大事故につながるケースも! ゴルフクラブをクルマのトランクに放置… これ、夏場はとても危険です

クラブとボールが当たった瞬間には、最大で1.8トンもの負荷が生じるとされています。ヘッドとシャフトの間は接着剤でつながっているそうなのですが、なぜ大きな衝撃にも耐えられるのでしょうか。

クラブの進化は接着剤の進化でもある

 クラブヘッドがボールに当たる“インパクト”の瞬間には非常に大きな衝撃がかかっており、ヘッドスピードが40m/sともなると、最大で1.8トンもの負荷が生じると言われています。

 ちなみに、ゴルフクラブは頑丈なつくりをしているように見えますが、実はドライバーをはじめとした多くのクラブは、ヘッドとシャフトの間を「接着剤」でつなぎとめています。

大事故につながるケースも! ゴルフクラブをクルマのトランクに放置… これ、夏場はとても危険です 写真:PIXTA

大事故につながるケースも! ゴルフクラブをクルマのトランクに放置… これ、夏場はとても危険です 写真:PIXTA

 接着剤でとめている“だけ”にも関わらず、なぜ何トンもの衝撃に耐えられるのでしょうか。レッスンプロ兼クラフトマンの関浩太郎氏は以下のように話します。

「今から30年ほど前までは、ドライバーは『パーシモン』と呼ばれる木製のヘッドが主流でしたが、当時はヘッドとシャフトをつなげるための接着剤の強度も弱く、接着範囲を50~60ミリほど確保していてもたびたび抜けてしまっていました。接着剤だけでは不安だったため、横からネジを入れてヘッドとシャフトが分離しないようにしていました」

「しかし、接着剤を製造する企業が研究と開発を繰り返した結果、ここ20年の間で接着剤の強度は格段に向上しました。現在では、接着範囲を25ミリほどに短くしても十分になり、余程ヘッドスピードが速くない限りは滅多に抜けなくなりました。また、接着剤が完全に固まるまでの時間も以前は1日近くかかっていましたが、いまは30分前後と大幅に短縮され、作業効率も非常に良くなっています」

 ちなみに、ドライバーにはヘッドとシャフトが接着剤でつながっているものと、ネジで止まっていて専用のレンチを使って着脱ができる通称「カチャカチャ」と呼ばれる「可変スリーブ式」の2種類があります。

 可変スリーブ式は、ネックの向きを変えるだけでロフト角やライ角、フェースの向きを自由に変更できることから、自分のスイングの癖に合わせやすいというメリットがあります。しかし「ネックに金属の部品が多くなるためヘッドの重心が上がる」というデメリットもあるようです。

 一方で、従来通りの接着剤でつなぐ方式であれば部品の重量による制限に左右されにくいため、設計上の融通が利きやすい点が優れているとされます。

最近の酷暑でヘッドが抜けやすくなっている?

 では、接着剤を使用しているゴルフクラブを扱う上で、どのようなポイントに気を付けなければならないのでしょうか。関氏は以下のように話します。

「いくら性能が向上したとはいえ接着剤が『熱に弱い』という点はあまり変わっていません。私たちクラフトマンは、熱への弱さを利用してネック部分をヒートガンなどで温めることによって、ヘッドとシャフトの分解作業を行っています」

「つまり、ゴルフクラブは温度が高くなる場所に置いてはいけません。なかには、クルマのトランクに放置している人もいますが、夏場はトランク内の温度が急激に上がり、接着剤の強度が低下します。最悪の場合は振り抜いた瞬間にヘッドが抜けてしまうといったトラブルも発生します」

「さらに、最近は夏の酷暑が常態化していますが、その影響で今まではありえなかったシチュエーションでもヘッドが抜けたという報告をよく聞きます。もしもトランクに入れていなかったとしてもクラブが劣化しやすくなっているので、改めてクラブの保管方法には十分に注意してほしいと思います」

 なお、ヘッドが抜けてしまったクラブを修理に出す際は、一般的に1本5000円前後かかるようです。また、ネック部分には「ソケット」と呼ばれるパーツが付いていますが、ソケットが浮いていると「ヘッドが抜ける前兆」と言われているそうですので、違和感があればできるだけ早く工房などで見てもらいましょう。

 接着剤のみならずクラブの性能は年々高くなっていますが、不適切な管理によって劣化を速めてしまったり、危険な事故が起こったりする可能性は変わりません。クラブを長持ちさせるには、より入念な手入れと適切な場所での保管が大切でしょう。

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