「えっ、高速料金も割引されるの!?」メリットあるのに なぜなかなか普及しない!? 「ETC2.0」って普通のETCとはどう違う?

利用率は95.0%(2024年6月)と、高速道路を走るほとんどのクルマがETCを利用しているのに対し、そのうち「ETC2.0」の利用率は34.4%と半数にも満たないのが現状です。ETC2.0は、ふつうのETCとはどう違うのでしょうか。なぜなかなか普及率が上がらないのでしょうか。

道路とクルマが双方向通信する「ETC2.0」

 NEXCO各社の料金検索サイトにアクセスし、流入するICおよび流出するICを指定すると、その間の経路や想定所要時間、通行料金を案内してくれます。

 さらに料金については、現金での通行料金に加え、ETCでの通行料金、さらに利用する曜日や時間帯をもとにした「休日割引」「深夜割引」など、ETC割引が適用される場合の料金も表示されます。

 ただこのとき、ETC料金に並び「ETC2.0料金」の表示があるのを目にして、「ETC2.0って何だろう?」と思った人もいるのではないでしょうか。

いまや利用率が95%となったETC。高速道路を走行するクルマのほとんどがETCを使っているが、「ETC2.0」とはどんなものなのだろうか

いまや利用率が95%となったETC。高速道路を走行するクルマのほとんどがETCを使っているが、「ETC2.0」とはどんなものなのだろうか

 ETCは、その略称のもとなった英語での名称「Electric Toll Collection System」が示すとおり、有料道路の料金収受システムとして開発されました。

 一方、ETC2.0は、その料金収受システムの機能を引き継ぎつつ、路上に設置された通信アンテナ「ETC2.0路側機」が、ETC2.0に対応する車載器と高速大容量の「DSRC通信方式」によって双方向通信し、ETCにはなかった新たなサービスを提供するものです。

 たとえば道路交通情報については、ETCがFM多重放送による「VICS WIDE」で都道府県単位の道路情報を、光ビーコンで前方30km、後方の主に一般道の情報を提供していましたが、ETC2.0では電波ビーコンにより前方1000kmの主に高速道路の情報が提供され、広域の迂回も可能となっています。

 また見通しの悪いカーブの先での渋滞、高速道路上の落下物なども、ドライバーにリアルタイムで伝えることで、安全運転をサポートします。

 さらにETC2.0のメリットは、ドライバー向けのサービスだけではありません。双方向通信を生かし、クルマの走行経路などを収集して蓄積することが可能で、それらのデータの分析により危険箇所での交通安全対策や、災害時の通行可否情報などに役立てるなど、交通政策の高度化にも大きく貢献することになるのです。

 このようにETCから大きく進化したETC2.0は、利用者にとって、金銭的なメリットもあります。まずは、冒頭でご案内した高速道路の通行料金の割引です。

 渋滞に悩む都市圏の高速道路では、対策として「通過交通の抑制」が急務になっています。その具体的な方策として効果があるのが、「通過交通の環状道路への誘導」です。

 ただ多くのドライバーは「より距離の短いルート」を好むため、環状道路に誘導するには、なんらかのインセンティブが求められます。

 そこで導入されているのが、ETC2.0のみを対象とした割引です。

ETC車載器の“価格差”が大きなネック

 首都圏で適用される「圏央道割引」は、圏央道および新湘南バイパスについて、ETC2.0での通行は大都市近郊区間の料金水準である29.52円/kmではなく、地方区間の24.6円/kmとし、通行料金を割り引きます。

ETC2.0車載器を搭載していれば、指定の道の駅を利用する場合、再び高速道路に戻ってもターミナルチャージが徴収されない

ETC2.0車載器を搭載していれば、指定の道の駅を利用する場合、再び高速道路に戻ってもターミナルチャージが徴収されない

 中京圏の「東海環状自動車道割引」も同様に、東海環状道の「豊田東JCT‐山県IC」「大野神戸IC‐養老IC」「大安IC‐新四日市JCT」で、同様に地方区間の料金水準とし、通行料金を割り引きます。

 また日本の高速道路の通行料金は「固定料金+距離あたり単価」「遠距離逓減制」により算出される仕組みとなっています。そのためSAやPAが遠く、適切なタイミングでの休憩には高速道路から流出し外部の施設を利用しなければならない状況では、料金が割高になってしまうというデメリットがありました。

 こうしたデメリットを解消するために実施されているのが、ETC2.0を対象とした社会実験「賢い料金 一時退出・再進入」です。

 この社会実験では、「SA/PAの間隔がおおむね25km以上離れている」という“空白区間”において、ICから2km以内にある全国26カ所の「道の駅」を対象に「流出から2時間以内に同一のIC/スマートICで流入し、流入後は流出前と同じ方向に利用すること」「対象の道の駅に立ち寄ること」を条件に、目的地まで“通し”で高速道路を利用する場合と同じ料金が適用されます。

 そのためETC2.0の利用者は、通行料金増を気にすることなく高速道路を出て、地域色あふれる道の駅に立ち寄り、買物やグルメを楽しめるのです。

ETC2.0車載器。カード挿入口に「●●●」という3つの印がある

ETC2.0車載器。カード挿入口に「●●●」という3つの印がある

 このようにETC2.0は、きめ細やかな情報入手による運転支援、加えて金銭面でのメリットが特徴です。ただ現状ではそのアドバンテージが十分受け入れられているとは言い難い状況です。

 実際に普及率を見ても、ETCのセットアップ累積台数が1億2395万9820台(2024年7月)なのに対し、1553万9764台(同)にとどまっています。

 直近1年間の増加でも、ETCは646万7627台ですが、ETC2.0は280万2895台と、大きく水をあけられている状況です。

 その理由には、やはり車載器の価格差があると言わざるを得ません。

 ETC車載器は、シンプルなものであれば5000円程度から入手できます。

 しかしETC2.0車載器は安いものでも1万3000円程度で、さらにETC2.0のサービスを十分に味わうには、対応するカーナビなどの導入も不可欠です(価格はいずれもセットアップ料金のぞく)。

 現在、カーナビがスマートフォンのナビアプリにその座を譲っている状況を鑑みても、ETC2.0割引をひんぱんに使う可能性があるといった事情がなければ、ETC2.0は選びにくい状況なのです。

 国土交通省がETC2.0のさらなる普及を目指すのであれば、新たな割引策の導入など、大胆は施策が求められます。

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