「県政運営に支障」維新、党勢退潮で転換 斎藤知事に辞職要求 衆院選警戒も

兵庫県議会各会派が斎藤元彦知事への辞職要求で足並みをそろえる中、唯一判断を保留していた第2会派の日本維新の会の県議団が9日、斎藤氏に辞職を申し入れた。3年前の知事選で自民党とともに斎藤氏を推薦し、「知事与党」を自任してきた維新。調査特別委員会(百条委員会)設置に当初反対するなどの対応は「斎藤氏擁護」と受け止められてきた。だが、早期の衆院選が予想される中、党勢の退潮傾向があらわになり、方針転換を余儀なくされた格好だ。

「知事の職を辞して、民意を問い直すことを要請します」

9日午後、維新県議が服部洋平副知事に手渡した申し入れ書は、斎藤氏の一連の対応を「議会や県民が十分に納得できるものとは言い難い」と評し、「実際に県政運営に支障が生じ始めている」と指摘。これまで優先するとしてきた事実解明は別として、県政の停滞を招いた結果責任を問う内容となった。

9日、大阪府庁で記者団の取材に応じた維新の吉村洋文共同代表(大阪府知事)は斎藤氏に対し7日に電話で「間違っているところは認めて辞職すべきだ」と進言したことを明らかにした。

ただ斎藤氏の疑惑追及に維新は慎重な姿勢を取ってきた。6月には百条委設置案に反対。県議会では斎藤氏の県政運営を持ち上げ、告発文書を「怪文書」と表現した。百条委でも、斎藤氏の主張に寄り添うような質問が目立つ。

9日、国会内で記者会見した維新の藤田文武幹事長は「われわれは一貫して、無条件に擁護するという立場でも間違った情報でおとしめようという立場でもない。是々非々の立場で取り組んできた」と強調。ただ、辞職要求については「方針転換と言わざるを得ない」「批判は真正面から受けたい」と認めた。

背景にあるのは最近の党勢だ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、問題発覚前の3月中旬で4.4%あった維新の政党支持率は2.6%(8月24~25日)に下落。8月25日投開票の大阪府箕面市長選では地域政党「大阪維新の会」の現職が落選した。首長選で維新の現職が敗北するのは初めてで、党勢の退潮を印象付けた。

兵庫県議会の維新会派は所属21人のうち15人が1期目。問題が発覚した当初、斎藤氏を知事選で支えた会派役員らが慎重な姿勢を打ち出したことに多くの議員が引きずられたという。

だが、問題が大きく報じられる中、有権者から苦言を呈されることも多くなった。維新関係者は「方針転換するなら、もう少し早ければよかった」とこぼした。

各党、次期候補選び本格化へ

斎藤元彦兵庫県知事の疑惑を巡り9日、県議会第2会派の日本維新の会の県議団が辞職を要求し、自民党など主要4会派が「退場」を申し入れる見通しとなった。現時点で斎藤氏は応じない構えを見せている。19日開会の県議会9月定例会で不信任決議案が可決した場合も、斎藤氏が議会を解散する選択肢が残っており曲折が予想される。

これまで斎藤氏は進退を問われるたびに「県政を前に進める」などと述べ、辞職を否定している。12日には最大会派の自民党とともに第3会派の公明党と第4会派のひょうご県民連合が辞職を要求する予定だが、応じないとみる議会側は不信任案の提出を視野に入れている。

不信任案は、本会議に出席した議員の4分の3が賛成すれば、可決される。県議会では議長を含む全86議員が出席した場合、65人の賛成が必要。自民、維新、公明、県民連合の4会派を合わせれば80人に達し、いずれも賛成すれば可決する。

仮に可決した場合、斎藤氏には辞職か、10日以内に議会を解散するかの選択肢が残され、解散しない場合は失職する。

議会解散となっても、選挙後初の県議会で不信任案が再提出され、出席議員の過半数の賛成で可決すれば、斎藤氏は失職する。各党は、次期知事選の候補者選びや選挙協力を巡る議論や調整を本格化するとみられる。(木津悠介、宇山友明、倉持亮)

決然とした態度取れず

白鳥浩法政大教授(現代政治分析)の話

兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑を巡っては、県議会の調査特別委員会(百条委員会)が年末に結論を出す。それまで県政は停滞し、県民生活に大きな支障が生じるだろう。県議会の各会派は斎藤氏に対する辞職要求に動いているが、疑惑が発覚した3月から半年近くにわたって責任追及の態度を明らかにしなかった日本維新の会側には一定の責任があるだろう。

維新は本拠地・大阪の首長選でも現職候補の敗北など厳しい結果が相次ぎ、党勢の退潮傾向が際立つ。県議会の9月定例会前に辞職要求をしたのも、逆風下での早期の衆院選を警戒していることがうかがえるが、斎藤氏には出直し知事選の実施を求めていて、決然とした態度を取れていない。保身といわれても仕方ないのではないか。

県政への信頼が損なわれている現状では、斎藤氏に一度退場してもらい仕切り直すしかない。辞職しないなら、主要会派は粛々と不信任決議案を提出し、可決すべきだろう。(聞き手 藤谷茂樹)

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