“アドベンチャー+スクーター”という新潮流! 手軽に“冒険”できる大人気の「ADVスクーター」3選

四輪のSUVのように、スポーツバイクの一種として定着したのがアドベンチャー・クロスオーバー(ADV)というカテゴリです。現在は大小さまざまな排気量のADVが登場していますが、最新のラインアップにはスクータータイプも出ています。どのようなモデルなのでしょうか。

大型の「X-ADV」が火をつけたADVスクーター

 ひとむかし前は、アドベンチャー・クロスオーバー(以下ADV)とカテゴライズされるモデルはマイナーな存在でした。

流行のアドベンチャー・クロスオーバー(ADV)だが、最近ではスクータータイプのADVも人気となっている

流行のアドベンチャー・クロスオーバー(ADV)だが、最近ではスクータータイプのADVも人気となっている

 どちらかといえば、フルカウルを持ったスーパースポーツやネイキッド(ストリートファイター)が“普通のバイク”と捉えられ、大小様々なネイキッド・スーパースポーツがラインアップされてきました。

 その流れは現在も続いていますが、その普通のバイクにADVが加わったとみて良いでしょう。

 2013年にフルモデルチェンジしたBMWの「R1200GS」から発生したADVの流行は一過性ではなく巨大市場として定着・定番化しました。

 現在も様々な新型ADVが登場しています。

 しかしADVにも新潮流が出始めています。それがスクータータイプのADVです。

 その先陣を切ったのは、2017年に登場したホンダ「X-ADV」です。

ホンダ「ADV160」

ホンダ「ADV160」

 745ccのエンジンにオートマチックトランスミッション(デュアルクラッチ式トランスミッション:DCT)をパワートレインとし、車高を上げてオフロードも問題なく走れる斬新な大型スクーターとして登場し、人気を獲得しています。

 それから2年後の2019年、X-ADVの弟分として登場したのが、149ccのエンジンを積んだ「ADV150」です。

 すぐに人気モデルとなり、2022年には新型エンジンを積んだ二代目「ADV160」にフルモデルチェンジされ、現在に至っています。

 ADV160は、エンジンが刷新されました。排気量を156ccに拡大した水冷単気筒SOHC4バルブとなり、最高出力12kW(16PS)/8500rpm・最大トルク15Nm(1.5kgm)/6500rpmのスペックとなっています。

 このエンジンはパワフルながら、44.1km/L(WMTCモード値)という低燃費性能も特徴です。アイドリングストップ機能もついており、長い信号待ちなどでの無駄な燃料消費を抑えることができます。

 外観はタフネス性を醸すデザインを引き続き採用しています。前130mm・後120mmのロングストロークサスペンションと、それに伴う最低地上高の高さも、ADVの雰囲気を高めています。ちなみにリヤサスペンションはリザーバータンク付きの高性能のもので、優れた減衰特性を発揮します。

 足回りはさらに、ブロックパターンのタイヤに加えて前後ディスクブレーキを採用していることも特徴です。見た目だけではなく、機能性も追求している点に、ホンダの本気度が伺えます。

 ちなみにボディサイズは全長1960×全幅760×全高1150mm、ホイールベースは1325mmでシート高は795mm、車両重量は134kgとなっています。

ADVがスクーターに新たな価値を付加

 スクーター(コミューター)はヨーロッパが本国と言えるでしょう。

 とくにイタリアはベスパをはじめとした専門ブランドがあるほど、スクーターが日常に浸透しています。

 そんなイタリアがADVスクーターの新潮流を気にしないわけがありません。

 反応したのは、同国ピアッジオグループ参加のスポーツバイクブランド、アプリリアでした。

 同ブランド初のADVスクーターとして「SR GT 200」を2022年に発表しました。

アプリリア「 SR GT200」

アプリリア「 SR GT200」

 エンジンは174ccの水冷単気筒SOHC4バルブとなっており、最高出力13kW(17.7PS)/8500rpm・最大トルク16.6Nm(1.7kgm)/7000rpmの性能を持っています。

 スポーツバイク同等のニカシルコーティングを施したアルミ製シリンダーを用いるといった作り込んだエンジンで、西濃曲線に合わせて通常よりも大型の自動遠心クラッチを装備したトランスミッション(CVT)を用いています。

 ADVでありながらアプリリアらしいスポーツ性能を追求しているといえます。

 ロングストロークの前後サスペンションや大型のフロントスクリーンを備えたことでADVらしさを強調しています。

 しかしボディデザインは、最上級の「RSV4」にも通ずる意匠を採用することでスポーツ製も強調しています。

 ピアッジオグループには、ベスパやモト・グッツィといったブランドもあります。

 とくにベスパはスクーター専門ブランドですが、ADVスクーターをあえてアプリリアブランドから登場させたということは、ADVを新たなスポーツスクーターと捉えているからではないでしょうか。

 ちなみにSR GT 200のボディは、全長1920×全幅765×全高1295mmで、ホイールベース1350mm、シート高は799mmで、車両重量は148kgとなっています。

 ADVスクーターには日本メーカーの追従もみられます。

 ヤマハは2022年、新型スクーター「X-FORCE」を発売しました。

ヤマハ「X-FORCE」

ヤマハ「X-FORCE」

 最高出力11kW(15PS)/8000rpm・最大トルク14Nm(1.4kgm)/6500rpmを発生する155ccの水冷単気筒SOHC4バルブエンジンを搭載しています。

 可変バルブ機構を搭載し、伸びやかな加速と優れた燃費性能を両立しているのもこのエンジンの特徴です。

 ADVスクーターとは謳っていないものの、投影面積の大きいフロントフェイスや太いフレームを連想できるサイドカバーといった装備は、ADVを意識したデザインに思えます。

 車名にある「X」は、クロスオーバーを意味する文字ではないでしょうか。

 リアサスペンションは、硬さを4段階に調整できる左右独立型を採用し、前後ディスクブレーキはそれぞれに独立したABS機構を備えています。

 ちなみにボディサイズは、全長1920×全幅760×全高1120mmでホイールベースは1340mm、シート高は815mmで、車両重量は130kgとなっています。

※ ※ ※

 スクーターは“アシバイク”という認識が持たれていますが、ADVとすることで違った魅力が与えられたことは事実です。

 ADVということで旅に出たくさえなりませんか。排気量は150ccクラスと大きくはありません。だからこそ、大きなバイクで通り慣れたツーリングルートも“大冒険”できそうです。

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