再考!「夜行バス」の魅力の本質とは? 手軽で経済的なこの交通手段が愛され続ける根本理由

75%がバス旅行希望

夜行バスのイメージ(画像:写真AC)

夜行バスのイメージ(画像:写真AC)

 近年、夜行バスの利用が増えている。背景には経済的な理由や利便性の高さがある。特に若年層や経済的に余裕のない人々にとって、夜行バスは“手軽な交通手段”として重宝されている。

 具体的にいうと、夜行バスを含む高速バスは、長距離移動を安価に行えるため、他の交通手段に比べてコストが抑えられる。また、移動中に睡眠をとることで、時間を効率的に使える点も人気の理由だ。

 実際に、高速バス比較サイト「バス比較なび」が2018年10月に実施したアンケート調査では、利用理由として

・安さ
・時間の有効活用
・乗り換えが不要

といった点が挙げられている。

 さらに、2022年10月に楽天トラベルが行ったアンケートによると、「バスでの旅行に対する意欲」を尋ねたところ、約75%が「とても利用したい」「利用したい」と回答しており、バス旅行への関心が高いことがわかっている。このように、夜行バスはその魅力をさらに高め、注目を集め続けているのだ。

 夜行バスに関する記事はたくさんあるが、今回はその魅力の根本的な理由を掘り下げて再考していく。手軽で経済的なこの交通手段が、なぜ多くの人に愛され続けているのか、その魅力を探求してみよう。

 さまざまな視点から夜行バスの利点や新たな体験を考察し、私たちの移動の選択肢にどのような影響を与えているのかを明らかにすることで、興味深い発見があるかもしれない。一緒に夜行バスの魅力を再発見し、楽しい旅の可能性を広げていこう。

宿泊費ゼロで移動効率アップ

高速バスの車内(画像:写真AC)

高速バスの車内(画像:写真AC)

 夜行バスの最大の魅力は、経済的なメリットが大きい点だ。新幹線や飛行機と比べて非常に低価格で利用できる。

 例えば、東京から大阪まで移動する場合、新幹線の料金は約14,000円だが、夜行バスは3,000~8,000円程度で利用できる。この料金差は、特に旅行予算に制約のある学生や若年層にとって大きな魅力で、気軽に利用しやすい。

 さらに、事前予約をすることでさまざまな割引が受けられる点も注目だ。早期予約割引や平日割引など、プランによって異なる割引があり、計画的な旅行をする人々には大きな経済的メリットがある。

 また、往復チケットの購入や特定の会員制度に登録することで、さらに割引が適用されることもある。このように、割引制度を活用することで、旅行費用を大幅に削減できる。

 夜行バスのもうひとつの利点は、移動時間を有効に使えることだ。夜間に出発し、翌朝に目的地に到着するため、睡眠をとりながら移動できる。これにより宿泊費用を節約しつつ、到着後すぐに観光やビジネス活動を開始できる。特に週末や連休を利用して旅行を楽しむ場合、時間とコストの両方を節約できる手段として非常に優れている。

快適さ向上の競争激化

夜行バス「リボーン」のシェル型シート(画像:WILLER)

夜行バス「リボーン」のシェル型シート(画像:WILLER)

 近年、夜行バスは驚くほど進化しており、快適さが大幅に向上している。今では「夜行バス」ということを忘れてしまうほどだ。

 まず、座席のリクライニング機能が充実していて、ほぼフラットに近い状態で休むことができる。座席間のスペースも広く設計されており、隣の乗客を気にせずリラックスできる。また、プライバシーを保つために、カーテンやパーティションで仕切られた車両もある。

 さらに、車内の照明が調整可能で、眠りやすい環境が整っている。毛布や枕、スリッパなどのアメニティが用意されているバスもあり、まるでホテルのようなサービスを受けることができる。Wi-Fiや充電用のUSBポートも完備されているため、移動中に仕事をしたり、エンターテイメントを楽しんだりすることも可能だ。

 また、一部のバスではドリンクサービスや軽食の提供も行われており、移動中の快適性がさらに向上している。このように、充実した設備とサービスにより、夜行バスは単なる移動手段ではなく、リラクゼーションやエンターテイメントの空間としても利用されるようになっている。

 利用者のニーズの変化や、バス会社間の競争激化、手軽に利用できるネット予約の登場などが相まって、夜行バスに対する「ぐっすり眠れない」「かなり疲れる」といった不満は解消されつつある。

夜行バスの安全性問題

バスの運転手(画像:写真AC)

バスの運転手(画像:写真AC)

 一方で、夜行バスには安全性に関する懸念がある。長時間の乗車による体への負担や運転手不足が影響し、運転手の疲労による事故のリスクが指摘されている。

 国土交通省が発表した「令和4年度 自動車運送事業用自動車事故統計年報」によると、夜行バスを含む乗合バスの重大事故件数は、2021年度の2045件から令和4年度には2245件(9.8%増)に増加している。そのなかで、乗務員に起因する事故は309件で、全体の約14%を占めている。

 これらのリスクを軽減するため、各バス会社は運転手の休憩時間の確保や複数の運転手による交代制の導入など、安全対策を強化している。高速バスを安心して利用するためには、ドライバーのケアが重要だ。

また、高速バスでは長時間同じ姿勢で座ることによるエコノミークラス症候群などの健康リスクもあるため、適度な休憩やストレッチを行うことが推奨されている。

 さらに、夜行バスの運行ルートや道路状況も安全性に影響を与える。特に冬季には、雪や凍結による滑りやすい道路が問題となることがある。このため、バス会社は冬用タイヤの装着や悪天候時の運行中止などの対策を講じているが、利用者自身も天候や道路状況を確認し、必要に応じて運行情報をチェックすることが大切だ。

 夜行バスの車内環境も安全性に影響を与える。車内の温度や湿度が適切でない場合、体調を崩すリスクがある。各バス会社は快適な環境を提供するために、エアコンや加湿器の設置を行っているが、利用者自身も適切な服装や飲み物を用意することが推奨される。

 利用者同士のトラブルも安全性に影響を与えることがある。騒音やマナー違反が原因でトラブルが発生することがあるため、バス会社は車内ルールの徹底やトラブル時の対応策を講じているが、利用者も他の利用者への配慮を忘れずに行動することが求められる。

 各バス会社の努力によって、快適かつ安全な移動を実現する夜行バス。今後も進化を続け、「寝台列車」のような付加価値を生み出し、

「新幹線や飛行機より値段が高くても利用したい」

と思う人が増えるかもしれない。

 皆さんにとっての「夜行バス」の魅力の本質とは何か。手軽で経済的なこの交通手段が愛され続ける根本理由を教えてほしい。

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