優勝賞金は約90万円! 日本人プロゴルファーがフィリピンで戦うワケとは?【片山純一フィリピンツアー奮闘記】

世界最高峰のPGAツアーで戦う松山英樹の今シーズン獲得賞金は驚がくの1284万5944ドル(約18億7500万円)だった。そんな天文学的な賞金を手にする選手がいる一方、優勝賞金34万5000ペソ(約90万円)というフィールドで奮闘するプロもいます。日本人にはあまりなじみのない「フィリピンツアー」に参戦する片山純一に、知られざるマイナーツアーの実情について聞きました。

エントリーフィーはアジアンツアーの20分の1

 みなさんこんにちは、プロゴルファーの片山純一です。僕は今年、フィリピンツアーに参戦しています。アジアには韓国やオーストラリアにツアーがあることを知っている人はいると思いますが、フィリピンにツアーがあることはあまり知られていないかもしれません。

 そこで、メジャーとはいえないフィリピンツアーがどんなツアーなのか、そしてフィリピン滞在中に起こった日本ではあり得ないようなエピソードなどを紹介していきます。

2024年3月の「PGTクオリファイングスクール」の模様。写真右が片山純一、写真左は一緒に受験したツアープロの松岡啓 写真提供:片山純一

2024年3月の「PGTクオリファイングスクール」の模様。写真右が片山純一、写真左は一緒に受験したツアープロの松岡啓 写真提供:片山純一

 最初に、僕がフィリピンツアーにチャレンジすることになった経緯からお話しします。2023年末に行われた日本ツアーのQT(予選会)に失敗した僕は、今シーズンの試合に出場する機会を得るため、海外ツアーの予選会に挑戦することにしました。

 選択肢にあったのはアジアンツアー、タイツアー、オーストラレイジアツアー、そしてフィリピンツアーです。

 各ツアーの予選会へのエントリーフィーを調べてみると、円安の影響もあってかなり高額ということが分かりました。例えばアジアンツアーはなんと30~40万円! 日本ツアーのQTエントリーフィーは22万円ですから、それよりも高かったんです。

 選択肢にあった中で、最もエントリーフィーが安かったのがフィリピンツアーの約2万円(7500ペソ)。この値段が決め手の一つになりました。ただ、いくらエントリーフィーが安くても、ツアーとしてある程度の規模がなければ、ゴルフの腕を磨くことはできません。

フィリピンツアーを経験したプロは意外に多い

 そこでフィリピンツアーの規模を調べてみると、自分が当初イメージしていたよりも大きいツアーということが分かりました。

 今シーズンの試合数は予選会を除くと全部で12試合。月イチのペースで試合が行われています。また、日本ツアーで活躍することを目標にしている僕にとっては、1日競技ではなく4日間競技でトーナメントが開催されていることも魅力的でした。

 ツアーに参戦するうえでは賞金額も気になるところです。今年の5月に行われたトーナメントを例にすると、賞金総額は200万ペソ(約520万円)で優勝賞金は34万5000ペソ(約90万円)でした。ちなみに、日本のABEMAツアーの1試合の賞金総額は1500万~2000万円で優勝賞金は270万~360万円。日本の下部ツアーと比べるとそこまで規模は大きくないと思われるかもしれませんが、フィリピンの平均年収は40~50万円くらいだそうです。つまり、優勝すると平均年収の2倍くらいの賞金を獲得できるわけです。

 エントリーフィーの安さやツアーの規模の大きさなどの理由もあってか、これまで日本人選手は何人もフィリピンツアーに参戦しています。現在日本のレギュラーツアーで活躍している桂川有人選手や勝俣陵選手も実はフィリピンツアー経験者なんです。

 今シーズンのフィリピンツアーに出場するため、僕は今年の3月に予選会「PGTクオリファイングスクール」にチャレンジしました。次回はその時のお話しをしようと思います。

【レッスン】片山 純一(かたやま・じゅんいち)

片山 純一(かたやま・じゅんいち)

片山 純一(かたやま・じゅんいち)

1989年生まれ、東京都出身。中央学院大卒業。国内ミニツアーで優勝経験有。出身校である日大一中高のゴルフ部のコーチも務める。現在はフィリピンツアーに挑戦しながら国内ツアーの出場権獲得を目指す。ツアープレーヤーとして活躍する傍ら、山田ゴルフ倶楽部(千葉県)・PGM石岡ゴルフクラブ(茨城県)でアマチュア向けにレッスンも行っている。 株式会社TOWA field所属。

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