張本智和が中国勢や韓国のエースを次々と撃破で準優勝 中国のトップとの距離と課題についても語った

卓球 WTTファイナルズ福岡

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【初戦の中国勢、韓国のエースも撃破】

 男女シングルスの年間ポイントランキング上位16人、男女ダブルスの年間ポイントランキング上位8組が出場した、卓球の年間チャンピオンを決める「WTTファイナルズ福岡2024」(11月20日~24日/@福岡県北九州市立総合体育館)。そこで、日本男子のエースとして存在感を放ったのが張本智和(世界ランキング7位/大会前時点、以下同)である。


WTTファイナルズ福岡で快進撃を見せた張本智和 photo by Kyodo News

 張本は、今大会の男子シングルスに日本勢として唯一の出場。初戦は世界ランキング5位の梁靖崑と、いきなり中国勢との戦いとなった。

 第1ゲーム、立ち上がりに5ポイントを失う厳しい入りとなったなかで、張本が見せたのがバック中心の的確なラリー。中陣に下げられても安定感はそのまま、無理に決めずにつなぐボールも織り交ぜながら、徐々に点差を縮めていく。4ー7から圧巻の7連続ポイントで第1ゲームを11ー7で奪取し、その勢いのまま第2ゲームも連取した。

 しかし3ゲーム以降、流れが変わりかけた。張本はこう振り返る。

「3ゲーム目は相手に(流れが)ハマりかけていましたし、リードされている状況での粘りは彼の強み。あそこは2-3で負けてもおかしくない展開でした」

 そうして第3ゲームを奪われ、第4ゲームでは6ー1のリードから一度は逆転を許す。それでも最後は、デュースを制して準々決勝に進出。張禹珍(韓国/世界ランキング15位)との"日韓エース対決"が実現した。

 強烈なフォアハンドを武器とする張禹珍に対して、「(フォアは)強みですし、あそこさえ封じれば負けることはないと思っていた」と語った張本。その言葉通りに強みを封じながら、サービスや安定した台上技術を駆使してポイントを重ねた。ラリーの打ち合いではほぼ負けない完璧な戦いぶりでストレート勝ちし、男女通じて日本勢唯一のシングルスベスト4入りを果たした。

【中国の次世代エースとの「ベストバウト」】

 そして、今大会の「ベストバウト」とも呼べる試合が準決勝で繰り広げられる。相手は世界ランキング2位の林詩棟(中国)で、今季のWTTシリーズ終盤に優勝を重ねた、19歳の次世代エースの最有力。強烈な両ハンドを武器にする相手に日本のエースが挑んだ。

 張本はサービスから強烈なドライブを返されるなど、林詩棟に第1、2ゲームを奪われる。

「(セットカウント)0ー3になると、正直ほぼ負けになってしまうので、何があっても3ゲーム目は獲りたいと考えていた」

 そんな張本が状況打開のために多用したのが、今大会で有効だったフォアハンドだ。林詩棟のバックは、張本が「今日は正直、バックでは勝てなくて。バックで勝てないのは彼と王楚欽と樊振東くらい」と舌を巻くほど猛威を振るっていた。それに対して張本は、フォアやサービスを軸に修正を図った。

 第3ゲームの3ー4のビハインドから5連続ポイントを奪うなど、優位に試合を進めて11-8で奪取。「(流れを)変えるといってもがむしゃらに変えるわけではないですし、根拠を持って戦術を変更できたと思います」と、厳しい局面でも冷静さが光った。

 その後、張本はさらに1ゲームを奪い、3-3のフルゲームまでもつれ込む激闘となる。点の取り合いとなった最終第7ゲームでは、9ー10と一度はマッチポイントを握られながらも、林詩棟のバックをつくサービスでデュースに持ち込み、最後も11ー10からフォアで押し切った。

 張本は壮絶な戦いを制したあと、「樊振東や昔の馬龍はこういう試合ばかりしていたと思いますし、僕もその次元に足を踏み入れたい」と振り返りながら、中国のトップとの距離について言及。「彼らを完全に上回るところまではまだ見えてないですが、4-2、4-3で勝つための努力はできる」と、その領域に近づいていきたいと語った。

【立ちはだかった世界1位の壁】

 WTTファイナルズでは2021、22年(当時カップファイナルズ)に続き、3度目の決勝進出を果たした張本だが、決勝で味わったのが"世界最強サウスポー"の高い壁。世界ランキング1位の王楚欽(中国)との戦いは、第1ゲームで10連続ポイントを奪われるなど圧倒的に支配された。

「縦回転でも横回転でもそれに合うようなレシーブをされてしまうので、ラリーが僕は持ち味ですけど、後手に回ってしまった。相手が左利きでもともと(ラリーが)難しいなかで、常に後手でやることがなかった」

 駆けつけた中国ファンの声援にも飲まれる形で、王楚欽にストレート負け。今大会は準優勝となった。

 それでも張本は、今回の決勝進出でランキングのポイント「1050」を加算して、11月26日に発表された世界ランキングで3位に浮上した。王楚欽、林詩棟と、今回戦った中国勢に次ぐ順位につけ、来年に向けて期待を抱かせる形で今年の国際大会が幕を閉じた。

 張本は来年以降について「王楚欽とフェリックス・ルブラン(フランス/世界ランキング4位)に1回でも勝ちたい」と2選手をライバルとして挙げた。

「彼らには0-4や1-4で負けてばかりなので、まずはフルゲームまでもつれるような戦いがしたい。それを(ロサンゼルス五輪までの)3年をかけてできれば」

 今夏のパリ五輪では団体戦でスウェーデン、フランスに敗れてメダルを逃し、男子のエースとして責任を背負うなど厳しい局面も経験した。紆余曲折を経て迎えた日本大会で輝きを放った21歳は、新たな思いを胸に次へと進む。

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