10歳までの子育て「やきもきせず見守る」の大正解

海を走る女の子

10歳までは体で感じて話したことを、知識になるベースとして吸収していく時期です(写真:A_Team / PIXTA)
モンテッソーリ教育はいまから100年以上前、イタリアの女性精神科医マリア・モンテッソーリさんが始めた教育法です。マリアさんは当時の「子どもは何もできない存在」という世の中の考えに対し、「子どもは、自分で成長できる力がある。もし子どもが何かをできないとき、それは能力がないのではなく、ただやり方を知らないだけだ」と考え、独自の教育法を打ち立てました。
本記事では、菅原陵子さんの著書『4・5・6歳 小学校の勉強がスイスイできる子になるおうちゆるモンテッソーリのあそびと言葉がけ』より一部を抜粋・再編集してお届けします。

10歳まで子どもは体で覚えていく

子どもの成長について知っておいてほしいことがあります。よく育児書などに「10歳までの子どもの育て方が大事」と書かれていますが、なぜ「10歳まで」なのかということです。

この10歳という成長の節目は意外と大きく、10歳までの育ち方が、10歳以降の育ちに大きく影響してきます。

どんな違いがあるかというと、10歳までは体で感じて話したことを、知識になるベースとして吸収していく時期。自分の世界を広げ、ものの見方や考え方を知っていきます。だから、「体をたくさん動かすこと=体験」がとても大事になります。

そして、10歳ごろから脳の使い方が少しずつ変わっていき、体ではなく、「言葉」を使ってものを考えていくようになります。いわゆる「言葉で言葉を考える」ようになっていく時期です。

抽象的な概念を使って考えたり、会話できるようになる。ベースになるのが、10歳までに体を使って感じ、考え、話してきたこと、つまり「体で覚えてきたこと」なのです。

子どもにかかわれる時間は案外短い

10歳ごろになるともう一つ、それまでとは変わることがあります。

それは、「親といるより、友だちといる時間の方が楽しくなる」ということ。親に甘えなくなるということではなく、外の世界に「一人の人として」出かけていくようになる、そんな変化を迎えます。

「10歳なんてまだまだ子ども。自分がいないと何もできないはず」と親御さんは思いがち。ですが、子どもの心と体は10歳ですでに自立に向かい始めています。本来、そこで親御さんも子どもから自立=手を離していく時期なのです。

生まれて間もないころはお母さんの気配が消えるだけで泣いていた子も、離乳期、イヤイヤ期、幼児期と成長していくにつれて、だんだんと自立していく。親が子どもにかかわれる時間は、じつは思っているほど長くはないのです。

いま小さなお子さんを育てているまっ最中の方は、子どものイヤイヤに悩まされたり、子ども中心の生活で自分の自由な時間が持てないと、モヤモヤしているかもしれません。でも、そんな時期はあっという間に過ぎていきます。

そして、一つだけ頭に入れておいてほしいのが、「10歳までの育ちがその子の体と知性を育む大切な時期」だということ。

子どもの成長

(出所:『4・5・6歳 小学校の勉強がスイスイできる子になるおうちゆるモンテッソーリのあそびと言葉がけ』)

子どもの成長を一本の木として考えるとイメージしやすいのですが、10歳までに体を使って感じたことや、誰かの話を聞いたこと、自分で言葉にしてきたことは、子どもの根っこを育てます。しっかりした根があるからこそ、子どもは大きな「木」へと成長できるのです。

根っことは「何ができる」ではなく、その子独自のものの見方や世界の見方の豊かさのこと。それは知識を広げたり、思考を深めていくといった「地頭のよさ」の本質です。そしてそれは、家での暮らしの中でゆっくりと育まれるものです。

「できる・できない」のジャッジをしない

ところが、どうでしょう。多くの親御さんは「◯歳まで」というキーワードにソワソワ。

4・5・6歳 小学校の勉強がスイスイできる子になるおうちゆるモンテッソーリのあそびと言葉がけ

「6歳までにあれができないといけない」「10歳までにこれをやっておくといい」といった情報を見ては、わが子の「できる・できない」をチェックし、目につく足りないことを何とかしようとします。

また、「早いうちから○○させればあとで苦労しないだろう」と、学校で学ぶことをカンタンに、早く学ばせようとしたりします。

それは一見、木の根っこを育てるような地道な教育や暮らしよりも効率的で、のちのち苦労しないように見えます。でも実際のところは、10歳までは何ができても、できなくても、それほど重要ではないのです。

でも、10歳までは目の前にいる子どもを見ながら「ああ、いまこの子の『根っこ』を育てているんだなぁ〜」と思って暮らしていくことが大事。

気長に少しずつ続けていくことで、子どもの太くて強い根っこが作られます。それはいずれ「その子が、その子らしく、望む木の実を実らせる」ための一生モノのベースになっていきます。

子どもの成長イラスト

(出所:『4・5・6歳 小学校の勉強がスイスイできる子になるおうちゆるモンテッソーリのあそびと言葉がけ』)

(菅原 陵子 : モンテッソーリ・ホームレッスン代表)

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