バド協会は「多くの団体が渡航費の一部負担をお願いしている」、テレビが報じない日本選手団の“金欠苦境”

「選手村にはホテルのような清掃サービスがあるだろうと多くの人が期待するかもしれないが、ここではトイレットペーパーを手に入れるため、選手が店まで歩いていって自分で購入しなければならない」

自身のインスタグラムにそう投稿したのは、オーストラリアの女子テニス代表、ダリア・サビル選手(30)。

7月27日(日本時間)に華々しく開会式を執り行ったパリ五輪。開催にあたってコスト削減が重視されていたため、選手村も快適とは言い難いという。

「フランスの現地新聞が、選手村のメインレストランで提供された料理が少なく、選手から苦情が寄せられたという記事を報じています。

さらに日本代表の選手たちは開催前から経済的な“ハンデ”を背負っている状況なのです。

7月25日発売の『週刊文春』は《競泳・池江&瀬戸に「パリ渡航費は自腹」のドケチ連盟》といった見出しの記事を報じています。池江璃花子(24)、瀬戸大也(30)両選手が、コーチの指導を受けているオーストラリアからフランスに渡航したところ、水泳連盟から“自腹を求められた”という内容でした」(スポーツ紙記者)

日本水泳連盟の強化体制に対しては、“代表合宿の日数が減少している”など、以前から選手たちの不満が高まっていたという。

昨年8月8日、リオデジャネイロ・東京五輪に出場した五十嵐千尋選手(29)がXに次のようなコメントを投稿したことが話題を集めた。

《(世界選手権福岡大会は)かなり厳しい結果です。原因のひとつとしては、日水連が選手に対してアスリートファーストではなくなってしまったからだと思います。選手が不満を持っていれば、結果を出せるはずがないです》

同様の声が相次いだため、その後、水泳連盟は選手やコーチ陣、事務局のスタッフらでミーティングを開いたというのだが……。

池江・瀬戸両選手の渡航費用について水泳連盟に取材すると、担当者は次のように答えた。

「選手団が東京~パリ間では、“指定したフライトに搭乗する”ということは連盟の事業計画となっています。その計画以外に、別のフライトでパリに入るのであれば、ご自分でチケットをとり、ご自分で精算していただくという流れです。ただ最終的に、選手の交通費の精算がどのような形になるのか、未定の部分もあります」

所属する団体の強化体制に不満を抱いていたのは、競泳選手ばかりではなかった。

「今年3月、日本バドミントン協会は、日本代表の強化費を約8億円から約3億円に削減する案などを盛り込んだ’24年度予算を公表しました。

’22年に元職員の横領、その隠蔽といった不祥事が発覚して国や日本オリンピック委員会からの強化費が減額されていたうえ、円安により遠征費も増加し、経済状況が悪化していたのです。

今年6月、日本代表の朴柱奉監督は、パリ五輪に向けて予定していた複数の代表合宿が予算不足で中止になったことを明らかにし、『(本来なら)もっと五輪に集中できたはずだが、本当に残念。(合宿と合宿以外では)絶対に練習の質が違う』などと、迫る五輪への不安を漏らしていました」(前出・スポーツ紙記者)

■「日の丸を背負うほど貧乏になる」

経済的苦境について日本バドミントン協会を取材すると、担当者はこう語った。

「強化費の予算は確かに8億円から3億円に圧縮しています。’16年のリオデジャネイロ五輪では女子ダブルスが金メダルを獲得していますが、東京五輪では混合ダブルスで銅メダル1つという結果となり、協会に支給される強化費も減額されているからです。

また円安により渡航費も、過去の倍ほどになっています。この五輪に限らず、海外大会への渡航費の一部負担を選手にお願いしています。

ほかの多くの競技でも決算は赤字となっており、バレーやサッカーなどの少数以外は、どの協会も(渡航費の)一部負担はお願いしているのが実情です」

確かに各協会、厳しいようだ。7月2日、日本レスリング協会は、’23年度決算が約4千400万円の赤字だったこと、そして遠征費の選手の一部負担を今後も継続する見込みであることを明らかにした。

「選手たちの窮状について、レスリングのある指導者は、共同通信の取材に対して、『(遠征のために)借金をした選手もいる。日の丸を背負うほど貧乏になる』と語っていました」(前出・スポーツ紙記者)

実はこうした事態は1年前から予想されていた。昨年7月にNHKが33の団体にアンケートを実施しているが、全体の9割以上が「課題を感じる」と答え、「強化費やスポンサーの減少」「汚職や談合事件でのイメージの低下」などを指摘していたのだ。

スポーツジャーナリストの小林信也さんはこう話す。

「東京五輪はバブル状態でしたが、その後、強化費はかなり減ってしまいました。たとえば水球選手たちは、東京五輪の前は年間240日も海外合宿していましたが、いまはとてもそのレベルには達していません。

レスリングや卓球などでは、試合当日まで“練習パートナー”が必要となりますが、今回はパリへそうした人材を帯同することも難しいようです。

またトライアスロンチームは少ない予算ながらも、競技会場から遠い選手村ではなく、セーヌ川に近いホテルに宿泊すると聞いています。少しでも競技に有利に備えるための苦肉の策ですが、宿泊費や食費が非常に高額なため、かなり苦労しているようです」

経済の低迷が叫ばれ、さらに円安の直撃を受けているニッポン。序盤では「メダルラッシュ」とも報じられているが、このまま日の丸を背負う選手たちには苦境に負けず、頑張ってほしい。

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