自民総裁選、決選投票は過去に5回 〝逆転劇〟で宰相の座つかんだ安倍晋三氏と石橋湛山氏

27日の自民党総裁選は、1回目の投票で9候補の得票がいずれも過半数に達せず、石破茂元幹事長(67)と高市早苗経済安全保障担当相(63)の上位2人による決選投票にもつれ込んだ。決選投票は議員票368票と都道府県連に割り振られた47票の計415票で争われ、議員票と党員・党友票を同数とした第1回投票より議員票の重みが増す。決選投票が行われたのは過去44回行われた総裁選のなかで5回ある。そのうち、2回で1回目投票の1位と2位が決選投票で入れ替わる逆転劇が起きた。憲政史上最長の政権を築いた安倍晋三元首相もその一人だ。

地方票で圧倒も議員票で巻き返し

野田佳彦氏(現・立憲民主党代表)が率いた民主党政権下の平成24年9月、野党時代の自民総裁選には安倍氏に加え、石破茂氏、町村信孝氏、石原伸晃氏、林芳正氏の5人が立候補した。1回目の投票では党員票で過半数の165票を得た石破氏がトップに立った。

だが、議員票のみで行われた当時の決選投票では、他陣営と連携していた安倍氏が108票を獲得し、「脱派閥」を掲げた石破氏を19票差で下した。決選投票は昭和47年以来40年ぶりで、2位候補の逆転劇は56年ぶりのことだった。

安倍氏は野党総裁として臨んだ同年12月の衆院選で自民を大勝に導いた。また、地方から多くの支持を集めた石破氏は幹事長に起用された。

「2・3位連合」で石橋政権に

昭和31年12月の総裁選では、石橋湛山、岸信介、石井光次郎の3氏が立候補した。1回目の投票では最大派閥を率いる岸氏が223票を獲得し、首位に立つも過半数には届かなかった。

決選投票で石橋、石井両陣営が「2・3位連合」を組み、岸氏は石橋氏に7票差で逆転負けを喫した。岸氏の孫である安倍氏が逆転劇で再び総裁になったのとは対照的だが、石橋内閣は短命に終わり、翌32年3月の総裁選で岸氏は圧勝、総理・総裁の座をつかみ取った。

1票差で決選投票に

岸田文雄、河野太郎、高市早苗、野田聖子の4氏が争った令和3年9月の前回総裁選も決選投票が行われた。上位2人は256票の岸田氏と255票の河野氏。両氏の差は1票差だったが、決選投票では岸田氏が257票を獲得し、170票の河野氏を圧倒した。ただ、都道府県連票では河野氏が47票のうち39票を得て、岸田氏に大差をつけた。

昭和47年7月の総裁選は、それぞれ派閥を率いる三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫各氏のいわゆる「三角大福」が、独自の政策を旗印に激しく主導権争いを展開した。政敵である田中、福田両氏が決選投票に進出するが、田中氏が福田氏との差を広げる形で首位を守り、総裁に選出された。福田氏が宰相の座に就くのは4年半後のことだ。

また、岸氏の後継を選ぶ昭和35年7月の総裁選も決選投票が行われた。1回目の投票で1位になった池田勇人氏が決選投票でも石井氏を下し、逆転劇を許さなかった。


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