エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは

 ハイパフォーマンスカーでも独自の世界観を持っているのがアメリカンスポーツカー、もとい“マッスルカー”です。今回は、日本未発売も含む3台のハイパフォーマンスアメリカンを紹介します。

筋肉美溢れるアメリカンスーパースポーツ3選!

 自動車業界は脱炭素化が進められていますが、一方でクルマの最高出力は向上している傾向にあります。

 自動車メーカーの技術力が向上していることはもちろん、電動モーターを組み合わせたハイブリッド車が増加していることも出力向上の要因と言えるでしょう。

 電動モーターは小型で高出力を得られることからその特性を最大限に生かし、内燃エンジンをサポートする“脇役”から“主役級”の性能を得たPHEVも増えています。

 エコ性能が進むとともに、ハイパワーカーが身近な存在になってきています。

 欧州では、エンジンをダウンサイジングした代わりにPHEV方式を採用したスーパースポーツカーが増えてきています。

 モーターの特性を車体の操舵に生かしたトルクベクタリング機能を備えるモデルもあり、電動モーターの活用はエコを超えた領域に入っています。

 しかし、独自の世界観を持つハイパーカーも存在します。しかも、パワーソースは昔ながらのエンジンのみ。それがアメリカンスーパースポーツ、いわゆる“マッスルカー”です。

 アメリカンスーパースポーツといえば、まずは「コルベット」に触れなければなりません。

アメリカン・スーパースポーツの代表格、シボレー「コルベット」。2024年7月に追加された「コルベットZR1」は1079馬力の5.5リッターV8ツインターボを搭載

アメリカン・スーパースポーツの代表格、シボレー「コルベット」。2024年7月に追加された「コルベットZR1」は1079馬力の5.5リッターV8ツインターボを搭載

 コルベットは1954年に初代が登場したスポーツカーです。この初代登場から70年を迎えました。

 2019年に米国で発表された8代目となる現行「C8」型は、大胆なフルモデルチェンジを敢行しました。アメリカンスポーツといえば、FR方式であるのがひとつのセオリーでしたが、C8はエンジンをミッドシップにマウントしたMRとなりました。そのため、欧州のスーパーカーのようなスタイルを獲得しています。

 しかし鋭角と直線を基調としたボディデザインはコルベットそのものであり、欧州のスーパーカーとも違ったアメリカンな雰囲気は変わりがありません。

 シボレージャパンがあるため、C8コルベットは正規輸入車として日本で購入可能です。現行型にはコルベット初となる右ハンドルも用意されています。

 アメリカ本国では日本未導入の最高グレード「ZR1」が2024年7月に発表されました。

 エンジンは5.5リッターのV型8気筒ツインターボで、最高出力1064HP(1079PS)・最大トルク828LB-FT(114.3kgm)を発揮します。もはやマッスルを超えたモンスターマシンです。

 ちなみにC8コルベットにはハイブリッドモデル「E-Ray」がラインアップされているのもユニークなポイント。前輪をモーターで駆動するAWDで、雪道も難なく走れるスーパーカーに進化しています。

野生馬がサラブレッドのコースを走り観客を魅了

“青春の車”とも表されるフォード「マスタング」もまたアメリカを代表するスポーツカーです。

2024年9月に米国市場で登場した2025年モデルのフォード「マスタングGTD」

2024年9月に米国市場で登場した2025年モデルのフォード「マスタングGTD」

 日本でも販売されていましたが、フォードの日本撤退と共に入手困難となりました。しかしアメリカではもちろん生産と販売が続いており、年々進化しています。

 2024年9月16日、フォードは2025年型の高性能版「マスタングGTD」をアメリカ本国で発表しました。

 マスタングは「エコブースト」「GT」「ダークホース」とラインアップしていますが、GTDは別格でパフォーマンスモデルに位置付けられています。公道走行が可能なマスタングの中では頂点です。

 GTDのボディには、張り出した前後フェンダーやダクト、GTウイングなどのエアロパーツが装備されています。

 スペックは見た目通りです。5.2リッターのV型8気筒スーパーチャージドエンジンを搭載し、最高出力815HP(826PS)・最大トルク664LB-FT(91.6kgm)を発揮します。

 サーキット走行にも対応したGTDですが、箱型のクーペがベースともあり、そのスタイルはさながらチューニングカーのようでもあります。この独特の雰囲気もまたアメリカンならではといえます。

 まず、古き良きアメリカンマッスルの雰囲気を持つのがダッジ「チャレンジャー」でしょう。

ダッジ「チャレンジャー」の最高グレード「SRT スーパーストック」は818馬力の6.2リッターV8OHV+スーパーチャージャーを搭載

ダッジ「チャレンジャー」の最高グレード「SRT スーパーストック」は818馬力の6.2リッターV8OHV+スーパーチャージャーを搭載

 直線を基調とした箱型のクーペボディと円形かつ左右2眼ずつのヘッドライト、そしてシンプルなグリルは往年のアメリカンスタイルと言えるもので、ワイドボディ車は、さらに張り出した前後フェンダーが筋肉質なイメージを高めています。

 エンジンは5種類が用意されていますが、最高グレード「SRT スーパーストック」に搭載されるのは6.2リッターのV型8気筒OHV。アメリカンらしい「スーパーチャージャー」が搭載されており、最高出力807HP(818PS)/6400rpm・最大トルク707LB-FT(97.6kgm)を発揮します。

 これほどの大パワー・高トルクにもかかわらず、駆動方式は後輪駆動を採用。ユニークなのは「ラインロック」機能を搭載していることで、前輪のみにブレーキをかけることができます。

 それはすなわち「バーンアウト」ができるということです。V8の猛々しい音を響かせ後輪を空転し白煙をあげる。エコに反して懐古的にも思えるそんな機能が載っている点もまた、アメリカンらしいポイントではないでしょうか。

※ ※ ※

 3台のアメリカンスーパースポーツを紹介しましたが「カマロ」も忘れてはいけないでしょう。

 2023年にフランスで開催される「ルマン24時間レース」。そこにアメリカのレースシリーズ「NASCAR」仕様のカマロが出場しました。

 ルマンの老舗チームは、先進のプロトタイプレーシングカーらしいスタイルのマシンを用意しましたが、NASCARカマロは市販車を踏襲した箱型のボディです。

 欧州のスーパーカーに比べれば野暮ったい感じがしましたが、蓋を開けてみればGTE Amクラスを凌駕するスピードを見せ、大きなインパクトを与えました。

 ルマンでは聞き慣れないアメリカの魂(V8エンジン)の咆哮は野生そのものの響きでした。

 ルマンを走るのは調教されたサラブレッドがほとんどです。しかし、その中に放たれた野生馬は、サラブレッドよりも目立っていました。

ジャンルで探す