どうしてこうなった…? 都内「不条理な自転車レーン」 けっきょく路駐パラダイス “人の列に突っ込む構造”も!?

原則「自転車は車道」の方針が打ち出されて以降、都内では自転車の走行空間整備が進められてきましたが、なかには、本当に自転車を考えたものか疑わしい構造も。今後改善されるのでしょうか。

それは本当に自転車を考えたものなのか?

 東京都内では、車道や歩道の「自転車専用通行帯」や、車道における自転車の通行場所の目安となり、ドライバーへの注意喚起を目的とした「矢羽根型路面表示」の整備が進んでいます。これらは2016年に国土交通省道路局と警察庁交通局が打ち出した「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」に基づいた施策です。

 同ガイドラインは、2012年に策定された同名のガイドラインについて「自転車は『車両』であり車道通行が大原則」という考え方を踏まえ改定したもので、自転車ネットワーク計画策定、自転車通行空間の整備、すべての道路利用者への自転車の通行ルールの徹底など、ハード、ソフトの両面から取り組むべき課題、実施すべき事項が記載されています。

 ただこうした取り組みにより整備された自転車通行空間においても、「本当に自転車が安全に通行できる環境を考えて整備したのか」、疑わしい場所があるのも事実です。ここではそうした状況を紹介し、東京都内で自転車を利用する人に注意を促したいと思います。

Large 240527 lane 01

板橋区内、首都高高架下のコンクリートバリア。自転車の通行帯を途切れさせている(植村祐介撮影)。

突然消える自転車専用通行帯

 東京都板橋区を貫く首都高5号池袋線の同区清水町付近から前野町までの高架下は、暗渠となった出井川に沿って区道2693号が走っています。

 この区道には「最大幅1.7m」の規制が設けられて、西行き、東行きとも2か所ずつ、車道を狭めるようにコンクリートのバリアが“ハ”の字型に設置されています。そのためか、一部で設定されている自転車専用通行帯が途切れ途切れになり、走りにくい状態です。

 自転車専用通行帯のない部分には、道路左側への路上駐車を抑制するため、道路の中央分離帯(首都高高架の橋脚側)に導流帯(ゼブラゾーン)があり、残された路肩までの部分を自転車とクルマが共有する形です。

 もしバリアが右にオフセットされ、全線にわたり自転車専用通行帯が設けられていたら、より安全で走りやすい道になると思われるだけに、残念です。

交差点部分でジグザグ走行強要!?

 同じ板橋区の首都高5号池袋線高架下は、環八高速下交差点(同区)以西が都道446号となり、2017年以降、歩道上に自転車専用通行帯が整備されています。

 ところがこの自転車専用通行帯は、脇道との交差点のたび、ガードパイプにより横断歩道に併設された自転車横断帯へと誘導されます。

 ガイドラインに示されているのは「自転車動線の直進性を重視し、一方通行の自転車道、自転車専用通行帯のいずれの場合も、自動車と同じ方向に通行する自転車の交差点部における自転車通行空間は、直線的に接続することを基本とする」で、ここは「双方向の自転車専用通行帯なのでこの“基本”を守らなくてもいい」という考え方なのかもしれませんが、進路を変更しての交差点進入と対向自転車との行き違いはかえって危険に思えてしまいます。

 わざわざお金をかけて整備したわけですから、「安全な通行空間の確保」という基本に立ち返ってほしかったと思います。

突然終わる歩道の自転車通行帯 そこにあるのは…

 歩道側の自転車通行帯にも、ちょっとヘンな箇所があります。

自転車通行帯を走ると、バス停に突入?

 都道317号、通称「山手通り」は、地下を走る首都高中央環状線「山手トンネル」の整備にあわせて拡幅工事が行われ、広くなった歩道上に自転車専用通行帯が設置されました。しかしその工事の時期がガイドライン策定以前だったためか、自転車と歩行者の動線とが交錯し、かえって危険を生じると思われるところもいくつかあります。

 その代表例が、豊島区の要町バス停付近です。このバス停の前後では、そこそこ広い歩道上の車道側に自転車通行帯が整備されていますが、バス停の停車位置(バスベイ)が歩道に食い込むように設置されているため、歩道がそのぶん狭くなり、自転車通行帯の延長線上がバス停に並ぶ利用客の列になっているのです。

 バス停がある部分は、ほぼ2車線ほどの幅がある中央分離帯を削って車道にするなどして歩道幅を確保し、自転車とバス待ちの利用客との交錯を防ぐような手立てはなかったのかと考えてしまいます。

自転車通行帯は「便利な路駐スポット」

 自転車専用通行帯があるにもかかわらず、かえって自転車での通行が危険になっている残念な道路もあります。文京区の東京メトロ茗荷谷駅がある国道254号、通称「春日通り」もその一例です。

 このエリアは春日通りに沿って商店や飲食店が建ち並ぶ繁華街になっています。道路の路肩側に自転車専用通行帯が整備されていますが、その通行帯部分が荷下ろしするトラックなどにとって「クルマの通行の邪魔にならない便利な“荷下ろし場”」になっているのです。

 この区間の歩道には「普通自転車歩道通行可」の標識がなく、「自転車は車道」という原則から、自転車はこれら路上駐車のクルマを右から追い越して走ることになり、クルマの動線と交錯し非常に危険です。もちろん「やむを得ない場合」としての歩道通行は認めらますが、実際には歩行者が多く、安全を考えるなら「押し歩き」が精一杯です。

 こうしたエリアは都内にいくつもありますが、車道と自転車通行帯との間をラバーコーンで仕切るなど、物理的な安全対策が必要ではないかと思われます。

Large 240527 lane 02

自転車通行帯は路駐スポットに。春日通り(植村祐介撮影)。

※ ※ ※

 以上、都内の自転車専用通行帯が抱える課題の代表例を4つご案内しました。じつは冒頭に挙げた「ガイドライン」は2025年春の改定に向けて現在見直しが進められており、3月にはその「改定版(案)」へのパブリックコメントも実施されました。

 その改訂版(案)では「自動車専用通行帯における路上駐停車対策の強化」など、これら課題への対応も打ち出されていますが、それが机上の話で終わることのないよう、しっかりとした対応をお願いしたいと思います。

ジャンルで探す