「大学3年生で起業」東大生が決断下した背景事情

ドラゴン桜 西岡壱誠 カルペ・ディエム

(漫画:©︎三田紀房/コルク)
記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。
その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。
そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載。連載を再構成し、加筆修正を加えた『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』は、発売後すぐに3万部のベストセラーとなっています。連載特別編の第135回は、8月24日放送の「さんまの東大方程式」に出演した西岡氏が大学3年生の時に起業した理由をお話しします。

大学3年生のときに起業

「よく、大学に通いながら起業するなんて選択をしたね」

今まで何度も言われた言葉です。僕は大学3年生のときに「カルペ・ディエム」という会社を起業して、今も現役東大生たち20数名とともに働いています。

この連載も、一緒に働く東大生たちから聞いた内容と、その仲間たちと一緒に学校でワークショップを実施したり講演会をする中で、学生さんや保護者から聞いた悩みをもとに、読者の皆さんに向けて情報発信をしています。

そんな活動をしている中でも、やはり多くの人から「大学在学中に起業するなんて、不思議な選択だ」と言われます。

でも実際のところ、僕の周りには大学在学中に起業した友達が数多くいます。教育関連の会社をやっている人や、工学部の友達同士でIT系企業を作った人など、さまざまな分野で起業しています。データがあるわけではありませんが、僕自身の体感としては、起業する大学生はどんどん増えているのではないかと感じています。

なぜそんな選択をしたのか? 人によって理由はさまざまですが、起業した友達の中で1つ共通するのは「自分の人生は自分で動かしたいから」ということです。

漫画『ドラゴン桜』の中でも、就職先が倒産した後に東大を目指し始めた人が登場します。まずは以下のシーンをご覧ください。

※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

(漫画:©︎三田紀房/コルク)

(漫画:©︎三田紀房/コルク)

(漫画:©︎三田紀房/コルク)

「倒産したときに、自分が働く会社のことを知ろうとしていなかったことに気づかなかった」という感覚は、よくわかります。

東大をはじめ、難関大学に入ると、大企業や給料のいい就職先に行くこともできます。でも、そういう企業に入ったにもかかわらず、会社の経営が傾き始めたとしたら、どうでしょうか。自分の知っている範囲で物事がうまくいかなくなり倒産するというよりは、自分の預かり知らぬところで勝手に物事が進んで倒産してしまう場合がほとんどです。

一方で、大学生の間に起業している人は、倒産するのも成功するのも、自分で責任を背負いたいという気持ちが強いように感じます。

今はVUCAの時代と呼ばれています。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つのキーワードから頭文字を取った造語で、『物事の不確実性が高く、将来の予想が困難』という意味です。平たく言うと、『移り変わりが激しい』時代だということです。

「大企業に入ればいい人生」から変化

昔のように、「大企業に入れば、いい人生が送れる」という時代ではなくなってしまいました。

安泰だと思っていた大企業でもあっさり倒産することもあるし、そうかと思えば小さな企業が一気に世界に名だたる会社になることもあります。年功序列・終身雇用といった今まで当たり前だった社会のシステムもどんどん変わっています。副業するのも当たり前です。

そんな時代を生きていくのだから、誰かのせいで自分の人生が大きく左右されてしまうことも多いことでしょう。

もし頑張ってうまくいかなかったとしても、「自分の頑張りが足りなかったから、ダメだったんだ」と考えて、次に生かせるような人生を送りたい。ベンチャー企業は、そんな思いをかなえてくれるように感じます。自分たちで100%会社のことを決めていい状態というのは、とても楽しいものです。

大学生の間に起業してベンチャー企業を作ると、「優秀な学生にいくらでも手伝ってもらえる」という利点もあります。

恥ずかしながら、僕は偏差値35から2浪して東大に合格した人間です。そんな僕からすると、今会社を手伝ってくれている東大生たちは、僕よりも頭がいいです。卒業後に官僚になった人もいますし、コンサルでガンガン活躍している人もいます。

大学生の間に起業すると、そんな優秀な学生たちがたくさん手伝ってくれるのです。

もちろん大学生のときに僕たちの会社を手伝ってくれて、そのまま入社してくれる人は限られています。でももしかしたらその学生たちは社会で活躍した後に、就職先の会社から、僕たちの会社に仕事をくれるかもしれません。

自分の人生は自分で切り開く

また、就職先との相性があまり合わずに転職を決断したときに、その転職活動の準備期間の間に、僕たちの会社を手伝ってくれるかもしれません。

実際、学生時代に会社を立ち上げた僕の友達は、創業メンバー5人のうち1人が社長としてその会社を続け、残りのメンバー4人のうちの2人は就職した後に、「やっぱり俺、就職先とあんまり相性よくなかったわ!」と戻ってきたとのこと。学生起業を手伝うと、そういう「いざというときの逃げ場」ができるという部分もあるのだと思います。

僕も、東大生のOBから「もし今の上司と喧嘩してもう嫌になったら、会社に戻ってきてもいい?」と言われました。おそらく彼がそういう選択をすることはないと思いますが、「自分にはいつでも逃げられる場所がある」という思いは、働くうえでの精神の安定に寄与すると言えるのではないでしょうか。

自分の人生は、自分で切り開きたいものです。大学生のときに起業したり、起業を手伝ったりすると、100%自分たちで決めていい場を作ることができます。また就職したとしても「逃げ場」ができる場合もあるのです。

受験勉強や、子供への教育など、西岡壱誠さんへの質問を募集しています。こちらの応募フォームからご応募ください。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)

ジャンルで探す