知事による初の議会解散はあるか 兵庫知事問題は重大局面へ 市町では過去に解散事例も

兵庫県の斎藤元彦知事に対する不信任決議案が19日に可決された際、斎藤氏が議会解散を選択するかが焦点となっている。都道府県知事への不信任案が可決されたのは過去に4例。いずれも失職か自ら辞職しており、斎藤氏が議会を解散すれば初となる。斎藤氏は解散に含みを持たせるが、不信任に至る経緯や選挙費用の面から、専門家は「議会解散は慎重に判断すべきだ」と指摘する。

「法律に基づく決議なので、それに沿って自分としてどのように対応していくかをしっかり考えていきたい」

斎藤氏は17日、記者団の取材に、不信任決議を受けた場合の対応についてこう答えた。「これからも改革を続けていきたい」とも述べ、辞職や失職を選択しない考えをにじませた。

不信任決議は地方自治法で規定されており、不信任を受けた首長は議会を解散できる。それぞれ住民から直接選ばれる首長と議会による二元代表制を採用する地方自治では、首長の失職につながる議会側からの不信任への対抗手段として、解散権が認められている。

都道府県知事に対する不信任案が可決されたのはこれまでに4件。いずれも知事が辞職か失職を選び、議会が解散されたことはない。

このうち、昭和51年の岐阜県・平野三郎氏と平成18年の宮崎県・安藤忠恕(ただひろ)氏は、汚職や談合での刑事責任を問われる事態となっており、いずれも可決後に辞職。その後の知事選へも出馬しなかった。平成15年の徳島県・大田正氏は、大型公共事業の見直しなどに議会が反発し、不信任案が可決された。大田氏は、失職して出直し選挙に臨んだが、落選した。

不信任を受けた後も知事を続けることができたのは、平成14年の長野県・田中康夫氏だけ。「脱ダム宣言」を打ち出した田中氏と対立した県議会が不信任案を可決。田中氏は失職したが、出直し選挙で圧勝した。

一方、市町では不信任を受けた首長が議会解散を選択するケースも。

兵庫県加西市で平成19年、中川暢三氏への不信任案が可決。中川氏は議会を解散したが、改選後の市議会でも不信任案が可決され失職。出直し選で再選を果たした。鹿児島県阿久根市では21年、市政運営が独善的などとして竹原信一氏の不信任案が可決。竹原氏は市議会を解散し、再度不信任を受け失職したが、出直し選に勝利した。

斎藤氏は知事として初の議会解散に踏み切るのか。今後、知事選には18億円程度の費用が見込まれるが、県議選も行われればさらに16億円程度が必要となる。

こうした点を踏まえ、近畿大の上﨑哉教授(行政学)は「議会解散を選択しても再び不信任を受け、失職する可能性は高く、知事の延命に過ぎなくなるのではないか」と指摘。「多額の税金をかけたり、さらに県政が停滞したりするだけの理由があるのかどうかを判断し、選択していくべきだ」としている。(安田麻姫)

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