全国初のカスハラ防止条例、東京都議会で成立へ 深刻な被害に対応

カスハラ防止条例案が提出された東京都議会=2024年9月18日午後1時18分、太田原奈都乃撮影

 客から理不尽な要求や暴言などを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)を防止する東京都の条例案が4日午後、都議会本会議で可決、成立する見通しとなっている。カスハラ防止に焦点を当てた条例は全国初で、来年4月から施行される。

 大声で責め立てられたり胸ぐらをつかまれたりするなど、接客が必要な業界でカスハラによる被害が深刻化しており、都が対策の検討を進めていた。従業員の保護を企業に義務づける法改正を国も検討中だ。

 条例ではカスハラを「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と初めて定義。「何人も、あらゆる場において、カスハラを行ってはならない」と定め、対策には「社会全体で対応しなければならない」と明記した。

 民間企業だけでなく、公的機関も対象になる。顧客、働く人、事業者、都のそれぞれに対して防止に向けた責務も盛り込んだ一方、正当な意見や苦情は業務改善に資するとして「顧客等の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」とも記載した。

 条例に罰則は盛り込まれず、都は実効性を高めるためにガイドラインや業界共通のマニュアルをつくり、禁止行為の具体例を示すとしている。現場で活用し、条例とともに周知することで、働く人を守る機運を醸成したい考えだ。(松田果穂)

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