世界にたった5台しか存在しない“幻”のポルシェ「959」プロトタイプがオークションに登場 気になる落札価格とは

ポルシェの数あるモデルのなかでも、性能を徹底的に追求したモデル「959」のプロトタイプがRMサザビーズオークションに出品されて話題になっています。いったいどのような個体なのでしょうか。

ポルシェがかつて“本気”で作ったスーパーカーがサザビーズに登場

 世界に誇るスーパースポーツカーメーカーであるポルシェですが、1980年代に当時のエンジニアの技術の集大成ともいえるモデルにポルシェ「959」があります。

オークションに登場した1985年式ポルシェ「959 'Vorserie'」Remi Dargegen ©2024 Courtesy of RM Sotheby's

オークションに登場した1985年式ポルシェ「959 'Vorserie'」Remi Dargegen ©2024 Courtesy of RM Sotheby's

 959は1983年にフランクフルト国際モーターショーで発表され、「911」をベースに2.85リッター水平対向6気筒シーケンシャルツインターボを搭載します。

 この959のパワーユニットはこれまで911に搭載されていた空冷エンジンとは異なり、シリンダーヘッドのみを水冷で行う「半空冷式」を導入する珍しいシステムでした。

 その他にもポリッシュ加工されたチタン製コンロッドやレーシングカーに多く採用されているドライサンプ方式など、数多くの最新技術が導入されました。

 さらにシーケンシャル制御のツインターボを採用することで、市販モデルでも450㎰を発生するほどの出力を誇ります。

 そのような最強レベルのパワーユニットを搭載することで最高速は317km/hにも達し、世界でもトップレベルのパフォーマンスのクルマといえるでしょう。

 そして959の要となるのが、路面状況や走行状況に応じてトルク配分をコントロールできる4WDシステムになります。

 この最新4WDシステムは速度が一定の場合は40%、フル加速時は20%、そしてタイヤのグリップを失いはじめると 50%の駆動力を前輪に伝達する仕組みが採用されました。

 さらにボディパネルはケブラー製で、ホイールもセントラルロッキング式のマグネシウム合金が採用されるなど軽量化も徹底的に行われました。

 このようにスーパーカー最高級の性能を目指した959はわずか292台しか生産されず、さらに価格は当時のレートで約3600万円ほどでしたが、納車されるまでに2年近くほどかかることあるほどの人気ぶりでした。

 そんなポルシェが造ったスーパースポーツの959がオークション大手のRMサザビーズに出品されて話題になっています。

過去の所有者にはあのフェルディナント・ピエヒ氏の名も

 ボディカラーはホワイト、年式は1985年、走行距離は7万9109kmという個体で、話題になっているポイントは959のなかでも希少なプロトタイプということにあります。

オークションに登場した1985年式ポルシェ「959 'Vorserie'」Remi Dargegen ©2024 Courtesy of RM Sotheby's

オークションに登場した1985年式ポルシェ「959 'Vorserie'」Remi Dargegen ©2024 Courtesy of RM Sotheby's

 このプロトタイプは959の市販化に向けてポルシェ「930ターボ」のシャシ29台を厳選し、それぞれ独自の仕様を誇る F、N、V シリーズに分類しました。

 今回の出品車両はそのなかでもVシリーズにあたり、現存数はわずか5台しかないという超希少車になります。

 そして過去の所有者には、ポルシェ創始者フェルディナント・ポルシェ氏の孫であるフェルディナント・ピエヒ氏が含まれています。

 Vシリーズ959プロトタイプは、ヨーロッパ大陸各地において広範囲にわたるテスト走行を行い、シャシやサスペンション、トラクションコントロール、高速性能の限界を探りました。

 プロトタイプということもあって市販車両と異なる部分も数多くあり、運転席側のみのシングルドアミラーやボンネットで密閉された燃料フィラーキャップなどのユニークな特徴があります。

 ほかにも後部座席や後部フェンダーダクトが設けられ、逆にポップアップ式ヘッドライトウォッシャーが付いていないなど、959マニアでしかわからない差異もあります。

※ ※ ※

 今回の個体はすでに売却が成立しており、165万5000ドル(約2億4436万円)で落札されました。

 このプロトタイプはあらゆる「普通の」959とは一線を画していることもあって、ポルシェを愛する人には貴重なコレクションの1台になるはずです。

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