どこまで伸びる上場企業のM&A、5月末で早くも500件突破

2024年の上場企業によるM&A件数(適時開示ベース)が5月末で早くも500件を突破した。昨年より1カ月速いペースで、過去10年でも最速だ。アフターコロナの到来を背景に、昨年のM&A件数は16年ぶりに年間1000件の大台に乗せる快挙となったが、今年に入って増勢がさらに強まっている。

16年ぶり「大台」の昨年を1カ月上回る

上場企業に義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。

2024年1~5月のM&A件数は518件と、前年同期を91件上回る。節目の500件を超えたのは5月30日。翌31日は1日だけで15件の駆け込みがあった。前年は500件に届いたのが6月30日だったので、ちょうど1カ月ペースが速い。518件の内訳は国内案件419件、海外案件99件。国内、海外ともに前年に比べ21%増えた。

好調ぶりを示すのが月別の動きだ。昨年10月から今年5月まで8カ月連続前年比プラスで推移している。7カ月連続で前年比プラスは過去10年で2度(2016年8月~17年2月、2018年10月~19年4月)あったが、これを更新した。

これまで500件に到達した時期を振り返ると、2022、21年は7月末、20年、19年は8月初旬、18年、17年は9月半ば、16年は10月初旬。デフレ脱却に向けてアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)が始動した2013年は10月末にようやく到達した。

2023年の年間M&A件数は1068件と前年(949件)を119件、率にして12.5%上回り、2007年(1169件)以来16年ぶりに1000件の大台を達成した。コロナ禍で落ち込んでいた海外案件も7年ぶりに年間200件を超え、総件数を押し上げた。

※2024年は1~5月時点、M&A Online集計

2年連続で1000件突破はほぼ確実

M&A件数は3月期決算会社の株主総会が集中する6月、夏場の7~8月にペースが鈍り、秋口から年末にかけて大きく盛り上がる傾向がある。

今後、2024年はM&A件数の行方はどうなるのか。今のままいけば、2年連続で年間1000件に乗せることはほぼ確実。世界的な金融危機を招いたリーマンショック前の2007年に記録した年間1169件に追いつけ追い越せの展開も予想される。

一方で、日銀が金融緩和政策を修正したことで、産業界ではM&A資金の調達コストがじわり上昇しており、年後半にかけて影響が広がる懸念もある。

M&A市場はリーマンショックを境に長らく低迷した。2008年のM&A件数は870件と前年比25%減少し、翌年は800件を割り込んだ。2010年代前半は年間600件台が続き、19年にようやく800件台を回復した。2020年以降はコロナ禍の逆風下、件数をむしろ大きく伸ばしてきた。

◎2024年1~5月:M&A金額上位10

社名 内容 金額 発表
1 ルネサスエレクトロニクス 米国のプリント基板設計ソフトウエア企業「アルティウム」を子会社化 8900億円 2月
2 積水ハウス 米国の戸建住宅メーカー、MDCホールディングスを子会社化 7210億円 1月
3 小野薬品工業 米国のバイオ医薬品企業デシフィラ・ファーマシューティカルズを子会社化 3760億円 4月
4 旭化成 スウェーデンの製薬企業カリディタス・セラピューティクスを子会社化 1739億円 5月
5 セブン&アイ・ホールディングス 米コンビニ大手のスノコから追加で事業を取得 1374億円 1月
6SGホールディング低温食品物流のC&Fロジホールディングスを対抗TOBで子会社化1237億円5月

7

三浦工業 米国ボイラメーカー、クリーバーブルックスを子会社化 1161億円 3月

8

アルプス物流 米KKR傘下のロジスティード(旧日立物流)によるTOBを受け入れ 1051億円 5月

9

日本KFCホールディングス 米投資ファンドのカーライル・グループによるTOBを受け入れ 945億円 5月

10

ロート製薬 シンガポールの漢方薬大手ユーヤンサンを三井物産と共同で買収 880億円 4月

文:M&A Online

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