ゆっくり流すのがおしゃれ「優雅な高級オープンカー」公道での印象は? メルセデス・ベンツ「CLEカブリオレ」は美しいデザインも見どころです

メルセデス・ベンツの最新4シーターオープン「CLE200カブリオレ」を公道で試乗しました。昨今、オープンカーはラインナップが減少傾向にありますが、メルセデス・ベンツはしっかりとニューモデルを用意。果たしてどのような魅力を備えたモデルなのでしょうか?

スタイリング重視であえてソフトトップをチョイス

 昨今のクーペ人気低迷を受けて、残念ながらメルセデス・ベンツでも2ドアクーペのラインナップは縮小傾向にあります。

メルセデス・ベンツ「CLE200カブリオレ」

メルセデス・ベンツ「CLE200カブリオレ」

 同ブランドのラインナップを見ると「クーペ」と冠するモデルはそれなりにありますが、実は2ドアではなく4枚のドアを持つ“クーペタイプのセダン”がほとんどで、純粋なクーペといえるのは頂点に立つメルセデスAMG「GTクーペ」と、「Eクラス」のクーペ版である「Eクラスクーペ」、そして「CLE」の3モデルのみ。

 ただし、「CLE」は「Eクラスクーペ」の実質的な後継モデルと目されているので、「Eクラスクーペ」は将来的にはフェードアウトすることになるでしょう。

 今回フォーカスする「CLE200カブリオレ」は、そんな「CLEクーペ」から派生したオープンカーです。昨今はオープンモデルもどんどんラインナップが減る傾向にありますが、メルセデス・ベンツはクーペにしっかりとオープンモデルを用意するのが粋ですね。

「CLE」は、セダンでいうと「Eクラス」と同じセグメントのモデルだけあって、全長4850mmと長めです。全幅も1860mmあるので車体が大きいことは否めませんが、おかげで伸びやかなプロポーションを得ているのですから、このボディサイズ設定はネガティブなことばかりではありません。こういったクーペは、いかに優雅に乗りこなすかが肝心であり、エレガントな雰囲気は重要ですからね。

 電動開閉式ルーフは昔ながらの幌(ソフトトップ)。一時期、大流行した“電動開閉式ハードトップ”ではなくソフトトップを選んでいることには、実は大きな理由があります。それはスタイリング。

 電動開閉式ハードトップは、閉じると遮音性が高くて快適性は良好で、また、ソフトトップと違って切り裂かれる心配がないなど防犯性も高いなどメリットが多いのは確かです。しかし、ルーフ部分をコンパクトに畳めないことからデザイン面での制約が多く、展開した状態のルーフを美しく見せるのが難しいのもまた事実。

 一方のソフトトップは、閉じた際の斜め後方から姿が丸みを帯びておりエレガント。このフォルムを求めて、昨今は電動開閉式ハードトップを選択しないラグジュアリーなオープンカーが増えているのです。

 メルセデス・ベンツでいえば、かつて電動格納式ハードトップを採用していたもののソフトトップへと回帰したメルセデスAMG「SL」がそれですし、レクサスでいえば、「LCコンバーチブル」もソフトトップを選択しています。

 もちろん、ソフトトップは軽量化にも有利ですが、採用の最も大きな理由は「スタイリングのため」というのが昨今の流れなのです。

「CLE200カブリオレ」のソフトトップは電動開閉式で、開閉に要する時間は20秒ほど。走行中でも60km/h以下であれば開閉操作をおこなえるのが便利で、気軽にオープンエアドライブを楽しめます。

 その上で、快適性もしっかりとフォロー。まず、スイッチ操作で立ち上がるフロントウインドウ上部のディフレクターと、キャビン後方のドラフトストップ(整流板)で空気の流れを整え、オープン時における室内への風の巻き込みを抑えています。

 加えて、オープンカーをドライブする上で最も適した季節とされている外気温が低いときには、温風を吹き出すことで首元を暖めるエアスカーフという機構をフロントシートに内蔵するなど、独自のアイデアでオープンエアドライブを気軽なものにしてくれるのです。

 しかも、「キャビンの温度が12度以下になったらシートヒーターをオン」といったぐらいに、快適装備をあらかじめ設定しておけるのも新しいですね。

優雅に走らせるのが似合うおだやかな乗り味

 今回、「CLE200カブリオレ」の実車に触れてみて意外だったのは、実用性が思いのほか高かったことです。

メルセデス・ベンツ「CLE200カブリオレ」

メルセデス・ベンツ「CLE200カブリオレ」

 例えばリアシートは、飾りとか荷物置き場といったレベルではなく、クーペをベースにしたオープンカーでは珍しく、短時間であれば大人も座れる実用的なもの。

 またラゲッジスペースも、ルーフを閉じた状態であれば十分な奥行きがあり、385リットルという荷室容量からは信じられないほど良好な使い勝手を提供してくれます。

 さらにラゲッジスペースは、左右分割式となるリアシートの背もたれを倒すことで、容量を拡大することが可能。この手のクルマとしては申し分のない機能性を備えています。

 そんな「CLE200カブリオレ」に関して、声を大にしてお伝えしたいのが、心がおだやかになる乗り味です。

 搭載されるエンジンは、2リッターの4気筒ターボで、最高出力204ps、最大トルク320Nmを発生します。マイルドハイブリッド仕様ゆえ、そこに23ps/205Nmのモーターアシストも加わりますが、正直、イマドキのクルマとしてはパワフルというほどではなく、エモーショナルな感覚も希薄です。また、昨今のクルマとしてはボディの剛性感も低めで、言葉を選ばずにいえば「少しユルい感じ」がします。

 もしも「CLE200カブリオレ」がバリバリのスポーツカーだったら、それらはネガティブな要素となるでしょう。でも、優雅さを求めるキャラクターを持つこのモデルは、ドライブしてみると全くネガではなく、むしろ心地よささえ感じられるのです。

 それはなぜか? ゆっくりと優雅に走らせるのが似合うクルマ、だからでしょう。

 ルーフを開けて、おだやかな気持ちでゆっくりとドライブし、風の流れを楽しむ……。そんなシーンでは、すこしユルめのボディと、決して力不足ではないけど刺激は控えめのパワートレインが相性抜群です。ちなみに、パワートレインはとてもなめらかで、そんな特性も優雅なドライブとのマッチングを高めてくれているようです。

 このように、「CLE200カブリオレ」はこれまで速いスポーツカーなども含めて、いろいろなクルマを経験してきた大人の方におすすめです。本物を見抜く目を持つ大人なら、きっと「CLE200カブリオレ」の本質と魅力を理解できることでしょう。

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