「飛ぶ」と「止まる」の両立は諦めた方がいい!? 試打じゃ分からない“自分に合ったアイアン”の選び方とは?

ゴルフ量販店などの試打で素晴らしいデータや結果が出たとしても、本当にそのクラブが自分に合っているのか判断するのは難しいものです。そこで、誰でも参考にできる「クラブ選びの基準(アイアン編)」を教えてもらいました。

「7番アイアン30度」が一つの目安になる

「あのアイアンはいいらしい」「今年は飛び系が売れている」というようなクラブの評判はよく耳にしますが、果たしてそのアイアンが自分にマッチするのかどうかは、なかなか判断がつかないものです。

 どんな名器も自分に合わなければ意味がありません。しかし、評判を聞いて実際に試打してみても、いまいちピンと来ないという人も多いのではないでしょうか。そこで自分に合ったアイアン選びの基準について、ゴルフフィールズユニオンの小倉勇人店長に話を聞きました。

アイアン選びにおいて「飛ぶ・やさしい」と「狙える・止められる」の両立は難しい

アイアン選びにおいて「飛ぶ・やさしい」と「狙える・止められる」の両立は難しい

「自分に合ったクラブの総重量がクラブ選びの大前提となります。自分のパワーに合った重さでなければ、いいスイングはできません。クラブの総重量を決める最大の要因はシャフトです。使っているドライバーのシャフトが50グラム台なら、アイアンシャフトは90グラム台から100グラムくらいのスチールシャフトを基準に考えてください」(小倉店長)

 適正な重さでアイアンを使うためには、自分に合った重さのシャフトがラインアップされているモデルのなかから、希望するモデルを絞っていくというのが現実的な手順になるでしょう。

 適正シャフトの選択肢がないのにどうしても使いたいヘッドがあるなら、リシャフトなどのカスタムをする必要があるので、ショップ等への相談が必要ということになります。

 ヘッド選びに関しては、まず自分が「飛んでやさしいアイアン」と「グリーンに球を止められるアイアン」の、どちらを求めるかを決めておくことが重要だと小倉店長はいいます。

「最近は、飛ぶことやミスヒットに強いことを謳っているアイアンが増えていますが、ミスに強く飛距離が出るモデルは球が強くバックスピン量が少ないため、グリーンに球を止めたり、意図した距離をキッチリ打ち分けるのには向きません」

「宣伝文句では『飛んで止まる』といっているかもしれませんが、基本的には相反する性能なので、本当の意味で兼ね備えることは不可能です。ですから、『飛ぶ・やさしい』ことと『狙える・止められる』ことのどちらを優先するかは、決めておく必要があると思います」(小倉店長)

 この境界線の目安となるのが、「7番アイアンで30度」というロフト設定です。7番アイアンのロフトが30度未満のモデルは、基本性能が「飛ぶ・やさしい」にあるものが多く、30度以上のモデルは「狙える・止められる」にあるものが多いと小倉店長はいいます。

 同じメーカーから2つのブランドが出ているなら、アベレージ・アマチュア向けのモデルは「飛ぶ・やさしい」系、プロ・アスリート向けのモデルは「狙える・止められる」系であるケースが多いです。ですがモデルの細分化が進む現在では、それに加えてロフトもチェックする必要があるというわけです。

 現実的には「飛べばいい」「止められればいい」と完全に極端な判断にはなりにくいですので、このグラデーションの中から自分が求める程度のものを選ぶということになりますが、軸足をどちらに置くかはハッキリさせておくべきでしょう。

現在の腕前よりも目指すスタイルで判断する

「飛ぶ・やさしい」モデルと「狙える・止められる」モデルのどちらが自分に合っているか。

 小倉店長は、いまの技術でラクにゴルフをしたい人は前者のモデルを、普段から練習をして技術的な向上を目指している人なら後者のモデルを選ぶべきだといいます。

「『飛ぶ・やさしい』系のアイアンと『狙える・止められる』系のアイアンの最大の違いは、ミスしたときの結果です。後者はミスに対するカバー力が低い代わりに、ミスをすればミスしたなりの結果になるので、『ミスしても右手前』というようなマネジメントがしやすくなります」

「一方前者は、ミスしても十分な飛距離が出てそこそこのエリアに球が行ってくれますが、これは上級者にとってはむしろ困るケースが多いのです。飛んではいるけれどミスとして想定外の結果となるため、マネジメントがしにくい。うまくなるためには、この『ミスがミスなりの結果になる』ことが重要なんです」(小倉店長)

 もちろん、練習量があまり多くなく、いまの技術でそこそこの結果を出して楽しくゴルフしたいという人にとっては、「飛ぶ・やさしい」アイアンは大きなメリットがあります。そういう方は無理をして「狙う・止められる」系のアイアンを選ぶ必要はありません。

 しかし「いまの腕前」はあまり重要ではないと小倉店長はいいます。

「ある程度スコアを出したいなら、アイアンで距離を合わせてピンを狙い、グリーンに止まる球を打つことは必須条件になります。その感覚は、飛ぶアイアンや寛容性の高すぎるアイアンでは得られません。いまはまだ技術不足だとしても、早い段階からその感覚を持ってプレーすることもレベルアップに寄与しますので、『いまはまだヘタだから飛び系でいい』という考え方を私はあまりオススメしません」(小倉店長)

 なお、モデル選びの際に、ヘッドの大きさにはちょっと注意が必要です。ヘッドの大きさは、ミスへの寛容性とほぼイコールで、大きいものほどミスヒットにやさしい傾向がありますが、ヘッドが大きく重心距離の長いアイアンはフェースが返りにくく、フェースローテーション量が大きい人は右へのプッシュアウトのリスクが高まります。

 やさしいヘッドを求めて大きいヘッドにしたのに右へのミスが増えたという人は、あえてヘッドが少し小さめのモデルを選ぶと解消される可能性があります。

 モデルごとに明確な基準が示されているわけではありませんが、まずは自分がアイアンに何を求めるかを決めること。これが、自分に合ったアイアンを選ぶうえで重要なのです。

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