国産アドベンチャーツアラー決戦!スズキ「GSX-S1000GX」とカワサキ「ヴェルシス」 2台の個性の決定的な違いとは【ライバルをスペック比較】
日本でも大ブームとなっている「アドベンチャー・クロスオーバー(ADV)」。大型バイクの場合、ADVツアラーはオフロードの性能を切り捨てる代わりにスポーツ性能を追求する傾向にあります。今回はスズキ「GSX-S1000GX」とカワサキ「ヴェルシス」という国産大型ADVにはどんな個性の違いがあるのか、比較してみます。
スポーツツアラーというジャンルを飲み込んだADV
2013年以降に空前のブームとなり、現在では四輪のSUVのように一般化したアドベンチャー・クロスオーバー(ADV)というカテゴリー。
ADVはラリー車をルーツに持つため、オフローダーであることが本来のスタイルといえます。
大ブームのきっかけとなったBMWモトラッド「R1200GS」は実際にオフローダーでもあります。
ADVが持つオフロードを速く快適に走れるという性能は、舗装路ではより速く快適に走れるという性能になります。しかも車高がありサスペンションストロークも長いので快適です。
2013年は、かつてのバイクブーム世代が子育てなどを終えて再びバイクに乗り出す「リターンライダー」が増加していました。
歳を取れば身体が効かなくなるので快適性が重要になります。
ADVの快適性が注目された理由とリターンライダーのブームは無関係とはいえません。
その証拠にADVのブームはそれまであったひとつのカテゴリを吸収してしまいました。
それが「ツアラー」です。
スーパースポーツのようなフルカウル・前傾姿勢で大排気量エンジンを搭載、パニアケースを装備したかつてのツアラーは下火となり、代わりにADVのスタイルを取り入れて快適性を高めた「アドベンチャーツアラー」(ADVツアラー)が台頭してきたのです。
ADVツアラーは、オフロードの性能を切り捨てる代わりにスポーツ性能を追求する傾向にあります。
特に大型モデルほどその傾向は顕著に現れています。今回はそのうちの2台、スズキ「GSX-S1000GX」と、カワサキ「ヴェルシス1000」をスペックで比較してみましょう。
2024年1月にブランニューモデルとして登場したスズキS1000GXは、GSX-S1000シリーズのうちの一台となります。
ストリートファイターの「GSX-S1000」、スポーツツアラーの「GSX-S1000GT」に続く第3のADVツアラーがS1000GXとなります。
一方のヴェルシスは、横の展開はないADVツアラーです。しかし、ヘッドライトに見てとれるように「ニンジャ」シリーズの衣裳を取り入れているため、その兄弟モデルと考えられます。
S1000GXとヴェルシスのボディサイズを比較してみるとS1000GXのほうが全体的にコンパクトです。
ホイールベースも車重も値が小さいため、コーナリング性能が優れていると言えます。
ヴェルシスはその反対に直線が得意と言えます。高速道路を多用するようなツーリングでは、ヴェルシスのほうが疲れにくいかもしれません。
さらにヴェルシスは、シート高もS1000GXより低く設計されています。走りの面でも止まっている面でも安定志向だといえるでしょう。
SUZUKI GSX-S1000GX
車体サイズ:2150×925×1350mm
ホイールベース:1470mm
シート高:830mm
車両重量:232kg
KAWASAKI VERSYS 1000
車体サイズ:2270×950×1490〜1530mm
ホイールベース:1520mm
シート高:820mm
車両重量:257kg
パワーの違いが両車の性格を物語るが機能は爆盛り
コーナリング志向かストレート志向かは、エンジンの性能にも現れています。
ヴェルシスの120PSに対してS1000GXは150PSもあります。
しかもその発生回転数が、ヴェルシスよりも2000rpmも上です。
つまり、回してパワーを出すようなスーパースポーツに近い乗り方が合うということになります。
しかしトルクについては両車にそんなに差がありません。
そのことからも、ヴェルシスはゆったり安定して走らせるツアラーといえるでしょう。
SUZUKI GSX-S1000GX
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC4バルブ
排気量:998cc
最高出力:110kW(150PS)/11000rpm
最大トルク:105Nm(10.7kgm)/9250rpm
トランスミッション:6速MT
KAWASAKI VERSYS 1000
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC4バルブ
排気量:1043cc
最高出力:88kW(120PS)/9000rpm
最大トルク:102Nm(10.4kgm)/7500rpm
トランスミッション:6速MT
※ ※ ※
両車の価格差は5万円ほどなので、ないに等しいといえます。
ただ200万円というプライスは安くはありません。
その理由にあげられるのが、ツアラーとしての装備面です。
エンジンパワーモードのセレクトや上下クイックシフト(発進・停止以外にクラッチ操作が不要)、6軸センサーで演算する運転支援機能はもちろんのこと、電子制御サスペンションまで両者ともに搭載しています。
メーターはカラー液晶であることも共通項。スマートフォンコネクト機能も備わっています。
ツーリングを快適にする電子制御技術が、スーパースポーツのように惜しみなく注ぎ込まれていると考えて良いでしょう。
機能爆盛りでの200万円は安くはありませんが、暴利をむさぼるというわけでもなさそうです。
SUZUKI GSX-S1000GX
車両本体価格:199万1000円
KAWASAKI VERSYS 1000
車両本体価格:204万6000円
10/28 17:10
VAGUE