アングル:米銀はトランプ次期政権で大きな恩恵か、資本・買収規制緩和に期待

[7日 ロイター] - 米共和党のトランプ次期政権下で規制当局の資本規制や合併認可が緩和され、銀行業界は大きな恩恵を受けるとの見通しを、業界の専門家やアナリストらが示した。

大統領選でトランプ前大統領が勝利したことで、大手銀行の貸し倒れに備えるために銀行の資本上乗せ義務などを盛り込んだ国際的な銀行資本規制「バーゼル3」最終化実施規則はさらに希薄化される可能性が高い。

銀行側はこれまでにバーゼル3について融資の抑制や景気の悪化を招くと反論し、大幅な譲歩を勝ち取ってきた。それでも米連邦準備理事会(FRB)幹部によると、最終案で最大手クラスの銀行の自己資本は約9%に引き上げられる見通しだ。

銀行規制当局の元トップで、ルドウィッグ・アドバイザーズの最高経営責任者(CEO)として金融機関に助言しているジーン・ルドウィッグ氏は「バーゼル規制の最終的なルールは完全に骨抜きになる可能性がある」との見方を示す。

昨年、米地方銀行3行が経営破綻した数カ月後に発表されたバーゼル3案に大手銀行は激しく反発し、前例のないような活発なロビー活動を繰り広げた。

FRBで金融監督を担当するマイケル・バー副議長は今年9月にバーゼル3案を見直すと表明し、規制案を縮小することで合意した。

AJベルの投資アナリスト、ダン・コーツワース氏は「トランプ氏の下で銀行分野の見通しはより明るくなる」とし、「銀行への制約が軽減し、融資や自社株買いにより多くの金を使えるようになるだろう」との見通しを示した。

FRBはコメントを控えた。

6日に米大型銀行を対象としたKBW銀行株指数は一時11%近く上昇し、地域金融機関を対象とする指数は13.5%急騰した。

ラザードのチーフ・マーケット・ストラテジスト、ロナルド・テンプル氏は資本規制が緩和されるとの期待感から中堅銀行株が6日に買われたと分析する。

また、反トラスト法(独占禁止法)の規制が緩くなる可能性も取りざたされている。テンプル氏は、米銀キャピタル・ワンによる353億ドルでのクレジットカード大手ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズの買収が認可されるとの見方が両社の株価を押し上げたと指摘した。

モーニングスターDBRSは顧客向けのノートで「銀行にとっての企業の合併・買収(M&A)は、認可までの期間が短縮されることで恩恵を受ける可能性がある」と記した。

4600を超える金融機関が存在する米国では、多くの主要業界幹部らが銀行の経営統合を求めている。統合が実現すれば、小規模銀行が規模で上回る同業他社とより効果的に競争できるようになるからだ。

パイパー・サンドラーの銀行アナリスト、スコット・シーファーズ氏はリポートで「少なくともM&Aを議論に戻すことはできる。過去数年間は懲罰的な規制を背景に、ほとんど起こらなかった」とした上で、フィフス・サード・バンコープ、ハンティントン・バンクシェアーズ、PNCフィナンシャル・サービシズ・グループの3社はM&Aの実施により関心を抱いている可能性があると言及した。

ハンティントンはコメントを差し控えた。フィフス・サード・バンコープとPNCフィナンシャルはコメントの要請に直ちには応じなかった。

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