早期発見のカギ?がん検診に「PET検査」 専門医に聞くメリット・デメリット【ひるおび】
がん検診のひとつとして「PET検査」が注目されています。
痛みが少なく全身を一度に検査できますが、費用面などデメリットも。
臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医の寺嶋毅教授に詳しく聞きます。
「がん」早期なら9割が治る可能性も
日本人の2人に1人が「がん」になるといわれています。
一方、検診で早期発見をすることで、早期がんであれば92.8%の人が治るとされています。
臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医
東京歯科大学市川総合病院 寺嶋毅教授:
早期に発見すれば治る可能性が高いということと、より早くより小さく見つかれば手術になった場合に取る範囲も少なくて済みます。
安全に手術が受けられ、その後の体への影響も少ないということになります。
コメンテーター 朝日奈央:
受けたいけど値段的に高いから、いつかいつかで先延ばしになっちゃってる。
コメンテーター 土屋礼央:
6年ほど前に妻が胃がんになって、胃を全部取ったんですよ。
「1か月見つかるのが遅かったらもう生きてない」って言われたから(見つかって)本当によかったなと。それからは意識して健康診断や人間ドックに行ってるんですけど。
早期発見のカギ?「PET検査」
早期発見のカギになるのではないかといわれているのが、「PET(ペット)検査」。
元々、がんと診断されてから転移や再発を調べる際に行なわれる検査ですが、人間ドックなどで任意で行なう検査のひとつとして注目されています。
がん細胞は正常な細胞と比べて、ブドウ糖をたくさん取り入れるという性質があります。
PET検査ではブドウ糖に似た検査薬を投与し、薬剤の集まり具合を調べることでがん細胞の有無や大きさを判断します。
PET装置で撮影された画像では、検査薬が集まる場所は赤く表示されます。例えばすい臓に集積があればすい臓がんの可能性があると診断されます。
また、脳・腎臓・膀胱が赤く表示されますが、これは元々ブドウ糖が集まりやすい場所のためです。
「PET検査」実際に体験
PET検査はどのような流れで行なわれるのでしょうか?
ひるおびの飯田麻菜美リポーターが、横浜市のゆうあいクリニックで体験しました。
≪検査の流れ≫
▼受付で検査に関する注意事項や、5時間前から食事を抜いているかなどの確認
▼身長・体重・血圧などの基本検査
▼PET検査の薬を投与
飯田リポーター
「実際にお薬を投与していただいたんですが、針を刺す感じは点滴とか採血のときと同じような感覚ですね。チクッとした若干の痛みはありますけど全く違和感はないです。」
投与の後、検査薬を全身に行き渡らせるため安静室で1時間休みます。
このとき、読書をしたりスマートホンを操作すると、脳や筋肉に検査薬が集まり検査結果に影響が出てしまうので、目を閉じてリラックスすることが重要です。
▼PET‐CT装置で全身を撮影
PET‐CT装置とは、PETとCTが一体化した装置です。
PET画像とCT画像の両方をほぼ同時に撮影することが可能で、2つの画像を組み合わせることで、診断能力が向上します。
検査後の飯田リポーターはー
「できるだけ何も考えない方がいいということだったので、無の状態で目を閉じていました。音楽とか映像とかがなかったとしても、体に対する負担というのは全くなかったです。
若干機械の音がしますけど、特に敏感な方じゃなければ気にならない程度かなと思います。」
▼診察室で撮影したPET‐CT画像の説明を受ける
飯田リポーターの検査結果は、異常なし。
ただ、数か月前に脱臼した左肩に少し炎症があるのがPET検査で分かりました。
ゆうあいクリニック 吉田啓介院長
「悪性腫瘍、がん以外ににも集まる検査ですので、肩の炎症も鋭敏に見つけることができます。」
飯田リポーター
「心当たりのある部分に色がついていてよかったです。全くわからないところに色がついているとちょっと不安になりますけど、お話を聞いて理解しました。」
こちらのクリニックでは、受付から約3時間で全ての検査を終えることができました。
総合的な検査結果は、後日郵送で届きます。
飯田リポーター
「まずは結果を聞いて、特に大きな異常はないということだったのでほっとしました。体に負担があるのかなとちょっと不安だったんですけど、負担が少ないわりにすごく精密な結果が出るということに驚きました。」
PET検査のメリット・デメリット
【メリット】
◆痛みが少ない
◆体全体を一度に調べられる
◆がん検診にないものをカバー
東京歯科大学市川総合病院 寺嶋毅教授:
とても優れた検査であることは確かです。
痛みを感じるのは最初の注射のときぐらいで、それに比べて体全体を一度に調べられるということと、がん検診にない他の検査では難しい、すい臓がんや子宮体がんも見つけることができるというメリットがあります。
【デメリット】
◆値段が高い
費用は10万円前後
がんと診断されて、転移や再発を調べる場合は保険適用ですが、がん検診としての検査は自費になります。
◆発見しにくい「がん」もある
見つけやすい⇒肺がん・すい臓がん・大腸がん・乳がん・子宮体がん
見つけにくい⇒胃がん・膀胱がん・前立腺がん・腎臓がん
◆過剰診断の可能性
その他の原因の炎症と、がんの区別が難しい
寺嶋毅教授:
例えばPET検査でがんの疑いがあって、その後いくつかの検査を受けて結局がんでないということもありますから、その場合には結果的に不必要な検査だったということになります。
もう一つ、亡くなった後に見つかってその人の寿命とか生活には影響を及ぼさなかったという‟おとなしいがん”の場合でも、PET検査で見つかったら手術しようということになる。結果的には不必要だった処置ですから、余分な身体的・精神的な負担を招くということも時にはあります。
江藤愛アナウンサー:
今年の初めに人間ドックを受けに行ったんですけど、行ったところにはPET検査はなかった。病院によってはPET検査がないところもあるから、そういう選択も自分の中で考えた方がいいということですよね。
寺嶋毅教授:
人間ドックでは、特にがんに関わる項目はオプションになりますから、どの検査にどういうメリット・デメリットがあるのかを知って、受けたいとなったらオプションで受けられるところを選ぶのがいいと思います。
コメンテーター 土屋礼央:
例えばPET検査を5年に1回とか受けて、区や市の検診の間にミックスしてもいいんですか?
寺嶋毅教授:
そういうやり方もいいと思います。
(ひるおび 2024年4月10日放送より)
04/19 16:00
TBS NEWS DIG