「ここは私道、ですが有料です」走れば納得の絶景!? いろいろ特殊な関東「私設有料道路」の“使いみち”

全国に数ある有料道路のなかでも、私企業が「私道」として建設し、運営しているもの存在します。料金体系などをはじめ特殊な点も多々あるものの、その対価として絶景のドライブを楽しめる道路も少なくありません。

1000円払う価値は…ある! 絶景の有料道路

 日本には多くの有料道路があります。その代表格は、NEXCO各社の高速道路や首都高速、阪神高速ですが、それ以外にも国道のバイパスや観光道路などが、利用者から通行料金を徴収する形で運営されています。

 ところでこうした有料道路のなかに、私企業が運営する道路が含まれていることをご存じでしょうか。

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万座ハイウェー。標高1800mまで駆け上がるルートは走りごたえもある。西武グループが運営(画像:Google earth)。

 私道の有料道路は観光に特化し、見晴らしを重視して作られていることも多く、いくつかは絶景が楽しめるドライブコースとなっています。また貸し切りなど柔軟な対応も可能なことから、テレビやCMのロケ地としても重宝されています。そうした「私道の有料道路」について、関東圏の代表的なものをご案内しましょう。

鋸山パノラマライン(千葉県鋸南町)

 かつて石材産地として隆盛を誇った千葉県・内房の鋸山(乾坤山)は、海に迫るロケーションから、東京湾や三浦半島、伊豆半島を見渡す景勝地として知られています。この鋸山の山麓から山頂を結ぶ道路が「鋸山パノラマライン(鋸山登山自動車道)」です。

 海岸線から山頂までの距離が短いため、道路は空と海をバックに急坂とヘアピンカーブで距離を稼ぎます。そうした道のつくりから、映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』でチューンドカーが峠道を疾走するシーンのロケ地にも選ばれました。

 通行料金は1000円(普通車、ミニバンやワンボックスは1200円)で、海沿いの国道127号から分岐してすぐの料金所で支払います。なお二輪車の通行は事故防止の観点から禁止となっています。

万座ハイウェー(群馬県嬬恋村)

 JR吾妻線の万座・鹿沢口駅に近い国道406号三原大橋交差点から吾妻川を渡ったところを起点に、標高約1800mの万座温泉までを一気に駆け上がる有料道路が「万座ハイウェー」です。

 道路は緩やかなカーブを中心とした設計とされ、道幅も十分。夏は涼風が心地よい高原ドライブが楽しめます。

 冬は、草津温泉から万座温泉を抜けて長野県の志賀高原に至る国道292号が通行止めとなるため、万座温泉に行く唯一のルートとなります。ただし長い上り坂が続くため、FFやFRはスタッドレスタイヤを装着していても、スタックして上れなくなる可能性があります。タイヤチェーンの携行がおすすめです。

 またその標高の高さゆえ、秋は11月ごろから、春はゴールデンウィークあたりまで降雪の可能性があります。通行料金は1070円(乗用車)で、往復利用の場合、往路復路それぞれ料金の支払いが必要です。

私設有料道路の「銀座」的エリアといえば!

 私設の有料道路だらけ、というエリアもあります。

熱海ビーチライン(静岡県熱海市)

 伊豆半島の東岸に沿って走る国道135号で神奈川県湯河原町を過ぎ、静岡県熱海市に入ってすぐのところにある門川交差点で左に分岐し、熱海市街を目指す約6kmの有料道路が「熱海ビーチライン」です。ルートは国道135号よりもさらに海沿いをとるため、車窓には相模湾の絶景が広がり、晴れた日かつクルマが少ないときの心地よさは特筆ものです。

 ただ、門川交差点手前の標識では左方向を「熱海・伊東・下田 近道」とひときわ強調して表示していますが、「有料道路」の文字がかなり小さく、また標識の色も一般道のような青基調であることから、有料道路と気付かずに進入するクルマも少なくありません。

 通行料金は500円(軽/普通乗用車)です。割引率の大きな回数券も販売され、「100回券」は60回分の料金(3万円)で設定されています。また会員登録が必要な簡易型のETC「ETCX」による通行でも、利用100回あたり最大40回の無料走行が可能な「ビーチラインX割引」を導入しています。

湯河原パークウェイ(神奈川県湯河原町)

 しっとりとした高級温泉旅館が建ち並ぶ奥湯河原から静岡県道20号に接する湯河原峠を結ぶ山岳ワインディングロードが「湯河原パークウェイ」です。

 この道路の特徴は、なんと言っても延々と続く急坂で、起点から終点までの平均勾配は約10%。道路線形は良く、道幅も十分ですが、パワーのないコンパクトカーに多人数乗車で上るのはかなり辛く、逆に下りはブレーキの過熱を防ぐためエンジンブレーキをきちんと使い速度を抑えつつ走る必要があります。

 通行料金は600円(軽/小型/普通車)です。

芦ノ湖スカイライン

 箱根の観光名所のひとつ、芦ノ湖の西岸をカルデラ外輪の稜線に沿って南北に走る道路が「芦ノ湖スカイライン」です。クルマの試乗にちょうどいい適度なカーブが続くこと、見晴らしのいい駐車エリアが各所にあることから、自動車メディアの撮影ポイントとして非常にメジャーです。

 また北へは箱根スカイライン・静岡県道401号を通って御殿場方面へ、西へは静岡県道337号を通って裾野方面へ、さらに南へは国道1号や、静岡県道20号を通って伊豆スカイライン方面に抜けることも可能で、箱根と伊豆のドライブコースを組み立てる上でなくてはならない存在です。

 区間は箱根峠から湖尻峠までの本線と、湖尻峠から芦ノ湖北端の湖尻水門までの湖尻線に分かれ、通行料金は本線が800円(軽自動車等、普通車)、湖尻線が100円(同)となっています。

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熱海ビーチラインは2021年に土砂災害で国道135号が通行止めとなった際、無料開放を行った。このときは全車ハザード点灯、30km/h以下で走行(乗りものニュース編集部撮影)。

 これらの道路は「私道」であることから、一般有料道路での「償還」、つまり通行料金で事業費をまかない、その後に無料開放する仕組みはとられていません。

 私道といっても不特定多数のクルマが利用できるため、法律上は道路交通法が適用される「みなし公道」とされ、速度取締りなどが行われる可能性もあります。交通ルールを守り、ドライブを楽しみましょう。

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