トランプ政権再び「自衛隊コレ買わないか」 第一次政権時に売り込まれたモノとは? 日本はいま“思惑どおり”に!?

ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に再任します。日本の安全保障にはどのような影響があるでしょうか。第一次トランプ政権の時に「売り込まれたモノ」を振り返ると、いまの日本は「トランプ氏の思惑通り」かもしれません。

「防衛費を上げろ」を求めた第一次トランプ政権、いま思惑通りに?

 2024年11月5日に行われたアメリカ大統領選挙の結果、ドナルド・トランプ氏が第47代大統領に選出されました。トランプ氏の再任が日本の安全保障にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

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航空自衛隊のF-2戦闘機。後継機の選定はさきのトランプ政権時代に本格化した(画像:航空自衛隊)。

 トランプ氏は2017年から2021年まで第45大統領として在職。当時から現在に至るまで、アメリカの国益を最優先する「アメリカファースト」を掲げています。これには、同盟国に防衛費の増加を求めて防衛力の強化を図り、そのぶんアメリカの同盟国に対する防衛負担を減らすことも含まれています。

 NATO(北大西洋条約機構)は加盟国の国防費をGNP(国民総生産)の2%以上とする目標を掲げていますが、これはトランプ氏が前回大統領在職時(以下、第一次トランプ政権)、同盟国に防衛費の負担増を求めたことが、理由の一つになっています。

 第一次トランプ政権で国防次官補代理を務めたエルブリッジ・コルビー氏は「日本も防衛費をGDP(国内総生産)比で3%以上にすべき」と主張していました。実際に日本の防衛費は第一次トランプ政権時代に増加する傾向がありましたので、2025年から始まる第二次トランプ政権でも、日本を含めた同盟国に防衛費の負担増を求めてくる可能性が高いと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 その一方でトランプ政権は、同盟国の防衛力を強化してアメリカの防衛負担を減らす目的で、その国の多くの国民の“想像を超えた”防衛装備品の輸出や防衛技術の供与などを持ちかけてくる可能性もあります。

 たとえば、航空自衛隊のF-2 戦闘機後継の選定は、第一次トランプ政権期の2017年から18年にかけて本格化しました。

 F-2戦闘機の後継機選定にあたっては既存の戦闘機の改造も検討され、米ロッキード・マーチンとボーイング、英BAEシステムズの3社に提案が求められました。この時ロッキード・マーチンは、「F-22戦闘機の機体に、F-35戦闘機の電子機器などを移植する」というビックリ提案をしてきました。

「F-22とF-35のキメラ」はトランプお墨付きだった!?

 F-22は世界で初めて実用化された第5世代戦闘機で、航空自衛隊もF-4EJ改戦闘機の後継機を選定する際、導入を強く望んでいました。しかしアメリカ政府は1998会計年度の国防予算に、F-22の輸出を事実上不可能にする「オビ―修正条項」を設定しており、日本はもちろん、導入を検討していたと報じられたことがあるオーストラリアやイスラエルへも輸出されませんでした。

 F-35はアメリカと、イギリス、イタリアなどの開発パートナー国が予算を分担して開発されています。F-35の情報開示は基本、どのレベルのパートナーとして開発に参加したかによって決まるのですが、日本は導入機数は多いものの開発パートナー国ではありません。このため情報開示レベルは、パートナー国として参加した国々に比べて低くなります。

 F-22+F-35の提案は民間企業であるロッキード・マーチンからなされたものですが、メーカーが防衛装備品を外国へ提案するにあたってはアメリカ政府の承認が必要であり、この場合は第一次トランプ政権の承認を得て行われたものと見るべきでしょう。

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日英伊のプロジェクト「GCAP」で開発される航空自衛隊の次期戦闘機の模型(国際航空宇宙展2024にて)。ロッキード・マーチンの案は幻に終わった(乗りものニュース編集部撮影)。

 日本はいったん、米英などの支援を受けながら新戦闘機を開発することを決断し、その後イギリス・イタリアとの共同開発へと方針転換したため、F-22+F-35案は幻と消えました。

 ただ、仮に日本がこの提案を受け入れた場合、ロッキード・マーチンは60%程度を日本で生産まで許可するという付帯条件まで付けていました。輸出許可だけでなく、同社のそうした提案に承認を与えたあたりにも、第一次トランプ政権の姿勢を見て取ることができたと言えるでしょう。

ほんとに買っちゃった…モノとは?

「F-22+F-35」案は実現しませんでしたが、実現した提案もあります。その一つが海上自衛隊のイージス護衛艦に搭載されるトマホーク巡航ミサイルの輸出です。

 日本政府が敵基地攻撃能力を得るためにトマホークの導入を閣議決定したのは2022年のことですが、筆者が初めて、日本にトマホークを輸出する可能性があるという話をメーカーのレイセオン(現RTX)から聞いたのは、第一次トランプ政権時代の2018年10月のことです。

 トマホークの運用にあたってはアメリカ軍のシステムを利用する必要があり、2018年10月の時点での輸出はイギリスのみにとどまっていたため、正直筆者も半信半疑だったのですが、その後、時間は要したものの日本へのトマホークの輸出は実現しています。

 筆者が話を聞いたのはレイセオンからですが、メーカーの日本政府への提案やジャーナリストへの情報提供などには政府の承認が必要だったはずで、日本のトマホーク導入話は、第一次トランプ政権のころにはある程度煮詰まっていたものと考えられます。

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トマホーク巡航ミサイル(画像:アメリカ海軍)。

 第二次トランプ政権が、その国の多くの国民が想像していない防衛装備品の輸出に踏み切るとの見方は、台湾にも存在します。台湾メディアは台湾政府が第二次トランプ陣営の政権移行チームに対して、F-35とイージス艦の輸出を非公式に打診したと報じています。

 トランプ政権が第一次政権時のように思い切り良く防衛装備品の輸出などを行うかは未知数ですが、仮に日本政府が望むのであれば、たとえば原子力潜水艦の技術供与のような、思いもよらぬ提案をしてくる可能性もある……のではないかと思います。

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