深圳の日本人男児殺害で「中国の危険情報引き上げを」 松原仁氏、反日教育のリスク指摘

中国・広東省深圳の日本人学校に通う男子児童(10)が刺殺された事件を受け、松原仁元拉致問題担当相(無所属)は21日、産経新聞の取材に、政府は中国の渡航・滞在の「危険情報」を、現状のレベルゼロから引き上げるべきとの考えを示した。「中国で暮らす日本人は反日教育のリスクを抱えている。主体的にわが国が対抗できる措置にもなる」と語った。松原氏はかねて中国への渡航危険情報の引き上げを主張していた。

中国では6月にも江蘇省蘇州市でスクールバスを待つ日本人母子が刃物で切りつけられる事件が発生。日本国内でも靖国神社(東京都千代田区)への相次ぐ落書き事件、NHKラジオ国際放送で中国籍の男性スタッフが尖閣諸島(沖縄県石垣市)を「中国の領土」と主張する問題などが続いている。

松原氏は一連の事件について「中国の教育現場で行われている『反日教育』に起因しているだろう。中国メディアも男児殺傷事件をほとんど報じない。『愛国無罪』といわんばかりだ」と指摘。こうした事情を、日本が渡航危険情報を引き上げる理由に挙げることで、習近平体制に対応の改善を促すべきとの考えも示した。

男児が犠牲になったことについては、「10歳の幼さで命を失ったことは無念だ。反日教育による国家テロの悲惨な犠牲者といえる」と述べ、「最低限でも渡航レベルを引き上げないと、国家としての姿勢を見失っているといわざるを得ない」と強調した。

松原氏は昨年5月、衆院外務委員会で林芳正外相(当時)に対し、中国で反スパイ法違反容疑などで拘束される邦人が相次いでいることを受け、「中国全域は少なくとも渡航危険リスクをレベル1にすべき」と主張したが、結果的に対応が見送られていた。

外務省によると、危険情報は渡航・滞在に当たり特に注意が必要な国・地域について発表する情報で、レベル1「十分注意」からレベル2「不要不急の渡航自粛」、レベル3「渡航中止勧告」、レベル4「退避勧告」まで計4段階ある。

中国の危険度は、新疆ウイグル、チベット両自治区を除き「レベルゼロ」で、外務省は「現段階で見直しの検討はしていない」という。インド全土はレベル1以上、ロシアはレベル2となっている。

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