中堅企業の成長を後押しする「中堅・中小グループ化税制」とは?

ストライク<6196>は10月31日、VC(ベンチャーキャピタル)の集積拠点「Tokyo Venture Capital Hub」(東京都港区)でスタートアップと事業会社の提携促進を目的としたイベント「第30回 Conference of S venture Lab.」を開いた。

今回は、新しい枠組みである"中堅企業"が複数の中小企業をグループに迎え入れ、一体となって成長していくことを支援する「中小企業事業再編投資損失準備金の拡充枠(中堅・中小グループ化税制)」をテーマにしたトークセッションのほか、ピッチ、名刺交換会などで交流を深めた。オンラインを含めて100人以上が参加した。

中堅・中小グループ化税制とは?

第一部のトークセッションではまず始めに、経済産業省 経済産業政策局 産業創造課の加藤直樹氏と東海斗氏が「M&Aによる成長戦略を後押しする“中堅・中小グループ化税制”」を説明。次いでアイデミー代表取締役の石川聡彦氏を交えた3者で「成長戦略としてM&Aを活用する中堅企業」をテーマに語り合った。

冒頭では東氏が、今回、産業競争力強化法を改正し、同法における中小企業者を除く従業員2000人以下の会社及び個人を中堅企業者と新たに定義したと説明。さらにその中でも良質な雇用の創出や将来の成長性、経営能力に基づき、成長志向の中堅企業を特定中堅企業者とすることで、設備投資やM&Aを促進する税制措置などを講じるとした。

経済産業省 経済産業政策局 産業創造課の加藤直樹氏(写真左)と東海斗氏

その後、加藤氏から、今回、措置された拡充枠、通称「中堅・中小グループ化税制」は、産業競争力強化法において新設された特別事業再編計画の認定を受けて株式取得によるM&Aを実施し、認定後1回目のM&Aにおいては株式取得価額の90%、2回目以降は100%の金額を準備金として積み立てた時、その事業年度における当該金額を課税所得から損金算入でき、10年間据え置くことができる税制であると説明。また、新たに税制適用対象が中小企業者だけでなく特定中堅企業者にも広がった旨の説明があった。

制度の前提として、企業成長の手段としてM&Aが有効であることを、M&A実施企業と未実施の企業の売上高、経常利益や労働生産性などを比較し、M&A実施企業の方が伸びていることを例示。さらに同制度は「M&Aの際の簿外債務などの見えないリスクに備えることができる税制」(加藤氏)というメリットがある。ただ、対象は、みなし大企業でない中堅企業者・中小企業者であることなどの課税の特定の要件を満たす必要がある。

中堅企業にとってのM&Aとは?

アイデミーの石川氏を交えたセッションでは、AIの開発を行っているアイデミーがM&Aを積極的に活用して成長していることを踏まえ、これから成長を目指していく中堅・中小企業について、活発な意見交換が行われた。アイデミーは、上場前はオーガニック成長に注力し、上場後にM&Aを実施。グロース企業も利益を継続的に出しながら成長することが求められている昨今、先行投資・採用という側面からM&Aを考えていることが特徴だ。 

アイデミー代表取締役の石川聡彦氏

成長志向を「さらに加速させてもらうために」(東氏)同制度がある。中小企業から大企業の間に位置する、「支援の崖」(加藤氏)にあたる中堅企業をサポートすることで日本経済を後押しする側面のある中堅・中小グループ化税制だが、「減税措置ではなく、繰り延べ措置に留まる」(石川氏)との見方もある。これに対しては「損金算入による手元キャッシュの増加で、PMI(合併後の統合プロセス)やほかのM&Aに回す資金が確保できる」(加藤氏)との回答があった。

第二部では、スタートアップによるピッチが行われた。独⾃アルゴリズムと⽣成Aiによる、独⾃のロボティクス・コンピュータビジョン技術「symX」で、カーボンニュートラルが求められる多くの産業の新たな「⼯業化」を⽬指すXsymと、宗教界に特化し宗教資金のデジタル化を目指すキャッシュレスサービス「寺Pay」の拡大を進める366が、熱量高く自社のビジネスモデルを紹介。参加者は熱心に聞き入っていた。

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