【パリ五輪】バレーボール協会会長・川合俊一の勝利予想は…「ラッキーボーイの甲斐優斗がメダルを左右する」

お金は誰かに借りればいい」と。何も心配しないところが川合らしい。

アメリカでビーチバレーの魅力にハマった川合は、プロのビーチバレーボール選手として世界各地のツアーに参戦。帰国すると、ビーチバレーの楽しさを日本で広めるため、メディアでの活動を始めた。

「ビーチバレーは、バレーボールの世界と違って開放的で、自由な感じがよかったんです。日本でビーチバレーを普及させるためには、メディアに出て宣伝しなきゃだめだな、と。当時、いくつかの局から誘われたなかで、スポーツ番組『独占!! スポーツ情報』(日本テレビ系)のキャスターをやらせてもらうことになりました」

テレビ局から求められたのは、ただ一つ、腹から声を出すこと。むしろ、「アナウンサーの練習はしないでくれ」と言われ、きちんと話すことよりも、自分らしさやカラーを出すことに力を注いだという。

「キャスターをやってよかったのは、それまで触れる機会のなかったジャンルのスポーツに出合えたことです。取材で初めて知ったスポーツの試合を見に行ったり、選手のインタビューをしたり、ものすごくいい経験になりました」

クイズ番組『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』(日本テレビ系)に出演したり、情報・バラエティ番組『こたえてちょーだい!』(フジテレビ系)の司会を務めるなど、タレントとしても人気者になった。

「クイズ番組はすごく好きで、宣伝できなくても出ますと言っていましたね(笑)。その当時は、僕のようにスポーツからバラエティまで幅広くやっている人はあまりいなかったかもしれない。元アスリートが帯番組の司会をやるなんてすごいね、とよく言われていました」

そのすべての経験が、今に生きている。

「やっちゃいけないこと、やらなきゃいけないこと、メディアとのかかわり方。考えなきゃならないことは山ほどある。今までのキャリア、経験を全部注ぎこんで、ふたたび、バレーボールと向き合っています」

■五輪ではラッキーボーイが活躍すればメダルの可能性が高くなる

パリ五輪がいよいよ7月27日に開幕。バレーボール協会は、バックアップ体制を整えている。

「まず、時差調整のため、早めに現地に入ってもらうのですが、大会側が押さえている体育館は時間に制限があるので、それとは別に練習場所を確保しています。あと、同行スタッフのホテルの手配も一苦労。男女2チームとなると人数も多いし、ホテル代も高い。五輪出場は本当にうれしいのですが、費用がすごくかかるので心配です(笑)。でも、海外に行って急にスタッフが減ると、選手は心細いものだというのは、自分も経験してわかっているので、協会としてはお金をかけるところはきちんとかけて、選手たちを支えたいと思っています」

オリンピック前哨戦のネーションズリーグで銀メダルを獲得した日本男子。この勢いに乗って、パリ五輪では52年ぶりのメダルに挑むが、川合が注目しているのは、ラッキーボーイの誕生だ。

「大きな大会で好成績を挙げるときには、必ずラッキーボーイが出てくるんですよ。たとえば、甲斐優斗。あまり試合に出ていないので、他国のチームにデータを取られていない。彼あたりが大活躍すると、メダルを取る可能性が高くなるはず」

自身もラッキーボーイで、ロスとソウル、2度のオリンピック出場経験を持つからこその実感だ。

いっぽう、先のネーションズリーグで、同じく銀メダルを獲得した女子日本代表。オリンピックでは、全員で守り、全員で攻める全員バレーで世界と戦うために、選手のけがだけが心配だという。

「1つのチャンスで上に行ける力を持っているので、盤石のコンディションで五輪を迎えてほしい」

最後に、これからの日本バレーの発展についてどのように考えているのかを聞いた。

「日本のバレーをもっと強く、また、日本でバレーボールをもっと盛んにしたい。そのためには収益を増やさなきゃいけないんです。そこで、バレーボールをやっている小中学生の登録制度を導入し、加盟料をいただく。それを財源として、各都道府県のバレーボール協会の運営体制を整える。これを’27年までに完了させたいと思っています。各県の協会を法人化すれば、スポンサーをつけることもできます。収入を得れば、いい指導者を呼べる、選手も育つ。バレーボールの裾野が広がると思うんですよね」

そして、国内リーグも新たな動きを見せている。これまでVリーグとしてV1からV3まで3部制だったが、今年10月から新たなトップリーグ「SVリーグ」が発足。同リーグは、世界最高水準のプロリーグになることを目指している。

「野球はメジャーリーグがあるし、バスケットボールもNBAがある。サッカーだって、イングランドやスペインのリーグがある。でも、バレーボールは、日本に世界最高水準のリーグを作るチャンスがあるスポーツなんです。

世界のトップリーグになれば、日本人選手は日本でプレーしたくなる、そして、海外の優秀な選手も日本にやってくる。そうすると、国内リーグは面白くなって、バレーボールをやる子供が増える。次世代の有望選手発掘のためにも、国内リーグを世界最高峰のリーグに育ててほしいですね」

日本バレーボール界が生んだ最強ラッキーボーイは、195cmmの高みから、明るい未来を見渡している。

(取材・文:服部広子)

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