2024年もTOBが活況、昨年より2カ月以上も早く30件に到達
TOB(株式公開買い付け)戦線が2024年も活況を呈している。TOB件数は5月23日に30件(届け出ベース)に到達したが、ペースは昨年を2カ月以上上回り、過去10年間で2021年に次ぐ。この調子が続けば、2年連続の年間70件台乗せが濃厚だ。
5月だけで日本KFCなど8件
今年30件目となったのはマンション管理大手の日本ハウズイングの案件で、5月23日に関東財務局にTOBの開始を届け出た。MBO(経営陣による買収)を目的とし、同社創業者で現会長の小佐野文雄氏が米金融大手のゴールドマン・サックスと連携した。買付期間は6月20日までの21営業日。買付代金は最大769億円。TOBが成立すれば、同社の東証スタンダード市場への上場が廃止となる。
5月は日本ハウズイングを含めて8件のTOBが相次いでスタートした。
この中には、米投資ファンドのカーライル・グループが「ケンタッキーフライドチキン」を展開する日本KFCホールディングス(東証スタンダード上場)をTOBなどによって総額約1300億円で買収する大型案件があり、話題を呼んだ。35%あまりの株式を保有し、日本KFCを実質的に傘下に収めていた三菱商事が経営から手を引くことになったのだ。
昨年は8月初めに30件に到達
2023年のTOB件数は前年比15件増の年間74件と、2009年79件以来14年ぶりの高水準となった。30件に到達したのは8月3日で、今年より2カ月以上も遅かったが、秋口から年末にかけてTOBラッシュが起こり、件数を大きく押し上げた。
2015年以降の過去10年で30件に最速で到達したのは2021年。5月11日のことで、最終的に年間70件まで伸ばした。2022年も6月13日も今年に次ぐペースだが、年間件数は59件どまりだった。
もう少しさかのぼると、2013年は4月半ば時点で30件に到達したが、その後、失速して、年間56件にとどまった。
MBOが牽引役に
足元の2024年のTOBがハイペースで推移している要因の一つはMBO。ここまで30件のTOBのうち、MBOが3分の1近い9件を占める。MBOの年間件数は2020年11件→21年19件→22年12件→23年16件と4年連続で2ケタとなっているが、24年は5カ月足らずで10件を目前としている。
MBOは一流企業の証とされる上場企業の看板を下ろし、株式を非公開化(上場廃止)することをいい、オーナー系企業に多くみられる。多額の買収資金を必要とすることから、近年、投資ファンドを組むケースが増えている。
実際、2024年をみても、ここまで9件のMBO(一覧表)のうち、7件について海外の投資ファンドなどが関与(国内投資ファンドは1件のみ)している。
◎2024年のMBO一覧(届け出ベース、※は買い付けが進行中)
届け出 | 社名 | 投資ファンドなどとの連携 |
1月 | アオキスーパー | なし |
〃 | ペイロール | 米TAアソシエイツ |
〃 | ベネッセホールディングス | スウェーデンのEQT |
2月 | ウェルビー | ポラリス・キャピタル・グループ(日本) |
〃 | ローランドディー.ジー. | 米タイヨウ・パシフィック・パートナーズ |
〃 | スノーピーク | 米ベインキャピタル |
〃 | アウトソーシング | 米ベインキャピタル |
5月 | エスライングループ本社※ | なし |
〃 | 日本ハウズイング※ | 米ゴールドマン・サックス |
“上場廃止予備軍”の存在も
TOBはリーマンショック後の2009年に年間79件を数えた後、2010年代は40~50件で推移し、14年には36件まで落ち込んだ。息を吹き返した20年は60件、21年は70件に伸ばした。東証市場再編のあった22年は一服したが、23年は74件と勢いづいた。24年も今のペースなら70件超えが確実視される。
上場企業を巡っては、東証によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れの解消要請など、資本コストと株価を意識した経営が強く求められるようになり、上場維持のハードルがより高まっている。
また、2022年4月の東証の市場再編から2年余りが経過。上場維持基準を未達でも暫定的に上場を認める「経過措置」が2025年3月以降に順次終了するのに伴い、“上場廃止予備軍”を標的としたTOBや、自らの判断で株式市場から退場するMBOに活路を求める動きが広がる可能性がある。
文:M&A Online
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