降水確率50%、傘は持っていく?納得「数学的」解答
降水確率50%のとき、傘を持っていく?
6月に入り、じめじめとした季節になってきました。梅雨入り目前になると気になるのが、「傘」の問題。
朝、家を出る時には晴れていて、傘を持たずに出かけると、夕方家に帰るときにはあいにくの雨模様。仕方がないのでコンビニでビニール傘を購入して帰宅。梅雨が明けるころにはたくさんのビニール傘が玄関先に……。なんて経験、あなたにもきっとあるのではないでしょうか。
ここで質問です。天気予報で、「明日の降水確率は50%です」と言っていました。天気予報の降水確率は絶対ではありません。今日は降水確率50%で雨でも、明日は同じ降水確率で曇り、ということもあり得ます。あなたは明日、傘を持っていきますか?
解答は、人によって大きく異なるでしょう。常に折り畳み傘を持ち歩く方もいれば、たとえ降水確率が100%でも出かける時に雨が降っていなければ傘は持っていかないという方もいます。
しかし、このような場面において、数学的に考えることで合理的な意思決定ができることもあります。今回は傘を持って出かけるかどうかの判断を、数学的な視点でとらえなおしてみましょう。
今回、数学的に考えるために使うツールは、
・(降水)確率
・期待値
の3つです。聞いたことがある言葉ばかりではないでしょうか。
どういう状況が嫌なのか?
まず、状況を場合分けしてみます。便宜上、「晴れ」とは雨が降らなかったことを指すものとします。つまり曇りのときは、雨が降っているわけではないので「晴れ」に含まれます。
場合分けができたら、それぞれのケースにおける「不快な度合い」を数値で置き換えます。
この中で最悪なのはケース④、つまり傘を持たずに出かけたが雨が降ってしまった場合でしょう。たとえば、不快度を「10」としましょう(もちろん「10」でなくても問題ありません)。
次にケース①がどれくらい不快かを数値に置き換えます。ここでの不快とは、たとえばずっと傘を持って歩くことの面倒さなどでしょうか。ここで重要なのは、先ほどのケース④の不快度(10)と比較してどれくらいかを考えることです。つまりここで示される数値は絶対的なものではなく相対的なものになります。
仮にケース①の不快度を「3」としましょう。さらにケース①とケース②は傘を持っている手間というコストを支払っている意味では同じなので、ケース②の不快度も「3」であると考えます。
もちろんこの数字も人によって違うでしょう。晴れの日に傘を持っていることと雨の日に傘を持っていることでは意味が違うと考える人もいるかもしれません。そのような価値観の人はそのように数値で表現すればよいのです。
最後にケース③については、特に不快になる理由はないので、不快度は「0」としました。整理すると、
となります。
降水確率とかけ合わせて「期待値」を導く
次に、「期待値」という考え方を持ち込みます。降水確率が50%(0.5)の場合、逆に晴れる確率は50%になることに注意すると、「傘を持っていく」と「傘を持っていかない」の期待値は次のようになります。
すなわち、「傘を持っていかない」のほうが不快度は高いということになります。人間は誰しもわざわざ不快になるほうを選んだりはしません。降水確率が50%の日は、傘を持っていく選択が合理的だと説明ができます。
この考え方を使うと、降水確率をPとしたとき、それぞれの期待値は次のように計算できます。
このような期待値で表現される価値観をお持ちの方にとって、傘を持っていくという選択が合理的になるのは、どのような場合でしょうか。傘を持っていくということは、その選択をしたほうが不快は少ないと考えます。すなわち、次の不等式が成り立ちます。
つまりこの人物は、降水確率が30%を超える場合は傘を持っていく判断をするということになります。
お気づきのように、この考え方で得られる結論は「不快度」としてどのような数値を設定するかで決まります。不快度は、何をどれくらい不快に感じるかを直感的かつ曖昧な状態にせず、極めて具体的な言語に変換した結果です。つまりその人物の感覚が数値化されているものと言えます。
よろしければあなたも同じように試してみてください。あなたは降水確率が何%以上なら傘を持っていく判断をする人物でしょうか。
(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)
06/06 07:00
東洋経済オンライン