M&A仲介の上場企業が3年連続して誕生、「大手8社」体制に

M&A仲介のインテグループ(東京都千代田区、藤井一郎社長)が6月18日に東証グロース市場に上場する。M&A仲介の上場は3年連続で、合計8社となる。

後継者不足に伴う事業承継問題などを背景に、中堅・中小企業をめぐるM&A市場の拡大が続く中、担い手として仲介会社の役割が一層増している。この機会に、知っているようで知らないM&A仲介の主要プレーヤーの顔ぶれと勢力図を整理してみる。

インテグループ、業歴すでに17年

インテグループの設立は2007年6月。M&A仲介として業歴はすでに17年に及ぶ。2022年のM&A総研ホールディングス(東証グロース上場後、現在は東証プライム)、2023年のジャパンM&Aソリューション(東証グロース)がそれぞれ会社設立から4年でスピード上場したのに比べると、スローな感は否めない。

創業者で現社長の藤井氏は三菱商事を経て、IT企業のフリービット、M&A仲介のサンベルトパートナーズ(現かえでファイナンシャルアドバイザリー)を経て、インテグループを立ち上げた。社名のインテは英語で誠実さを意味するintegrityに由来する。

株式上場の狙いの一つが知名度の向上。「上場企業で唯一の売り手・買い手ともに完全成功報酬型のM&A仲介専門会社」との認知を浸透させたいとしている。

同社の2023年5月期業績は売上高12億7300万円、営業利益2億3800万円。足元の24年5月期通期予想は明らかにしていないが、第3四半期段階(2023年6月~24年2月)で売上高14億500万円、営業利益6億5400万円、成約32組だった。

業界の“御三家”とは

M&A仲介業界における“御三家”は日本M&Aセンターホールディングス、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク。いずれも東証プライム市場(2022年4月に移行)に上場する。

なかでもトップの座を不動にしているのが日本M&Aセンター。1991年の設立から30年以上の業歴を持ち、売上高(2024年3月期は441億円)は2位のM&Aキャピタルパートナーズと2倍以上の開きがある。成約組数は年間600組に迫る。株式上場でも先行し、2006年東証マザーズに上場(翌年東証1部)した。

M&Aキャピタルパートナーズは2005年に設立し、2013年に東証マザーズに上場(翌年東証1部)した。2016年にM&A仲介の草分けとして知られるレコフ(1987年設立。東京都千代田区)を買収し、業容拡大に弾みをつけた。また、昨年2月にオリックスが3000億円で通販化粧品大手のDHCを買収した巨額案件は同社の仲介とされ、業界の話題をさらった。

ストライクは1997年に設立。インターネット上に国内初のM&A市場「SMART」を開設し、ネット活用に先べんをつけた。2016年に東証マザーズ(翌年東証1部)に上場。事業承継系を中心とした従来型の仲介業務にとどまらず、スタートアップと大手企業を結ぶ案件発掘など新機軸の展開も図っている。

快進撃が続くM&A総研

破竹の勢いを見せているのがM&A総研だ。2018年設立で、2022年6月に東証グロースに上場後、2023年8月に東証プライムに移ったばかり。足元の2024年9月期売上高は77%増の153億円を見込む。

IT系企業での経験を生かし、買い手候補企業の抽出にAI(人工知能)を応用したり、社内業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進め、成約期間を短縮化し、仲介件数の増加につなげてきた。

名南M&Aは名古屋、オンデックは大阪を地盤とする。売上高は名南M&Aが17.6億円、オンデックが16.4億円を見込む。名南M&Aは2019年に名証セントレックスに上場(翌年名証2部、2022年4月名証メインに移行)、オンデックは2020年に東証マザーズ(2022年4月に東証グロースに移行)。

昨年10月に東証グロースに上場したジャパンM&Aソリューションは売上高10億円にとどいていない。インテグループが今回加わり、M&A仲介の上場企業は8社となるが、上位4社と下位4社の開きは大きく、規模の面で二極化する形だ。

「仲介」と「FA」に大別される

M&A事業者は仲介会社と助言会社(フィナンシャルアドバイザー、FA)に大別される。中堅・中小企業M&Aの多くは仲介会社が買い手と売り手の間に立って交渉を進める。

これに対し、売り手、買い手のいずれか一方の側に立つのがFAで、国内勢では大手の銀行、証券会社が中心的なプレーヤー。大手企業や海外のM&A案件では買い手側と売り手の双方のFAが交渉を仕切る。ただ、現在、FA専門の国内上場企業はゼロだ。

かつてはFAとして国内で唯一、GCAが上場(東証1部)していたが、米投資銀行のフーリハン・ローキーと経営統合して2021年11月に上場廃止となった。

中堅・中小企業をめぐっては、後継者不足による事業承継問題への解決策としてM&A活用のニーズが年々高まっている。加えて、企業規模の拡大や事業の多角化などに向けた成長戦略としてM&Aが盛り上がっている。こうした中、M&A仲介として上場を目指す動きが続きそうだ。

◎M&A仲介の上場会社(売上高、営業利益の単位は億円)

社名 売上高 営業利益 設立 上場
日本M&Aセンターホールディングス 441 160 1991年 2006年
M&Aキャピタルパートナーズ 228 81 2005年 2013年
ストライク 182 70 1997年 2016年
M&A総研ホールディングス 153 72 2018年 2022年
名南M&A 17.6 2.3 2014年 2019年
オンデック 16.4 2.3 2007年 2020年
ジャパンM&Aソリューション 9.1 2.4 2019年 2023年
インテグループ 12.7 2.4 2007年 2024年6月

※業績 インテグループ=2023年5月期実績、日本M&Aセンター=24年3月期実績。ジャパンM&A=24年10月期予想、オンデック=24年11月期予想、その他4社=24年9月期予想。

文:M&A Online

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