「このレベルのミスで、そんな深刻なお詫びをしなくてもいいのに」と思われるかもしれません。
添付ファイルのつけ忘れといったレベルなら、以下のような言葉で十分です。
「先ほどのメールにデータを添付しておりませんでした。大変失礼しました」「添付ファイルが漏れており、失礼いたしました」
ミスのレベルに合ったお詫び言葉を使う
またあなたは、なんでもいいからとりあえず、「あらたまった言葉で謝っておけば失礼にはならない」と考えていませんか。
小さなミスに対しても丁寧な謝罪を続けていると、相手もそれに慣れていきます。そうすると大きなミスをした際に、どんなに丁寧な謝罪をしても「いつも使っている言葉だ」と軽く受けとられてしまう危険があります。
相手に失礼のないようにと、気を遣った言葉であっても、場面と程度が合っていなければ違和感を生み、あなたの足を引っ張ることになるのです。
それに、不用意にお詫びをしすぎると、そこでパワーバランスが崩れることもあります。こちらが非を認めることで、相手が相対的に優位な立場になるのです。
これが続いたら、どうでしょうか。丁寧な対応をしようと思って謝りすぎただけなのに、相手から「仕事ができない人」というレッテルを貼られてしまうかもしれません。
こうした悔しい思いをしないためにも、メールではミスのレベルに合ったお詫び言葉で、バランスをとる必要があるのです。
仕事がデキる人(ずるい人)はこの使い分けがうまく、不用意にあらたまった表現でお詫びをしません。
・小さな(軽い)ミス
失礼しました/大変失礼しました
・少し大きな(重たい)ミス
申し訳ありません/申し訳ございません
・大きな(重たい)ミス
大変申し訳ありません/大変申し訳ございません
誠に申し訳ありません/誠に申し訳ございません
他にもずるい人は、限定的な謝罪を使うことで、何に対して謝罪しているのかを明確にします。
「ご不快な思いをさせてしまい、心よりお詫び申し上げます」
こうすることで、パワーバランスが崩れすぎないようにしているのです。
また全体に対してよりも、その事象に対して限定的な謝罪をするほうが、謝罪の理由を深く理解している、適当に謝罪しているわけではない、という印象を与えられます。
「ありがとう」でピンチをかしこく乗り切る
「メールで好印象を与えたい」というのは、誰もが考えることでしょう。あなたも“気の利いたフレーズ集” などを購入して、語彙力を磨こうとしたことがあるのではないでしょうか。
実は、謝罪メールにも使えて、汎用性も高く、相手が受け入れやすい魔法のようなフレーズがあります。
それは「ありがとう」です。
「ありがとう」は、私たちが子どもの頃から受け継いでいる感謝の精神を表し、互いの心を結び付け、尊重しあう土台となる力を持った言葉です。
それなのに仕事では、感謝の気持ちを伝えるフレーズよりも、お詫びの気持ちを表すフレーズのほうが、多く飛び交っています。
もしあなたが「申し訳ありません」「恐縮です」を毎日のように使っているのなら、要注意です。
なぜなら前述したように、お詫びフレーズの多用によって、相手とのパワーバランスは崩れるからです。相手と対等な関係で仕事をしたいのなら、むやみに謝らないことが重要です。
ずるい人は、不用意にお詫びをしない代わりに、お礼のフレーズを多用しています。相手に何か対応してもらったとき「ありがとう」で表現できないかを考えるのです。
感謝を中心に置いて、あらたまりたい、へりくだりたいなら、適した言葉を添えます。
「ありがとう」は、さまざまなシーンにマッチする言葉です。もちろん、お詫びの全てが感謝やお礼の気持ちを表すフレーズに変換できるわけではありませんが、それでもまずはお礼のフレーズを中心に、メールをしてみましょう。
仕事の多くは、何かをしてあげたり、してもらったり、で成り立っています。大きなことでなくても「返事をしてもらった」「メールを送ってもらった」などの動作に対しても感謝を伝えることができるはずです。
・早急にご対応いただき申し訳ございません。
→早急にご対応いただきありがとうございます。
→対応していただきありがとうございます。
謝罪の言葉を多用するよりも感謝の気持ちを具体的に伝えることによって、相手の心証は確実によくなりますので、次の協力も引き出しやすくなります。
そのイライラ、喧嘩で解決しますか?
他にも、受信したメールにイラッとしたり、ムカッとしたりしたことが、一度くらいあるのではないでしょうか。
自分は悪くないのに、一方的に悪者にされた。自分の非を認めず、攻撃的な対応をされた……そんなとき、自分を守りたくなるのは当然です。
しかしここで、相手に言い返してはいけません。それでは、あなたが不利になってしまいます。
もちろん、ずるい人もイラっとすることはあります。しかしずるい人は、メールでは絶対に戦いません。
次のような場面を考えてみましょう。
打ち合わせの段階では「100万円くらいで」と相手に言われていた案件があったとします。
翌日、あなたは言われた通り、100万円で見積もりを出しましたが、相手に「その条件だと導入できない。なんでそんな金額を出してきたんだ」と言われてしまいました。
こんなとき、あなたならどうしますか。
理不尽なことを言ってきた相手を非難し、真正面から戦うでしょうか。しかし合理的に考えてみると、戦うメリットが一切ないことに気づくはずです。
メールをストレス発散の道具にしない
見積もりを出したあなたのゴールは「受注」です。相手と喧嘩をしたり、論破をしたりすることで、そこに到達できる確率は上がるでしょうか。
答えは「NO」です。多くの場合、その確率を下げることにつながります。
それならば、ゴールに少しでも近づけるように「どんなメールを書いたら、相手は導入に前向きになってくれるだろうか」と考えて、適切なコミュニケーションをとるべきです。
メールでストレスを発散しても、会社の売上やあなたの評価にはつながらないですし、相手の対応によっては、さらにストレスが溜まるかもしれません。
メールは、自分の言いたいことを簡単に伝えられるツールです。手軽さゆえに、怒りにまかせてメールを書いてしまい、後で絶望的な気分になる人もいます。
気持ちが収まらないなら、素直に声をかけて対話の機会を作りましょう。
「大きな行き違いがあるようなので、直接お話をさせていただけませんか」
「このままメールで書くと喧嘩になりそうなので、直接お話ししたいと思います」
売り言葉に買い言葉……とならないためにも、メールが苦手な人は特に、直接話すようにしたほうがいいでしょう。
(平野 友朗 : 日本ビジネスメール協会代表理事、アイ・コミュニケーション代表取締役)
09/07 16:00
東洋経済オンライン