自転車推進計画が進むパリでは移動手段のシェアで自転車が自動車を上回っている

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フランスのパリではアンヌ・イダルゴ市長の下で自転車利用を推進する改革が行われており、サイクリストに優しい街作りが進んでいます。人々がパリ市内で利用する交通手段を調べた2022年から2023年の調査では、自動車が4.3%だったのに対して自転車が11.2%となり、自転車が自動車を上回ったとのことです。
The cycling revolution in Paris continues: Bicycle use now exceeds car use | Lifestyle | EL PAÍS English
https://english.elpais.com/lifestyle/2024-04-24/the-cycling-revolution-in-paris-continues-bicycle-use-now-exceeds-car-use.html

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パリ中心部にあるリヴォリ通りは、パリ市庁舎やルーヴル美術館の前を通る交通の大動脈です。ラッシュアワーには観光客や通勤する人々で混雑し、5年ほど前はほとんどが自動車で埋まっていたとのこと。
ところが近年のパリでは、イダルゴ市長の肝いりで自転車移動をサポートする政策が進められており、リヴォリ通りにも双方向の自転車専用レーンが作られました。その結果、リヴォリ通りはラッシュアワーに多くの自転車が行き交う光景が見られるようになったそうです。
自転車改革の影響で、晴れの日には自転車の密度が高すぎて自転車専用レーンで渋滞が発生したり、時には自転車同士がぶつかったりしてしまうこともあるとのこと。イダルゴ市長はリヴォリ通りに並行する通りにも自転車専用レーンを設置することで、この状況を改善しようと試みています。

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パリの最新の自治体データによると、パリ市内で自転車が通行できる道路の総距離は1000kmに達し、そのうち300km以上が自転車専用レーンになっているとのこと。パリ当局は2026年までに市内全域を自転車移動に適した環境にしたいと考えており、2020年から2期目を務めているイダルゴ市長は、自転車改革のために前期より1億ドル(約155億円)多い2億5000万ドル(約389億円)を確保しています。
しかし、パリのサイクリスト団体であるParis en Selle associationはイダルゴ市長の2期目の任期が60%以上経過したにもかかわらず、当初計画していた自転車関連計画の27%しか実現されていないと指摘しています。これに対してパリ市のダヴィッド・ベリアール副市長は、遅れがあることを認めつつも、パリ市内における自転車の利用が大幅に増加していると主張しました。
すでに一部の大通りでは自転車の数が自動車を上回る事態になっており、パリの市営レンタルサイクルサービスのヴェリブは2024年3月以降だけで3000台もの自転車を新たに導入しています。長年パリに住んでいる62歳の女性は、1980年代初頭は自転車で移動するのが非常に危険でしたが、近年は女性でも安心して自転車に乗れるようになったとコメントしています。
パリの都市計画機関であるParis Région Instituteの調査によると、2022年から2023年にかけて行われたパリ市内での移動に使われた交通手段の11.2%が自転車だったのに対し、自動車はわずか4.3%にとどまったとのこと。2021年の段階では自転車が5.6%、自動車が9%だったことから、わずか1~2年で大幅に自転車利用者が増えていることがわかります。
また、同じ調査ではパリ市民だけでなくパリ郊外の住民も自転車利用を好んでおり、移動手段の14%が自転車で11.8%が自動車であることも報告されています。この傾向はラッシュアワーになるとさらに顕著で、18.9%が自転車、6.6%が自動車で移動しているとのことです。

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パリにおける自転車利用の増加には、2019年12月に政府の年金制度改革に抗議するため公共交通機関がストライキを行ったことや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う都市封鎖などが背景にあります。パリ市役所によると、過去12年間でパリ市内の自動車交通量は40%も減少したそうです。
しかし、急激な交通手段の変化はさまざまな摩擦や混乱も引き起こしています。イダルゴ市長もこの点を認め、「このような習慣の急激な変化は街灯での緊張を伴うものです。誰もが自分の居場所を見つけ、安全だと感じるには時間がかかります」と述べ、サイクリストたちは公共空間を使っている意識を持ってルールに従うべきだと主張しています。2023年の夏には街の至るところにポスターを貼り、「道路では歩行者優先」「最高速度は時速30km」といったルールをアピールしました。
今後パリ当局は、市内に13万台分を超える自転車駐輪場の増設計画など、サイクリストの増加に合わせたインフラの整備を行っていくとのことです。

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