松山英樹や石川遼も長年愛用「ツアーAD」シリーズの違いを解説! 最新モデル「GC」の特徴は?

国内男子ツアーでの使用率が高いシャフトのひとつにグラファイトデザインの「ツアーAD」シリーズがあります。松山英樹プロや石川遼プロが長く愛用しているのは有名ですが、いったいどのようなシャフトなのでしょうか?今回はツアーADシリーズの違いを人気フィッターの石井建嗣(いしい・たけし)さんに聞きました。

カタログから過去モデルが消えないツアーAD

 国内男子ツアーでの使用率が高いシャフトのひとつにグラファイトデザインの「ツアーAD」シリーズがあります。松山英樹プロや石川遼プロが長く愛用しているのは有名ですが、中には「超」がつくほどのロングセラー商品もあります。今回はそんなツアーADシリーズについて解説しようと思います。

ツアーADシリーズの(上から)「HD」、「UB」、「CQ」、「VF」

ツアーADシリーズの(上から)「HD」、「UB」、「CQ」、「VF」

 まず、ツアーADシリーズはカタログから過去モデルがなかなか消えないことで有名です。他社メーカーさんは新しいモデルが出ると、数年前のモデルがカタログから消えることが多いのですが、ツアーADは蓄積型です。もちろん消えることもあるのですが、他社メーカーよりその頻度が少なく、逆にいえばそれだけ過去モデルにも自信があるということが伺えます。

 同時に4世代前までのシャフトのほとんどが中調子という点も特徴的です。具体的には「ツアーAD UB」以前のウッド用シャフトはカタログを見て頂ければ分かるのですが、「ツアーAD XC」を除いて全て中調子です。この理由は数年前までグラファイトデザインのシャフトがクラブメーカーの「純正カスタムシャフト」に多く採用されていたからといえます。

 純正カスタムシャフトとは、クラブメーカーのカタログに「特注」ではなく「標準仕様」としてラインアップされているカスタムシャフトのことで、メーカーオリジナルの純正シャフトでは物足りないという方が多く選ぶシャフトです。これに採用されるということは、カスタムシャフトとはいえ、大多数のゴルファーに受け入れられるシャフト開発が必要になります。

 数年前までのツアーADシリーズのほとんどが中調子である理由にはこういった背景があるのです。しかし、近年はそもそも純正カスタムシャフトという概念が消えつつあります。本当に自分に合うカスタムシャフトを選びたい人は、特注仕様でオーダーすることから純正カスタムという枠組み自体が減ってきました。

3世代前の「ツアーAD CQ」から調子がガラッと変わった

 そういう流れをくみ取ってかどうかは分かりませんが、3世代前の「ツアーAD CQ」から調子がガラッと変わりました。まずその「ツアーAD CQ」ですが、先中調子の走り系シャフトとして発売されました。ただ一般的な先系シャフトは手元がガチガチの場合が多い傾向にありますが、このシャフトは極端に手元を硬くしていないのが特徴的です。

 あまりにも手元が硬いシャフトは、ヘッドの位置が分かりにくいため芯で打てないというパターンも多くなります。その点この「ツアーAD CQ」は切り返しでヘッドの位置が分かりやすい上に、そこからの加速感はまさに王道の先調子と言う感じに仕上げています。絶対に右のミスをなくしたいというドローヒッターでも扱えるのが最大の魅力です。

 そして、その翌年発売の「ツアーAD VF」は、CQの真逆の調子で中元調子のシャフトとして発売されました。ツアーADのシャフトが2年続けて中調子以外の表記になったのは正直驚きでした。ちなみにこのVFは元調子の気持ち良いしなり感ながら、振り遅れを抑制するまさに進化系元調子といえます。これは明らかに近年のトレンドである大型、高慣性モーメントヘッド対応の設計なのですが、とにかく元調子によくあるもたつきによる振り遅れを軽減できるという点が従来の元調子と違う部分です。

最新作「ツアーAD GC」は新世代のニュートラルシャフト!?

 そして、最後に紹介するのがまさに今年の9月に発売された「ツアーAD GC」です。これは新世代のニュートラルシャフトとして、グラファイトデザインのシャフトマップ表の最も真ん中付近に位置する性能を持っています。クセが無いので飛距離と安定性のバランスが非常に高く、かつ近年のトレンドヘッドに対応すべく強化されています。

 同時にスイングトレンドの変化やフィジカルの進化に対応させるべく新たな基準を作ろうと開発されているので、特にハードヒッターに合う人が多いシャフトに仕上がっています。同社のDIやPTなどの超ロングセラーシャフトを、現代版にアップデートしたシャフトとして期待しています。

 以上のように、ここ3年間の流れは、これまでのグラファイトデザインの設計を大きく変える仕様となっています。個人的にはカスタムシャフトは良い意味で尖っていたほうが良いと思っているので、近年のシャフト開発はとても面白く感じています。来年以降、どんなシャフトが登場してくるかクラブフィッターとしては今から楽しみです。

【解説】石井 建嗣(いしい・たけし)

香川県丸亀市で「ゴルフショップイシイ」を営むクラブフィッター。フィッター界の第一人者である浅谷理氏に師事し、クラブ&パターフィッター、TPIインストラクター、ゴルフラボ公認エンジニアの資格を持つ。ゴルフはHDCP「9.9」の腕前だが、自身のプレーより他人のクラブを“診る”ことに喜びを感じる職人肌。出演するYouTubeチャンネル「ズバババGOLF」では軽快なトークで人気を集める。

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