まるで関所!? みんなが避けた関東の元「有料の橋」たち 無料化で大変化!

もともと有料道路として開通し、無料化された「橋」が、首都圏にはいくつも存在します。有料の時代は利用を避ける人も多かったルートは、無料化後にどう変わったでしょうか。

「え、あの橋有料だったの!?」今となっては信じられない“大動脈”も

 2023年11月、埼玉県三郷市と千葉県流山市を隔てる江戸川に、新たな橋「三郷流山橋」が開通しました。この橋は、すぐ下流側にある「流山橋」の慢性的な渋滞の解消のために計画され、早期開通を図るべく建設費を通行料金で償還する「有料道路」の仕組みを採用しました。通行には普通車150円、軽自動車100円が必要です。
 
 このように有料道路として建設された橋が、じつは首都圏にはいくつもあります。現在その多くは無料開放されていますが、なかには通行料金の収入が想定を下回り、建設費を償還できないまま最終的に無料となった橋も少なくありません。

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新4号国道の新利根川橋(奥)。かつては有料だった(乗りものニュース編集部撮影)。

 ここでは、無料開放された橋のうち、広域や地域の交通ネットワークで重要な役割を果たしているものをご紹介しましょう。

新利根川橋(茨城県五霞町―境町)

 国道4号の「春日部古河バイパス」が利根川を渡る部分に架けられた「新利根川橋」は、1981年に片側1車線ずつで暫定供用されました。ところが開通後は料金徴収を嫌い、下流側の境大橋へと迂回するクルマが多く、予定通りに建設費が回収できないまま、償還予定の20年が経過した2001年、無料開放となりました。

 その後の改修で2015年に片側2車線化が行われ、現在は「新4号」の一部として、北関東の広域交通を担っています。

下総利根大橋(千葉県野田市―茨城県坂東市)

 千葉県道・茨城県道162号は、東京を中心に環状に走る国道16号の北端部から利根川を渡り、茨城県坂東市を結ぶ重要な道路となっています。その県道が利根川を渡る部分に架けられた橋が「下総利根大橋」です。

 開通は1990年で、30年の料金徴収を経て、2020年に無料開放されました。

 以前はこの橋を避けるクルマで下流側の芽吹大橋の渋滞が目立ちましたが、無料開放により交通の分散が進み、地域交通がスムーズになる効果が生まれています。

東京多摩の元「有料の橋」といえば

 高速道路ICとセットの有料橋もありました。

稲城大橋(東京都府中市―稲城市)

 東京の多摩地区は、多摩川両岸の市街地化が進んだことで、1990年代には橋を渡る渋滞の激化が各所で問題となっていました。この「稲城大橋」は、そうした多摩川を渡る交通の分散を図るとともに、中央道から多摩川右岸(南側)を直結するルートとして1995年に整備されたものです。

 同時に供用開始した中央道の稲城ICと直結する構造で、中央道の入口/出口料金所で料金を徴収する仕組みとなっていました。

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稲城大橋。中央道稲城ICからのほか、一般道からもアクセス可能(ドライブレコーダー)。

 ただ通行台数は計画を下回る形で推移し、最終的には税金を投入して建設費の負債を解消する形で、2010年に無料開放されました。

上葛飾橋(埼玉県三郷市―千葉県松戸市)

 松戸市街地のすぐ西にある「上葛飾橋」は、1980年に松戸三郷有料道路の一部として供用を開始し、松戸市街地と三郷市、八潮市、草加市を短絡するルートで重要な役割を果たしてきました。

 ひとつ上流の橋は、前出した渋滞で名高い流山橋で、下流側にある葛飾橋までの距離も2.5kmと近くはなく、またそこに至るまでの道路も混雑しがちであることから、“泣く泣く”料金を支払って通行するクルマも少なくありませんでした。

 無料開放は2008年でしたが、上流側の流山橋の渋滞改善への効果はなく、その対策はさらに上流に作られた新たな有料道路「三郷流山橋有料道路」に委ねられることになります。

川じゃなくても「有料の橋」短すぎる!?

 有料ながら、あまりに短すぎるため、無料化が大幅に早まった例もあります。

新浦和橋(埼玉県さいたま市)

 これまで見てきた橋はすべて「川を渡る」ものでしたが、「新浦和橋」はJR東北本線(貨物線、列車線、電車線の3複線)をまたぐ跨線橋で、線路によって分断された東西交通を円滑にする国道463号のバイパスとして1993年に開通しました。

 しかし「わずか300mに150円」という割高な通行料金が不評となり、すぐ北側の県道65号(旧中山道)や南側の国道463号現道に迂回するクルマがあとを絶たず、市街地の狭い道が混雑するという悪影響を生みます。

 そして通行料金収入での償還のめどが立たないことから、事業費を埼玉県やさいたま市などが負担する形で2003年に当初予定より20年早く無料開放されました。

 なお同じさいたま市内の国道463号バイパスに架かる「新見沼大橋」も同様の状況から利用が低迷し、通行料金での償還が困難になっています。こちらは2026年に料金徴収期間終了を迎えますが、税金を使い損失を埋めての無料化となる見込みです。

※ ※ ※

 橋を通る人から通行料を取り、その積み立てを橋の保守や架け替えに使うというアイデアは、大雨のたびに橋が流されることがあった江戸時代には成立していたビジネスモデルだと考えられています。

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三郷流山橋有料道路の開通初日は混雑したが、それ以降、利用はさほど多くない(乗りものニュース編集部撮影)。

 ただ物流に必要な一般道の橋については、やはり税金で(=有料道路というスキームではなく)整備するのが本筋であり、実際に有料道路として作っても、料金支払いを嫌って迂回するクルマで償還計画が大幅に狂うことはこれまでの例からも明らかです。行政には、適切な予算の配分により、重要な橋はできるだけ早く整備するという施策が求められているのではないでしょうか。

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