スポーツカーの代名詞「GT-R」はじつは日産だけのものじゃなかった! 他メーカーにもあった歴代“ジーティーアール”3選

「GTR」と聞けば、多くの人が「日産 GT-R」あるいは「日産 スカイラインGT-R」を思い浮かべるでしょう。しかし過去には日産車以外でも「GTR」の名前がついたクルマが多数存在しました。日本のスポーツカー黎明期と黄金期に誕生した3台の「GTR」を紹介します。

昭和の時代に登場した「GTR」の名前を冠する名国産車3選

「GT」も「R」もクルマの名前やグレード名によく使われる名詞です。いまでこそ日産が固有名詞として使用していますが、本来「GTR」という言葉は普通名詞になります。

「GT-R」といえば1989年に登場したBNR32型日産「スカイラインGT-R」が有名だろう。ただ日本車にはかつてGTRの名がついた車種が複数存在した

「GT-R」といえば1989年に登場したBNR32型日産「スカイラインGT-R」が有名だろう。ただ日本車にはかつてGTRの名がついた車種が複数存在した

 そのため、いまよりもありふれた名前として車名やグレード名などに用いられ、かつては「GTR」の名前が付くクルマが各メーカーで生産されていました。

 そもそも「GTR」とは、どのような意味なのでしょうか。

 一般的には「GT」は「Grand touring(グランドツーリング)」の略称で、「R」は「Racing(レーシング)」の意味が当てられる場合がほとんどです。

 「グランドツーリングカー」とは長距離を高速かつ快適に移動できるスポーティなクルマを指し、「レーシングカー」は競技車両、つまりサーキットマシンを意味します。

 「GT」と「R」が組み合わされることで、単なるスポーツカーではなく「ハイスペックロードカー」といった印象を強める点が「GTR」という名詞が持つ特徴といえるでしょう。

 それでは、「GTR」の名を持ったモデルを3台紹介します。

 1台目の「GTR」は、1985年にフルモデルチェンジした2代目RX-7ことFC3S型「アンフィニ(マツダ)サバンナRX-7 GT-R」です。

1985年に登場したFC3S型アンフィニ「RX7 GTR」

1985年に登場したFC3S型アンフィニ「RX7 GTR」

 RX-7は小型軽量でありながら高出力を発揮できるロータリーエンジンを搭載したファストバッククーペです。

 2代目RX-7では、初代に搭載された1.2リッターの12Aロータリーエンジンから、新開発の1.3リッターの13Bロータリーターボエンジンに換装され最高出力は185馬力まで強化。

 向上したパワーを受け止めるリアサスペンションは、セミトレーリングアーム式マルチリンクが採用された4輪独立懸架となりました。

 レブリミットの存在を忘れるほど滑らかなロータリーエンジン特有の回転フィールと、軽量なロータリーエンジンによる鋭いハンドリングが備わった2代目RX-7は、当時のハイスペックロードカーと呼ぶに相応しい性能と言えるでしょう。

 ただし「GT-R」は中間グレードの位置づけで、より軽量なアルミボンネットなどを装備した高性能グレードには「GT-X」の名前がつけられていました。

「GTR」は他にも!トヨタやいすゞのモデルも存在した?

 2台目は、ST162型「トヨタ セリカ 2000GT-R」です。

ST162型「トヨタ セリカ 2000GT-R」(写真はセリカ2000GT−FOUR)

ST162型「トヨタ セリカ 2000GT-R」(写真はセリカ2000GT−FOUR)

 スペシャルティクーペとして誕生したセリカは、1985年に登場した4代目ST160系からプラットフォームを「コロナ」「カリーナ」と共用し、セリカ初となるFFとなって生まれ変わりました。

 エンジンは1.6リッターから2リッターまでをラインナップし、排気量2リッターで最高出力136馬力(グロス出力160馬力)を発揮する「3S-GE」が搭載されたグレードに「2000GT-R」の名前が付けられています。

 発売翌年には、ターボチャージャーを追加して最高出力を185馬力にまで引き上げた「3S-GTE」エンジンと、フルタイム4WDシステムが搭載された「セリカGT-Four」を追加。

 世界ラリー選手権(WRC)参戦のためのホモロゲーションモデルとなる「セリカGT-Four」が誕生したのも、ベースとなるセリカ2000GT-Rの存在があってこそと言えるでしょう。

 後継として1989年に登場したST180系も、同じく2リッターエンジングレードに「GT-R」の名前がつけられ、エンジンは同じ「3S-GE」で最高出力は165PSにまで引き上げられています。

 最後の3台目は、PR91W型「いすゞ ベレットGTR」です。

1969年に登場したいすゞ「ベレットGTR」

1969年に登場したいすゞ「ベレットGTR」

 いすゞの2ドアクーペ「ベレット」の高性能モデルとして、1964年に追加された「ベレットGT」は、日本初となるディスクブレーキや4輪独立懸架サスペンションなどを搭載。そのレーシングモデルとなる「ベレットGTX」は高いコーナリング性能を発揮し、国内ツーリングカーレースを席巻していました。

 そして1969年には、さらなる高性能モデルとなる「ベレットGTR」が登場。「ベレットGTR」は、同社の「117クーペ」に搭載されていた1.6リッターG161W型DOHCエンジンを流用し、強化されたサスペンションやリミテッドスリップデフなどの搭載によってさらなる性能向上を果たしています。

 同じ年に登場したKPGC10型「日産 スカイライン2000GT-R」のスペックには及ばなかったものの、「ベレットGTR」のエンジンは120馬力の最高出力を発揮し最高速は190km/hに達するなど、当時としては十分に高い性能を発揮していました。

 高い性能や美しいスタイリングに加え、競技での活躍もあって「ベレットGT」および「ベレットGTR」は、今でも「ベレG」の呼び名で愛され続けている名車となっています。

※ ※ ※

 国内外問わず、「GTR」の名前や車種やグレードを特徴づけるための名詞としてよく使われています。

 そこに込める思いや、名前の用途はメーカーによってさまざまですが、「GTR」は高性能車だけが名乗れるネームバッジとなっているのは確かなようです。

ジャンルで探す