東海環状道「全線開通」で中京圏経済変貌? 大垣~四日市間「20%短縮」、企業進出は大加速するのか?

東海環状道が間もなく全線開通

東海環状道の風景(画像:写真AC)

東海環状道の風景(画像:写真AC)

 高速道路ネットワークは急速に拡大しており、そのなかでも中京圏の東海環状自動車道(東海環状道)は順調に進んでおり、2026年度には全線が開通する予定だ。

 東海環状道は、愛知県の豊田東ジャンクション(JCT)を起点に、岐阜県を経由して三重県の新四日市JCTで終点を迎える、全長約153kmの環状高速道路だ。中京圏の交通の重要な部分を担っている。

東海環状道は、次の主要な高速道路と接続している。

・東名高速道路(東名)
・新東名高速道路(新東名)
・中央自動車道(中央道)
・東海北陸自動車道(東海北陸道)
・名神高速道路(名神)
・新名神高速道路(新名神)

これらの高速道路を結ぶため、中京圏内での移動には非常に便利な道となる。実際、東海環状道沿線地域では、約7割の人々が全線開通を期待しているというデータもあり、企業活動や物流の効率化に対する期待が高まっている。

 今回は、東海環状道の全線開通がもたらす効果や影響について詳しく掘り下げてみる。

全長153kmへの最終章

東海環状道の路線図と建設計画(画像:国土交通省)

東海環状道の路線図と建設計画(画像:国土交通省)

 東海環状道は、2005(平成17)年3月に豊田東JCT~美濃関JCTが開通したことから、徐々に開通区間を伸ばしてきた。2024年11月時点、全長の約7割にあたる約110kmが開通しており、すでに東名、新東名、中央道、東海北陸道と接続されている。

 残りの未開通区間は以下のとおりで、開通予定が決まっている。

・2024年度:山県インターチェンジ(IC)~大野神戸IC(架橋工事で遅れが生じる可能性あり)、北勢IC~大安IC
・2026年度:養老IC~北勢IC

全線が開通すれば、岐阜県から三重県まで東海環状道が1本でつながることになる。

 豊田東JCT~中央道との接続ポイントである土岐JCT、そして東員IC~終点の新四日市JCTは、片側2車線の通行が整備されているが、それ以外の区間は基本的に暫定2車線の片側1車線で通行されている。ただし、今後は順次、片側2車線化を進めるための拡張工事が行われている。

大垣~四日市、移動時間22%短縮

時間短縮のイメージ(画像:写真AC)

時間短縮のイメージ(画像:写真AC)

 東海環状道が全線開通する最大のメリットは、アクセス向上による時間短縮だろう。全線開通によって中京圏内のアクセスが大幅に改善され、人や物の移動時間が短縮される。

 例えば、岐阜県西部の大垣市から三重県の最大都市・四日市市までの所要時間を見てみると、現在は約86分かかるところが、全線開通後は

「約67分」(22%減)

に短縮される。これは片道での時間なので、往復ではさらに差が大きくなる。

 時間短縮の効果は物流コスト削減にもつながる。所要時間が短くなることで、ガソリンの節約や輸送量の増加が見込まれるのだ。

 年間あたりの走行時間コストも、現在の約710億円から、全線開通後は約1274億円の削減が期待されている。また、時間短縮による経済圏の拡大や、災害時の対策としての利点も見逃せないポイントだ。

企業進出を後押し

東海環状道 美濃加茂SAに併設されているハイウェイオアシス(画像:写真AC)

東海環状道 美濃加茂SAに併設されているハイウェイオアシス(画像:写真AC)

 2024年11月現在、東海環状道が開通した岐阜県では、その効果が徐々に現れている。特に工業や企業活動の分野で注目が集まっている。

 岐阜県は2022年の工業立地件数で全国3位にランクインしており、もともと高い水準を誇っているが、東海環状道開通エリアでの土地整備が進んだことで企業の進出がさらに加速したといえる。

 企業活動が活発化することで、

・生産性の向上
・新たな産業の創出
・人材の流入

といった相乗効果も期待できる。今後、東海環状道の全線開通によって、岐阜県の企業活動はさらに活性化するだろう。

新名神と四日市港で広がる物流拠点

四日市港ポートビルから見える四日市港の風景(画像:都野塚也)

四日市港ポートビルから見える四日市港の風景(画像:都野塚也)

 三重県は2024年11月現在、東海環状道の未開通区間が多く、名神や他の主要路線と直接つながっていないため、企業活動は岐阜県と比べて控えめな印象だ。

 とはいえ、2026年度には東海環状道が全線開通する予定で、これによる企業進出の本格化が期待されている。三重県は中京圏と関西圏を結ぶ重要な経由地でもあり、すでに開通している三重県区間の新名神と合わせて、物流効率の向上が見込まれている。

 また、三重県には日本の国際拠点港湾である四日市港があり、日本列島のほぼ中央に位置しているため、中部、近畿、北陸への海運輸送の拠点としても重要だ。

 新名神の開通で四日市港の利便性が大きく向上しており、東海環状道の全線開通によってさらに企業活動の活性化や企業誘致の促進が期待されている。

岐阜の企業活動活発化

伸び率上昇のイメージ(画像:写真AC)

伸び率上昇のイメージ(画像:写真AC)

 岐阜県と三重県では、東海環状道の全線開通に向けて、両県の企業が設備投資に力を入れている。これも企業活動が活発になっている証しといえる。

 2023年度の設備投資の伸び率は次のとおりだ。

・岐阜県:64.7%
・三重県:45.7%
・全国平均:9.3%

両県とも全国平均を大きく上回っている。特に、すでに東海環状道が開通している岐阜県は、コロナ禍の2021年度を除き、ほとんどの年度で全国平均を大幅に上回る水準だ。

 三重県には、亀山市に大手電機メーカーのシャープの工場があり、労働人口の約4人にひとりが製造業に従事している。今後、東海環状道の全線開通で、さらに設備投資が伸びることが期待される。

渋滞緩和と経済成長の期待

未来に向けてのイメージ(画像:写真AC)

未来に向けてのイメージ(画像:写真AC)

 いよいよ全線開通が近づいてきた東海環状道には、いろいろな期待がかかっている。これは沿道の愛知県、岐阜県、三重県だけでなく、他の地域にも大きな影響を与えるだろう。

 環状高速道路として、いろいろな使い方ができるのが強みだ。例えば、主要路線の渋滞を緩和したり、トラブルがあったときの迂回ルートを確保したりといった使い方が考えられる。

 ひとつ問題があるとすれば、暫定2車線の区間が多いことだが、これも徐々に片側2車線化が進んでいて、しばらくの我慢になるだろう。逆に、すでに片側2車線通行になっている豊田東JCT~土岐JCTは、いつでも快適で使いやすい状況になっている。

 岐阜県や三重県のさらなる経済成長のきっかけになることを願う。

●参考文献
・東海環状自動車道に関する経済レポート ~物流、企業、全線開通への期待と課題~

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