「中小M&Aガイドライン」 この秋の改訂でどうなる?

経済産業省・中小企業庁が進めている「中小M&Aガイドライン」の改訂作業が大詰めを迎えている。昨年9月の第2版から1年ぶりとなる改訂だ。中小企業のM&Aを取り巻く環境が変化したことから、より実務に踏み込んだ内容になるのと見られている。その内容は?

「特定事業者リスト」の作成で不適切な買い手問題に対処

今回の改訂で注目されるのは、一部報道があった契約不履行などのトラブルで明らかになった不適切な買い手の問題だ。国としては中小企業の事業承継策としてM&Aを推進しており、同ガイドラインの策定もその一環だ。こうしたトラブルが続けば、中小企業の間でM&Aに対する不信感が高まる可能性があるとして、今回の改訂でM&A仲介事業者に対策を講じるように促す。

国が問題視しているのは、被害が出ているにもかかわらず、同じ買い手が複数回にわたって仲介事業者を利用して不適切なM&Aを実施していることだ。こうした買い手が次々と仲介事業者を渡り歩いて不適切なM&Aを実施しているケースもあり、把握が難しい。

そこで、業界団体であるM&A仲介協会に、不適切な買い手情報をまとめた「特定事業者リスト」の作成を働きかけ、協会内で共有することで被害の拡大防止を図る。

手数料問題は「情報開示」で競争を促す

仲介手数料が高いとの批判を受けて、2025年から仲介事業者に手数料の開示を求め、仲介事業者間の競争を促す。ただし、仲介手数料の上限規制については、民間企業間の契約なので導入しない。

買い手と売り手の双方から手数料を得る「両手取引」についても、制限には踏み込まない。これは両手取引に制限をかけると仲介事業者が少額案件の多い中小企業のM&Aを取り扱わなくなる可能性があるため。そうなれば中小企業のM&Aを推進する政策に水を差しかねない。ただし、仲介事業者が利害相反が発生する可能性がある旨を顧客に告知し、同意を得るよう求める。

国としても中小企業M&Aには仲介事業者が重要な役割を果たすと認識しており、同ガイドラインの改訂で業界団体による適切な自主規制のルール作りと遵守を働きかける方針だ。

文・糸永正行編集委員

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