爆売れゴルフシューズ「コードカオス」はなぜ日本で圧倒的人気なのか? アディダスゴルフの仕掛け人たちに聞いてみた

売れ筋のゴルフシューズとして必ず名前が挙がるアディダスゴルフの「コードカオス」は、なぜ日本でこんなに人気があるのでしょうか? その要因をどう分析しているか、このシューズの仕掛け人であるアディダスゴルフの幹部たちに質問をぶつけてみました。

知らないものも試してみるという面で日本人はオープン

 2020年に初代が発表され、スパイクレスとは思えないグリップ性の高さと斬新なデザイン、1ラウンドした後の足の疲れを軽減する快適性などで瞬く間に人気ゴルフシューズの代表格になったアディダスゴルフの「コードカオス」シリーズ。

 最新作の「コードカオス25」は7月18日に世界に先駆けて日本で発売され順調に売れ行きを伸ばしているようですが、前作の「コードカオス22」に関しては全世界で累計60万足を売り上げたといいます。特に日本での人気は圧倒的で、今年6月の有賀園ゴルフの調査では、モデル末期にもかかわらず盤石の売り上げ1位。同社によると、「コードカオス」の2足目、3足目を買い求めるゴルファーも多く、色違いで欲しいという声も聞かれるといいます。

「コードカオス」はなぜ日本でこんなに人気があるのでしょうか? その要因をどう分析しているか、このシューズの仕掛け人であるアディダスゴルフの幹部たちに質問をぶつけてみました。

これまでにも増して斬新さを感じさせる「コードカオス25」のデザインとカラーリング

これまでにも増して斬新さを感じさせる「コードカオス25」のデザインとカラーリング

 まずは同社の上級副社長であり、ゴルフ部門の世界戦略を取り仕切るジェフ・ラインハート氏。日本で先行発売したことは「コードカオス」にとっていかに重要な市場であるかの表れと断ったうえで、次のように述べました。

「世界中でスパイクレスの需要が高まってきました。私たちはどんな商品においてもグリップ力を妥協しません」と、スパイクレスシューズであっても性能に妥協しなかったことへの自信をのぞかせます。「3つのフランチャイズ(ツアー360、ZG、コードカオスのアディダスゴルフの柱となる3シリーズ)はすべてツアーレベルを目指して開発しています。トラクション(グリップ力)はアスリートにとって最も重要です。ですから開発においてはトラクションの向上を常に求めています。今マーケットにあるものに誇りを持っていますが、一方で『もっとできる』とも思っています。アパレルでもアクセサリーでも何年も前から厳しいテストをしています。ツアープレーヤーにもアマチュアにもテストしてもらって、結果的にコードカオス25のトラクションは約40%向上することができました」

上級副社長でありゴルフ部門の責任者、ジェフ・ラインハート氏(左)とアジアパシフィック担当の副社長、トモ・バイステット氏

上級副社長でありゴルフ部門の責任者、ジェフ・ラインハート氏(左)とアジアパシフィック担当の副社長、トモ・バイステット氏

 こう性能面の優位性を語ったうえで、日本特有の事情については次のように分析します。

「私たちはどこのマーケットでもしっかりした消費者研究をしています。ターゲットとなるのがどんな人物像なのか。日本のゴルファーにも保守的な人は多いかもしれませんが、米国や英国に比べて新しいアイデアに対してオープンだと思います。米英のように長いゴルフの歴史があるマーケットでは、やはりクラシックな色やスタイルが好まれます。でも、日本においては快適性やパフォーマンス、トラクションなど性能面を重視しているように思います。もちろんデザインも良くなければいけませんが、新しいコンセプトの商品でも、履いてみて『あ、いいんだな』と感じてくれる。知らないものも試してみるという面において日本の消費者はオープンなんじゃないかと思います」

 アジアパシフィック担当の副社長であるトモ・バイステット氏も同意して次のように続けます。

「デザインのプロセスの中で日本マーケットを意識しています。日本では何年もナンバーワンのモデルとなっていますが、より良くしなければ、より成長しなければと考えたときに日本のマーケットのフィードバックが重要です」

 それはサイバーで斬新なデザインにも表れているようです。

「ポップなカラーが多いのも、“破壊的”なコンセプトを表現するため。3つのフランチャイズの中で最も日本、アジアを意識したデザインです。英米に比べて大胆な色を好むゴルファーが多いので、クラシックなツアー360やZGに対して、コードカオスは大胆かつエレガントなカラーをフィーチャーして、マーケットで目を引くように考えています」

 シューズの商品企画の責任者であるフットウエア・ディレクターのメイソン・デニソン氏も「米国ではツアー360が1位、コードカオスが2位、ZGが3位。日本ではコードカオスが1位、ZGが2位、360が3位。欧米では革新的な技術があってもあまり露骨でないほうが受け入れられやすく、アジアでは見た目で革新性を感じやすいものが受け入れられやすいと思います」と話します。

フットウエア・ディレクターのメイソン・デニソン氏

フットウエア・ディレクターのメイソン・デニソン氏

 最後にデニソン氏には「コードカオス25」がどう進化したのかも説明してもらいました。

「前作まではゴムと樹脂の混合でアウトソールをつくっていたのですが、それはコンクリートの上でも履けるような汎用性を求めていたからです。今回の『コードカオス25』はTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)のみを使用し、ゴルフ場で100%の威力を発揮するようなアウトソールにしました。形状の見直し、耐久性の向上、長い期間履いても摩擦で摩耗しないような総合的なパフォーマンスの向上を目指しています。その分、ミッドソールで履き心地を良くしていますが、コース内では安定性の向上により、むしろ快適性は上がっていると思います。スパイクレスの大敵は目詰まりなのですが、泥や芝が詰まるのを防ぐため、形状や配置に細心の注意を払って開発した結果、40%のグリップ力の向上を成し遂げました」

「コードカオス」は日本で火が着いたことで、日本人の好みを意識した商品として進化してきた面も大きいようです。モデルを重ねるごとに人気が加速するのも当然なのかもしれません。

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