お菓子の名前にはなぜ「ぱぴぷぺぽ」が多い?言語学者が教える「思わずドキッ」とする秘密

お菓子の名前に「ぱぴぷぺぽ」が多いのはなぜ?

22408658 m

※写真はイメージです

---------------------------
――新たに生まれる一方、失われる言葉や音もあるそうですね。たとえば昔の「ぱぴぷぺぽ」という音は、江戸時代以前はほとんど使われていなかったそうですが、今ではあちこちで使われています。これはどういう現象なのでしょうか?
---------------------------

川原 すごく簡略化した言い方になってしまいますが、日本語はかつて「ぱぴぷぺぽ」という音を失って、それ以来「ぱぴぷぺぽ」の音を使わなかったんです。「っ」や「ん」のあとやオノマトペでは残りましたが。ですが、明治時代になって一気に外国のものが輸入されるようになって、「ぱぴぷぺぽ」の音を含む単語が日本に入ってきました。パン、ペン、ポテトなどがそうですね。だから「ぱぴぷぺぽ」の音を復活させて使わないわけにはいかなかった。

そういうすごく現実的な事情から、「ぱぴぷぺぽ」が再び使われるようになりました。

独特の響き・意味合いを持つ「ぱぴぷぺぽ」

川原 それから「ぱぴぷぺぽ」には独特の響きや意味があります。外国っぽい響きだし、かわいらしいイメージもある。小学生が発見してくれたように、お菓子の名前にもパピコとかポッキーとか、「ぱ行」が多い

そういった意味を表すために「ぱぴぷぺぽ」は便利だったから、今のように「ぱぴぷぺぽ」が定着したと思うんです。

人間には、「特定の意味を特定の音で表現したい」という欲求があるんでしょうね。

---------------------------
――そうやって「ぱぴぷぺぽ」が復活したんですね。
---------------------------

「っ」+「らりるれろ」で感じる“イタリアっぽさ”

川原 これは本に書いたことではないんですが、「っ」の後に「らりるれろ」が来ることも和語にはないんです。「っ」+「らりるれろ」って実は、発音が非常に難しいんです。

でもイタリア料理のメニューを見ると、ヴァニッリア(バニラアイス)、ソッリオラ(舌びらめ)というように、「っ」+「らりるれろ」がすごくよく出てくる。

---------------------------
――言われてみれば、イタリア料理には「っ」+「らりるれろ」があります!
---------------------------

「っ」+「らりるれろ」は他の文脈では使われないからこそ、あえて使うとイタリア感が出るんだと思うんです。

これも、「ぱぴぷぺぽ」と同じように「特定の意味を特定の音で出したい」という欲求にもとづいて使われているんだろうな、と感じています。

---------------------------
――誰もがそういう特別感を感じながら言葉を使っているんですね!
---------------------------

(解説:川原繁人、聞き手・文:大崎典子、構成:マイナビ子育て編集部)

著書『なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える』

なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える

(2023/11/22時点)

91s+ckuxywl. sl1500

¥ 1,870
この記事の監修者
川原 繁人(言語学者)
1980年生まれ。慶應義塾大学言語文化研究所教授。カリフォルニア大学言語学科名誉卒業。2002年に国際基督教大学卒業後、2007年マサチューセッツ大学アマースト校にて博士号(言語学)を取得。ジョージア大学助教授、ラトガース大学助教授を経て現職。専門は音声学・音韻論・一般言語学。著書に『フリースタイル言語学』(大和書房)、『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む』(朝日出版社)、『言語学的ラップの世界』(東京書籍)など。娘2人の父でもある。『なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が好評発売中。

大崎典子

この記事の執筆者
大崎典子

ジャンルで探す