2024年「M&A甲子園」47都道府県で件数が多いのはどこか?

夏の甲子園(第106回全国高校野球選手権大会)が連日熱戦に沸いている。折しも、甲子園球場開場100周年の節目。ビジネス界でもM&A市場が全国的にかつてなく盛り上がっている。47都道府県の最新勢力図は? この時期恒例の「M&A版甲子園」と題し、2024年のここまでの戦いぶりを点検する。

M&A Onlineの調べによると、今年の上場企業によるM&A件数は715件(8月9日時点、適時開示ベース)。前年を100件、率にして16%上回る高水準で推移し、2年連続の年間1000件の大台乗せが確実視される。

千葉県など11県、前年年間件数を上回る

こうした中、都道府県ごとにM&A市場における立ち位置はどうなのか。今年の全715件のM&Aについて、買い手、売り手、対象(自社や子会社・事業がターゲットになる)のいずれかの立場でかかわった件数を都道府県別に単純集計した(一覧表)。

全国的なM&Aの分布状況を大づかみすることが目的。例えば、宮城県のA社(買い手)が兵庫県に本社を置くB社(売り手)の福岡県にある子会社(対象)を買収したケースは宮城県、兵庫県、福岡県を各1件とし、当事者がすべて同じ県内の場合は当該県の1件のみとカウントした。

ただ、買い手に回ることの多い上場企業の数が少ない県では件数が低くなる”ハンディ“が否めない。全国で唯一、上場企業のない長崎県は1件。西華産業が県内にあるFRP(繊維強化プラスチック)船舶メーカーの田中造船(松浦市)を4月に子会社化したのがそれ。

年内5カ月近くを残し、すでに前年の年間件数を超えたのは千葉県(21件)、岐阜県(15件)、石川県、三重県(各12件)、香川県(5件)、沖縄県(同)、鳥取県、大分県(各4件)、福井県(3件)、島根県、佐賀県(各2件)の11県を数える。

石川県12件に倍増、鹿児島県はゼロ

なかでも石川県は前年の年間6件から倍増した。12件中10件は県内企業が買い手としてかかわった案件で、このうち4件の買収は県内に本社を構えるクスリのアオキホールディングスが静岡県、岐阜県、千葉県、香川県の企業を相手に手がけた。

沖縄県は5件とも県内企業が買収対象もしくは売り手の案件だった。

反対に、件数を大きく減らしているのが山梨県と富山県。山梨県は前年年間11件、富山県は同10件だったが、今年はここまで両県とも2件と苦戦中。山梨県の場合、県内企業による買収はゼロで、売り手、対象の案件が各1件だった。

一方、今年ここまでゼロ件は鹿児島県だけ。前年は年間5件で、県内企業を対象とする買収が4件あったほか、県内に本社を置く新日本科学が米国創薬ベンチャーを買収する海外案件があったが、一転、動きが止まっている。

静岡県などトップ10入りをうかがう

上位をみると、東京都(534件)、大阪府(101件)の1~2位は不動。前年の同時期より、東京都は約90件、大阪府は約10件増えている。

例年、3~4位は愛知県と神奈川県の争いだが、ここまでは愛知県が64件で神奈川県の50件をリードする。

5位は福岡県の“指定席”で29件。以下、僅差で兵庫県26件、京都府、埼玉県各24件、千葉県21件と続き、10位に19件の北海道がつける。静岡県17件、岐阜県15件、石川県、三重県、広島県が各12件で追い、トップ10入りをうかがう展開となっている。

◎都道府県別M&Aの推移(買い手・売り手・対象の所在地を単純集計。※2024年は8月9日時点)

2022年 23年 24年
北海道 33 23 19
青森県 1 2 1
岩手県 15 8 4
秋田県 0 2 1
宮城県 6 14 8
山形県 2 3 2
福島県 5 11 5
群馬県 10 11 4
栃木県 8 9 5
茨城県 13 12 7
埼玉県 31 38 24
千葉県 18 20 21
東京都 704 802 534
神奈川県 63 60 50
山梨県 4 11 2
長野県 21 15 7
新潟県 8 14 5
富山県 9 10 2
石川県 14 6 12
福井県 5 2 3
岐阜県 14 14 15
静岡県 22 28 17
愛知県 70 72 64
三重県 6 8 12
滋賀県 4 6 3
京都府 26 33 24
大阪府 147 148 101
兵庫県 27 37 26
奈良県 2 5 4
和歌山県 4 2 2
鳥取県 2 2 4
島根県 2 1 2
岡山県 6 9 4
広島県 19 21 12
山口県 6 11 1
徳島県 6 7 2
香川県 5 2 5
愛媛県 4 2 2
高知県 3 1 1
福岡県 43 46 29
佐賀県 1 1 2
長崎県 5 1 1
熊本県 3 7 4
大分県 4 3 4
宮崎県 3 4 4
鹿児島県 4 5 0
沖縄県 6 2 5

文:M&A Online

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