そこにモノレール?立体道?「南多摩尾根幹線」4車線化後も“中央分離帯がやけに広い”ワケ

多摩ニュータウンを貫く「南多摩尾根幹線」の4車線化事業が進んでいます。広大な幅員が確保されながら、その一部しか使われていない状況がようやく変わりつつありますが、4車線化後もやはり“広い中央分離帯”が残ります。

広い用地に「ただの山道」南多摩尾根幹線道路

 多摩ニュータウンの南部を東西に貫く「南多摩尾根幹線道路」の4車線化工事が進んでいます。広大な用地が確保されながら、ほとんど活用されずに、暫定2車線のまま渋滞が慢性化している「未完の幹線」がようやく変貌しつつあります。

Large 240827 onekan 01

尾根幹と鎌倉街道との交差部では陸橋の工事が進む。今回の4車線化で唯一の立体交差箇所(乗りものニュース編集部撮影)。

 南多摩尾根幹線は多摩川に架かる多摩川原橋(調布市)から町田市に至る16.6km。うち稲城市から多摩市にかけての9.5kmは、標準43m、最大で60m近い幅員が確保されながら暫定2車線のまま、未活用の空間が長らく放置状態となっていました。

 完全に容量不足となっている現状を変えるべく、2020年から順次、全線の4車線化が進んでいます。稲城市内には1.8kmのトンネルも新設されます。

 現在の暫定的な車道は、本線に対する「側道」になるところもあれば、道路の形態が大きく変わる箇所も。

 例えば、2024年7月末に工事説明会が行われた、JR武蔵野線をまたぐ稲城市の「竪谷戸大橋」。ここは現在の2本の橋のあいだに4車線分の橋が新設され、既存の橋は歩行者・自転車道となり、クルマが通らなくなります。

 58mの幅員がある稲城市向陽台地区も、中央に4車線が新設され、現在の車道は、片側約19mもの幅を持った「歩道・植樹帯等」に取り込まれる形となるのです。

 ただ、4車線化後もなお、南多摩尾根幹線には中央分離帯が広く残る箇所が少なくありません。

 たとえば、小田急電鉄の車両基地がある谷をまたぐ多摩市の「唐木田大橋」。ここは事業区間の終端に隣接する箇所で、すでに4車線となっていますが、2本の橋の間が広く空いたままになります。

 こうしたスペースに将来、何かが造られるのでしょうか。

「モノレールを通す」のか?

 南多摩尾根幹線の本線部分はもともと、自動車道や掘割構造といった、自動車交通の円滑性を考慮した規格の高いものとして計画されてきましたが、住民の反対など紆余曲折を経て「平面4車線」構造に落ち着いた経緯があります。

 ただ、今回の4車線化で、中央の空間を活用して車道を立体交差化するのは、4車線の鎌倉街道をまたぐ1か所のみです。

 他方、ここで思い出されるのが、「多摩都市モノレール」の延伸構想です。

 多摩地域を南北に結ぶ多摩都市モノレールは現在、北は上北台駅から箱根ケ崎駅(瑞穂町)、南は多摩センター駅から町田駅まで、両方向へ延伸する事業が具体化しつつありますが、本来の路線構想はもっと壮大。多摩センター付近から西は八王子市まで、東は稲城市を経て多摩川を越え、府中市の是政(西武多摩川線)に至る路線構想があります。

 うち八王子延伸は、2016年に国の交通政策審議会で「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」に位置付けられ、八王子市が整備促進に向けた取り組みを見せています。この八王子ルートは唐木田、南大沢経由とされており、南多摩尾根幹線の用地を使うことが妥当とも思えます。

 広い中央分離帯は、どのような活用を想定しているのか。東京都の南多摩東部建設事務所に聞くと、次のような回答でした。

「中央分離帯の活用法は、今は特に決まっていません。幅員が広いので、車道や歩道、自転車道などを沿道側から割り振っていった結果、一部は中央に空間が残ることとなりました。唐木田大橋も、現状の橋で必要な機能が賄うことができます」

Large 240827 onekan 02

JR武蔵野線をまたぐ竪谷戸大橋。4車線化後、いまの橋は歩行者・自転車用となる(乗りものニュース編集部撮影)。

 ちなみに、平面4車線構造となった南多摩尾根幹線ですが、現状で重視されている機能の一つが、自転車の走行空間だそう。

 まとまった距離があり起伏の大きい南多摩尾根幹線は、ロードバイクの愛好者に有名です。現在進めている整備形態でも高速走行する自転車を考慮しているといいます。「自転車については充実した走行空間になるだろう」(南多摩東部建設事務所)とのことです。

ジャンルで探す