高速料金が“30%オフ”のETC「深夜割引」が見直される!? 2025年3月末に導入予定の“新ルール”の内容とは

オトクに高速道路を通行できるETC深夜割引。現行ルールでは午前0時から午前4時までの「割引適用時間帯」に高速道路を走行するETC車について、通行料金の「3割引」が適用されるのですが、2025年3月末をめどにその内容が変更される予定です。どのように変わるのでしょうか。

現行ルールでは「深夜割引適用待ち」の車両の滞留が問題?

 高速道路の料金所をノンストップで通行できる「ETC」は、その利便性に加え、「料金の割引」という実利もあります。

 その料金の割引のなかで、とくに有用なのが「深夜割引」です。

現在は、午前0時から午前4時までに高速道路を走行するETC車について、通行料金の3割引が適用される「ETC深夜割引」だが、2025年3月末に見直しされる予定だ

現在は、午前0時から午前4時までに高速道路を走行するETC車について、通行料金の3割引が適用される「ETC深夜割引」だが、2025年3月末に見直しされる予定だ

 深夜割引では、午前0時から午前4時までの「割引適用時間帯」に高速道路を走行するETC車について、通行料金の「3割引」が適用されます。

 通行時間の判定は一部をのぞき「入口料金所」「出口料金所」で行われ、走行時間の一部でもこの時間帯にかかっていれば、全区間の料金が割引となります。

 そのため「入口料金所を午前4時直前に通過する」「出口料金所を午前0時直後に通過する」といった利用形態でも大幅な割引が受けられるという、使いやすさがありました。

 ところがこうした“ゆるい判定基準”により、あからさまな割引狙いの走行が常態化し、さまざまな課題が顕在化することになります。

 とくに問題となったのが「出口料金所での0時過ぎ通過での走行全区間の割引」を狙うクルマ、とくに営業用トラックの滞留です。

 午前0時前にはそうした“割引狙い”のクルマがまずは料金所手前の路肩に停車します。そして午前0時が近づくにつれ二重、三重の停車となり、最後には本線までクルマで埋め尽くされます。そしてこれらのクルマが0時とともに動き出すという異常な光景が、毎晩繰り返されていたのです。

 もちろん、非常時以外の高速道路での路肩駐車は違法ですし、本線上での時間待ちは論外です。そこで高速道路各社は、深夜割引の見直しに踏み切ることとなりました。

 まず2023年1月には「割引適用時間帯の走行分のみ3割引」「割引対象時間帯を22時から翌5時に拡大」という見直し内容の方向性が発表されました。その後、同年11月にはインターネットにて「深夜割引の見直しにおける無謀な運転の抑止策(案)」を公開し、意見募集が行われました。

 そして2024年7月には、この意見募集も受けての詳細な内容、そして今年度末に実施するというスケジュールも打ち出されました。

 では深夜割引は、見直しによりどう変わるのでしょうか。

 まずは割引の計算方式についてです。以前は前述のように、対象となる走行であれば、全区間の料金が「3割引」となっていました。これが「22時〜翌5時の割引適用時間帯の走行距離」をベースとしたものに変更されます。計算式は以下です。

●割引後料金=通常料金×{100%ー(割引適用時間帯の走行距離÷全走行距離×30%)}

 走行のすべてが割引適用時間帯で完結する場合は「割引適用時間帯の走行距離=全走行距離」となるため、「割引適用時間帯の走行距離÷全走行距離×30%」はそのまま「30%」となり、通常料金の70%が割引適用後の料金となります。

長距離トラックにも“働き方改革”!?

 一方、割引適用時間帯をまたいだ走行では、全走行距離のうち、割引適用時間帯の走行距離を算出し、割引適用後の料金が決まります。

深夜割引見直しのポイントの一例。割引時間帯を22時から5時に拡大するが、この時間帯の走行分のみ割引適用となる

深夜割引見直しのポイントの一例。割引時間帯を22時から5時に拡大するが、この時間帯の走行分のみ割引適用となる

 この走行距離の算出には、高速道路内に新たに設置される「ETC無線通信専用アンテナ」が記録した個々のクルマの通過時間を利用することとなります。

 料金計算にこうした複雑な仕組みをとることから、出口料金所ではいったん通常料金(休日割引が適用される場合は適用後の料金)を表示し、割引は後日「ETCマイレージサービス」への還元額(もしくは「ETCコーポレートカード」の引き落とし額)に反映されることとなります。

 さて、ここで新たな問題として浮かび上がってくるのが、「割引適用時間帯にできるだけ長い距離を走り、より多くの割引を受けよう」というドライバーの存在です。こうした運転による割引適用を認めると、速度超過など無謀運転の増加につながりかねません。

 そこで深夜割引の見直しにあたっては、速度計の誤差を加味した上で「軽自動車・普通車・中型車・乗合型自動車」については「利用時間1時間あたり105kmを上限距離とし、かつ利用時間が4時間を超える場合は利用時間30分に相当する上限距離を減ずる」とし、「大型車・特大車(乗合型自動車以外)」についても速度を90km/hとした同様の制限が行われることになりました。

 このルールにより「割引を受けるために猛スピードで飛ばす」という行為は意味がなくなり、交通の安全確保に寄与すると期待されます。

 一方、見直しの導入にあたっては、「長距離利用での通行料金負担増」「新たな交通集中の抑制」を目的に、激変緩和措置も行われます。

 その内容は「深夜割引適用車両のうち1000km以上走行した場合、1000kmを超える部分を割引対象走行分に追加」「22時台に高速道路を流出した車両については、22時台に走行した分の還元率を最大20%」というものです。

 これらの激変緩和措置の軌間については、見直し導入後、5年程度とされています。

 また同じく「長距離利用での通行料金負担増」の軽減を目的に、400km超の走行を対象に料金を割り引く「長距離逓減制」が、現状よりも拡充されます。

 なお深夜割引の対象路線は現状からの変更はありませんが、均一料金制区間など、1回の通行に対して料金を設定してる道路や区間では、料金所の通過時間が22時から翌5時の間であれば、全走行分に30%の割引が適用されることになります。

※ ※ ※

 今回の見直しは「走行の状況に応じ割引額が変わる」という、これまでにない仕組みを採り入れたことで、かなりわかりづらい内容になっています。

 そのため「どういう時間帯や経路で走ると、どのくらいの割引になるのか」という具体例は、NEXCO各社が本年秋以降に予定している「深夜割引の見直し後の通行料金の概算額がシミューレーションできるサイト」の開設を待つしかなさそうです。
 

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