BMWの“小さな高級車”まもなく上陸! 4代目へ進化した新型「1シリーズ」は“先代の不満”を見事に払拭!! 気になる走りの実力は?

初代モデルの誕生から早20年。BMW「1シリーズ」が新型へと進化しました。ドイツ・ミュンヘンで開催された国際試乗会でひと足先に「1シリーズ」を試したモータージャーナリストの島下泰久さんは、果たしてどんな評価を下すのでしょうか?

マイチェンの域を超える格段の進化を遂げた新「1シリーズ」

 初代モデルの登場から20周年という節目の年を迎えて、BMW「1シリーズ」が新型へと生まれ変わりました。

大幅な進化を遂げたBMW新型「1シリーズ」

大幅な進化を遂げたBMW新型「1シリーズ」

 実は私(島下泰久)、新型は初のエンジン横置きアーキテクチャーに転換した3代目モデルのマイナーチェンジ版だとばかり思っていたのですが、BMWはこれを4世代目だと称しています。さて、その意味するところは?

 BMWのお膝元であるドイツ・ミュンヘンで開催された国際試乗会で試したこの新しい「1シリーズ」は、基本骨格こそ先代から引き継ぎつつも、実際には内外装にパワートレイン、シャシーから電装系に至るまで徹底的に手が入れられていました。確かにマイナーチェンジという域を超える、格段の進化を遂げていたのです。

 ラインナップされるのは、ガソリン車4種、ディーゼル車2種の計6モデル。そのうち今回は「120」、そして「M135 xDrive」の2台を試すことができました……と、すでにこの時点で変化に気づかれた方もいるかもしれません。実はこの新型「1シリーズ」からBMWは車名ルールを変更。ガソリンエンジン車の末尾につく「i」が廃されたのです。

 従来の「i」が意味していたのはインジェクション。つまり燃料噴射装置のことでした。ご存知のとおり、BMWはすでに電気自動車にこの「i」の文字を使用しているので、紛らわしくならないために変更されたのでしょう。なお、ディーゼルの「d」はそのまま変わりはありません。

「120」と「M135 xDrive」の2モデルに共通する、一番目を惹く変更点がフロントマスクです。全長が42mm伸ばされ、キドニーグリルは天地に薄い形状とされ、位置もより低めに。ヘッドライトは「X1」、「X2」などにも用いられている縦バー形状のライトで“フォーアイズ”を表現しています。仕上がりは従来に比べて、より低く、スッキリとした印象です。

 ボディサイドに回ると、ウインドウフレームがハイグロスブラック化され、さらにその後端の“ホフマイスターキンク”の部分には「1」の文字が刻まれています。テールランプ、リアバンパーの形状も変更されています。

 細かいところですが、タイヤの外径も拡大されました。全高の数値が大きくなっているのは、実はこのため。すべて新たに開発されたタイヤで、走りだけではなく静粛性にも力を入れたということでした。

 上級モデルにはお馴染みの“BMWカーブドディスプレイ”がついに採用されるなど、インテリアは完全に刷新されています。

 レザーに似た風合いのPETリサイクル素材張りとされたダッシュボードは、ひとつひとつミシン縫いしているというステッチ入り。両サイドに入れられたアルミ製のインサートには照明が仕込まれていて、イルミネーションとしてだけでなく、車内温度の上げ下げの際には赤もしくは青に光り、後方から車両や自転車が接近してきた際には点滅するといった具合に、機能も併せ持ったデザインとされているのが特徴といえます。

 シートも刷新されて新形状に。パワーシートにはポジションメモリーも備わります。降車時にはシートが後方に下がり、乗り込むと元の位置に戻る機能ですが、これだけでクラスがひとつ上がったようにすら思えます。

●格段にダイレクト感が増したステアリングフィール

 新しい「1シリーズ」は、走りに関する部分も細部までしっかり手が入れられました。

大幅な進化を遂げたBMW新型「1シリーズ」

大幅な進化を遂げたBMW新型「1シリーズ」

 それを確かめるべく、まずステアリングを握ったのは「120」。エンジンは最高出力170ps、最大トルク280Nmを発生する1.5リッターの直列3気筒ターボで、組み合わされる7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)に20ps、55Nmの小型モーターを内蔵するマイルドハイブリッドとされています。

 このエンジン、アクセルを踏み込んでいったときの反応が活発で、吹け上がりもビート感が効いています。加速自体は「120」という車名に対して若干物足りないように思いましたが、こちらは主に新しくなったエンジンマウントの効果か、雑味が減った、より質の高い回転フィーリングを実現しているのです。

 そしてシャシー。「120」と「M135 xDrive」に共通する改良点は、フロントキャスター角の20%増大、前後アンチロールバーのプリロードをかけた締めつけ、入力分離型のアッパーマウント採用など多岐に渡ります。その効果は、想像以上といえます。

 すぐに分かるのは、ステアリングフィールが格段にリニアリティ、あるいはダイレクト感を増したこと。切り込んでいくときの反力感、戻す際のセルフアライニングトルクなど、今まで若干薄めだったフィードバックが豊かになって、クルマとの一体感を高めています。やはりBMWには、前輪駆動プラットフォームであってもこういう味、必要ですよね。

先代に不満を抱いていた人も新型には納得できるはず

 そうなると、「M135 xDrive」のスポーツ性への期待がさらに高まります。

大幅な進化を遂げたBMW新型「1シリーズ」

大幅な進化を遂げたBMW新型「1シリーズ」

 こちらの2リッター直列4気筒ターボエンジンは、最高出力300ps、最大トルク400Nmというスペック。従来モデルより若干下がっているのは、今後控える環境規制強化への対応だそうです。

 ほかにも、従来の8速ATは7速DCTに変更され、トルセンLSDもメカニカルロッキングシステムに。これにxDrive=4WDが組み合わされます。

 それに合わせてシャシーも、剛性アップのためのブレース類の追加、周波数感応型ダンパーを使ったアダプティブMサスペンションの採用、リアアクスルマウントのブッシュ硬度50%アップ、8mmの車高ダウンなどを実施。

 しかも試乗車は、ロッド径を拡大した強化サスペンション、リアフロア下の追加ブレース、大径ブレーキ、19インチタイヤなどをセットしたオプションの「Mテクノロジーパッケージ」を装着していました。ただしこちらは、日本仕様で選択できるかどうか、まだ未定とのことです。

 正直、従来の「M135i xDrive」には、速いしよく曲がるけれど、BMWに求める走りの一体感が物足りないと感じていたので、少々不安を抱きながら乗り込んだのですが、その走りは見事に進化していて、楽しくドライブできました。

 エンジンはアクセルペダルを踏み込むと即座に応える瞬発力、そしてその後の爽快な吹け上がりが魅力。しかも、xDriveのおかげで発進時に前輪が空転してしまうようなこともなく、ためらわず右足に力を入れていけます。数馬力の差を体感することなど不可能です。

 フットワークは想像どおり「120」よりもさらにカチッとした印象。元々、前輪駆動車としてはよく曲がる「1シリーズ」でしたが、クルマとの対話が深く濃くなったおかげで、自由自在に操れる感覚も増しているように感じられました。

 私と同じように、先代に対してモヤモヤとした思いを抱いていた人も、これならおそらく納得ではないでしょうか? きっと開発陣自身も、いろいろな思いがあったんでしょうね!

* * *

 マイナーチェンジ版かと思っていたなんて、本当にゴメンナサイといわなければならない大幅な進化を遂げていたBMWの新型「1シリーズ」。なかなか魅力的なプレミアムコンパクトカーになったな、というのが偽らざる実感です。

 ただし、これだけのアップグレードを遂げたとなると、それなりに価格も上がるだろうな、ということが、ちょっと心配ではありますが……。

 なお日本上陸は、もう間もなくとのこと。その辺りも含めて期待して待ちたいところです。

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