自民総裁9候補、福島で演説 東日本大震災からの復興、食品輸入規制の解決など訴え

自民党は15日、福島市内で総裁選(27日投開票)の候補者9人による演説会を行った。各候補は、東日本大震災からの復興や東京電力福島第1原発処理水を巡る風評被害などについての所見を述べ、被災地に寄り添い復興を進める姿勢を強調した。漁業関係者からは継続した対策を求める声が上がる一方、「具体的な政策の話が聞きたかった」との感想も漏れた。

「非科学的な理由によって(輸出できない)水産物。日本全国の水産業を国家として応援していかなければならない。首相になれば中国政府と直接向き合って、この問題を解決していく」

最初に演説した小林鷹之前経済安全保障担当相は、処理水の海洋放出と中国による日本産食品の輸入規制に言及し、問題の解決に向けた意気込みを強調した。

小泉進次郎元環境相も「処理水が放出され、もう1回風評被害に襲われるのかと、多くの皆さんが不安になったと思う。中国の問題も含め、私が首相のときに決着がつくよう取り組みをさらに加速したい」と訴えた。

上川陽子外相や河野太郎デジタル相は外交現場での福島産食材のアピールに言及。林芳正官房長官も避難住民の帰還に向けた取り組みを重点的に進める考えを示すなど、全ての候補者が福島の抱える課題を取り上げた。最後に演説した高市早苗経済安保担当相は「復興には時間がかかるけれどやり遂げる。その思いは(候補者9人)みんな一緒だ」と語った。

福島では処理水放出に伴う風評被害への懸念はなお根強い。県内の漁業関係者は「沿岸漁業に限れば、水揚げ量はまだ震災前の4分の1程度。誰が総裁になっても、今後数十年かかる廃炉まで、責任をもって対応してほしい」と求めた。

党を挙げて復興をアピールする演説会となった一方で、複数の聴衆から「地元の話が多かったが、国家観や具体的な政策の話も聞きたかった」(郡山市の男性会社員)といった声も出た。

(長橋和之)


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