高速道路の謎! インターチェンジ間の「距離」がバラバラな理由とは?

IC間距離の謎

次のICとふたつ先のICの案内看板(画像:都野塚也)

次のICとふたつ先のICの案内看板(画像:都野塚也)

 高速道路のインターチェンジ(IC)間の距離は、区間によって異なる――。

これは当たり前のことだが、私(都野塚也、ドライブライター)が子どもの頃に感じた素朴な疑問でもある。距離が違うことは理解できたものの、区間によって差がかなり大きいと感じていた。

 次のICやジャンクション(JCT)までの距離は、ほとんどの場所で案内看板が設置されていてわかりやすく表示されている。次までの距離が5km以内のところもあれば、20km前後離れているところもある。20km離れている場合、時速80kmで走行すると、到着まで約15分かかる。

 同じ路線内でも、区間によって次のICやJCTまでの距離が大きく異なることがある。距離が等間隔でないため、特に次までの距離が長い区間では、走っていて果てしなく感じることもある。

 高速道路を利用する際の知識として、IC間の距離の短い区間と長い区間について、ぜひ知っておいてほしい。

IC間距離が長くなる理由

名神高速道路上り線。茨城IC通過直後の案内看板(画像:都野塚也)

名神高速道路上り線。茨城IC通過直後の案内看板(画像:都野塚也)

 IC間の距離がまちまちなのは、主に利用者の利便性や利用者が多い場所に設置されるからだ。例えば、施設や民家が少ない集落よりも、駅周辺の市街地に設置されることが多い。

 日本の都市は地域によって規模や人口が違う。また、レジャー施設や観光スポットが近いかどうかでも条件が変わってくる。こうした要素を総合的に考慮してインターの設置場所が決まるため、IC間の距離にばらつきが生じる。

 高速道路は鉄道のように利用者が少ないからといって簡単に廃止されることはないが、利用者が少ない路線やインターは赤字になり、維持費の負担が大きくなる。

 ICひとつの建設費は30~60億円、維持費は年間約1.2億円かかるため、設置場所は慎重に決められる。その結果、利用者が少ない地域や区間では、ICの間隔が長くなることがある。

短距離ICが都市圏に多い理由

(伊勢湾岸自動車道下り線 名港潮見ICを過ぎるとすぐに名港中央ICのインターがある(画像:都野塚也)

(伊勢湾岸自動車道下り線 名港潮見ICを過ぎるとすぐに名港中央ICのインターがある(画像:都野塚也)

 IC間の距離が短い区間はいくつかある。例えば、以下の区間だ。

・首都圏中央連絡自動車道(圏央道):あきる野IC~日の出IC(2.0km)
・名神高速道路:草津JCT~瀬田東IC/JCT(2.1km)
・中国自動車道:西宮山口JCT~西宮北IC(2.3km)
・東関東自動車道:谷津船橋IC~湾岸習志野IC(2.4km)
・伊勢湾岸自動車道:名港潮見IC~名港中央IC(2.4km)

これらはすべて距離が3km未満で、ICを通過したと思ったらすぐに次のICやJCTが現れることになる。

 ICとJCTの距離が短いのは、それぞれの役割が異なるから理解しやすい。しかし、IC同士の距離が短い理由は何だろうか。例えば、圏央道のあきる野IC~日の出ICを見てみよう。あきる野ICはあきる野市の南側にあり、近くに人気のレジャースポット「サマーランド」がある。特に夏の休日には出口渋滞が頻発し、サマーランド利用者のアクセスを考えて設置されている。また、あきる野市や八王子市の市街地から圏央道を利用する際にも便利だ。

 一方、日の出ICは東京都日の出町にあり、近くには大規模ショッピングセンター「イオンモール日の出」がある。このモールは周辺で最大規模で、あきる野市北部や福生市からもアクセスしやすく、需要が高い。

 このように、あきる野ICも日の出ICもそれぞれのニーズに応じて設置されているため、距離が短くても必要なICだ。また、これらの区間はすべて日本の三大都市圏内にあり、都市圏では需要が大きいため、ICの数が多くなる傾向がある。

県境を越える長距離区間の実態

東名高速道路の大井松田IC~御殿場ICも20km離れている区間(画像:都野塚也)

東名高速道路の大井松田IC~御殿場ICも20km離れている区間(画像:都野塚也)

 逆に、IC間の距離が長い区間の代表例として、以下のものがある。

・関越自動車道(関越道):水上IC~湯沢IC(25.9km)
・中国自動車道(中国道):東城IC~庄原IC(30.2km)
・九州自動車道(九州道):八代JCT~人吉IC(37.4km)

これらの区間では、IC間の距離が30km以上離れていることがあり、次のICまでが遠く感じることが多い。

 関越道や九州道の区間は県境に位置し、中国道も含めて山岳地帯を越えるエリアになっている。このため、主要な市街地や観光スポットが少なく、ICを設置する必要があまりないのだ。

 長い区間を走る際に気になるのはトイレの問題や急に襲ってくる眠気だが、こうした区間にはサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)が2箇所設置されているので、安心して走行できる。

 ただし、IC間が長い区間では、トラブルが発生したり、降りる予定のICを通り過ぎてしまうと、通常より対処が難しくなるため、十分に注意が必要だ。

カギはスマートICとJCT

中央自動車道下り線。笛吹八代スマートIC周辺(画像:都野塚也)

中央自動車道下り線。笛吹八代スマートIC周辺(画像:都野塚也)

 IC間の距離が長い区間は、年々減ってきている。その理由のひとつが、SAやバスストップに併設されたETC専用のスマートICの普及だ。

 スマートICは地域の生活を豊かにし、経済を活性化するために導入されている。また、日本の高速道路のIC間の平均距離は世界平均と比べて長く(日本は約10km、世界平均は約5km)、既存のネットワークをより効率的に活用する狙いもある。

 初めてスマートICが導入されたのは2004(平成16)年10月で、東名高速道路の上郷SA(現在の豊田上郷SA)で社会実験として始まった。2006年10月から本格運用が開始され、効果が高かったことから全国に広がり、2026年9月時点で全国に160か所のスマートICが運用されている。

 スマートICのメリットは、通常のICに比べて設置や維持費が安いこと。通常のICの設置費用は30~60億円、年間維持費は1.2億円だが、スマートICは設置費が3~8億円、年間維持費は0.5億円と、コストが10分の1程度に抑えられる。これにより、今までICから遠かった地域にもアクセスしやすくなり、今後さらにスマートICの設置が進むことが期待されている。

 さらに、高速道路のネットワークが急速に発展しており、新たなJCTの増加もIC間の距離が短くなっている要因のひとつだ。JCTは一般道に降りることはできないが、新設されたJCTが案内看板に追加されることで、次のICやJCTまでの距離が明確になり、ドライバーにとって安心感が生まれるという利点がある。

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