「えっ、ホントに!?」ドアも屋根もフロントガラスもない? 20年前に登場した“前衛的マイクロカー”ってどんなクルマだった?
1998年に登場し、世界中に大きなインパクトを与えたマイクロシティコミューターが「スマート」です。そんな個性的なスマートの限定モデルが、オンラインカーオークション大手の「Cars&Bids」に出品されて注目を集めています。
風を全身で感じながら走行できる世界最小マイクロシティコミューター
1998年に誕生した「スマート」は、世界最小クラスのクルマとして当時は世界中に衝撃を与えました。
スマートは、メルセデス・ベンツ(当時はダイムラー・ベンツ)とスイスの大手時計メーカーの「スウォッチ」の合弁企業「MMC」のブランドで、マイクロコンパクトカー「フォーツー」などを展開しました。
名前の由来はスウォッチ(Swatch)の「S」とメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)の「M」に「ART」(芸術)を組み合わせて「smart」という名称になりました。これは後にダイムラー・クライスラー(当時)の100%子会社「smart」社という社名にも用いられています。
普通のクルマは最初におおまかなボディサイズを決定してからパッケージングを行っていきますが、スマートは大人2名乗車というコンセプトを先に決定してから最小のパッケージングを模索していきました。
そのため全長は約2.5mと当時のメルセデス・ベンツ「Sクラス」と比較しても半分ほどですが、室内空間は広く、大人2名が乗車しても快適なドライブが可能でした。
ボディは超コンパクトながらも製造はメルセデス・ベンツが担当したこともあって耐衝撃性能は高く、フレームは高強度スチールの「トリディオンセーフティセル」を採用することで安全性を確保しています。
またコンパクトカーはボディサイズの制約が多いことからデザインの自由度が低いことが一般的ですが、スマートは曲面を巧みに多用した内外装が特徴で、そのデザインの美しさはニューヨーク近代美術館「MoMA」に永久展示されるほどです。
パワートレインは599㏄直列3気筒ターボを後軸より後ろに搭載し、トランスミッションは「6速ソフタッチ」(クラッチレス2ペダルミッション)を介して走行します。
バリエーションは、クローズドタイプの「クーペ」とオープンモデルの「カブリオレ」のラインナップでした。
このように、いま見ても個性あふれるスマートですが、オークション大手の「Cars&Bids」に超尖った限定モデルが出品され注目を集めています。
70馬力エンジン搭載の「スマート クロスブレード」
今回出品された個体は「スマート クロスブレード」で、年式は2002年、走行距離は約8800km(約5500マイル) を示しています。
このクロスブレードの特徴はコンセプトカーのようなデザインで、屋根がないだけでなく、フロントウインドウやドアすらないモデルということです。
フロントウインドウの代わりに気休め程度のウインドディフレクターが装備され、オートバイに近いような開放感といえるでしょう。
また、サイドはドアに代わって跳ね上げ式のサイドセーフティーバーが装備され、サイドミラーもここに取り付けられています。
樹脂製のフロントバンパーも最小限の形状で、隙間からはフロントタイヤが拝めるほどです。
組み合わされるアルミホイールはクーペよりも大きく、フロント195/40R16、リア215/35R16の超扁平タイヤを装着しています。
また、パワートレインこそスタンダードモデルと共通ですが、パワーアップが図られ最高出力は70馬力にまで高められました。
インテリアもスタンダードモデルと共通ですが、少量の降雨にも耐えられるようにシートやダッシュボードには防水処理が施されており、シートとフロアには配水プラグが備えられています。
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今回のオークションはすでに終了しており、23件の入札で最終的には2万8750ドル(日本円で約417万円)の金額で落札されました。
じつは当時、ダイムラークライスラー日本によりこのスマート・クロスブレードが正規販売されていました。2002年5月に25台、2003年に34台という限定モデルで、265万円でした。
インパクトの高いスマートのさらに上をいくスマート クロスブレードでは、悪天候のドライブでものともしない忍耐力よりも周りからの視線に耐えるだけのメンタルが必要かもしれません。
09/06 07:30
VAGUE